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バックカントリースキーの装備リスト

こんにちは。

ここ数年、周囲でバックカントリースキーやスノーボードを新たに始める人がぼちぼち現れております。一緒に楽しめる友人が増えるのはとても嬉しいことです。

その際にはじめかた・道具についてアドバイスを求められることがあり、その内容をまとめたものを公開したいと思います。私自身はバックカントリー歴は10年に満たないくらいですが、ガイドさんや先輩に教えていただいたこと含めて共有したいと思います。

適宜追加・修正していきます。(アフィリエイトのリンクが含まれます)


装備リスト

リストにまとめております。この後のテキストはリストの一部を解説しているものとなります(リストの方が網羅性が高いです)。

雪崩対策三点セット

私が使用している雪崩対策三点セット

スキー場管理外で行うバックカントリーでは雪崩のリスクがともないます。コンディションや地形を観察することである程度リスクを下げることができますが、最悪のケースを想定し雪崩に遭遇した際の対策が必要です。

雪崩対策三点セットはバックカントリーに入る際に必ず携帯すべきものとなります。値段が張るものもありますので、最初の何回かはガイド会社等でレンタルするのも良いかもしれません。あわせて使い方も研修等で身につけることが望ましいです。

アバランチビーコン

自分が雪崩に埋没した際に発見してもらう・仲間が雪崩に埋没した際に発見するために必要。
電波を発信・キャッチするための電子機器でマムートやPiepsのものが人気(1.5-4万くらい)。バックカントリーを楽しむ際に必ず使用する重要なものです。日本バックカントリースキーガイド協会でガイドさん向けに講習をしているのはマムートのアバランチビーコンの設計をしている方と聞きまして、私はマムートのものを使用しています。

プローブ

雪崩に埋没した人を捜索する際に必要。
延ばすと3Mくらいになる棒で、アバランチビーコンで埋没者の位置を絞り込んだのちにプローブを雪面に刺し入れることで埋没者の位置を特定するという使い方をします。私はブラックダイヤモンドのものを使用しています。

ショベル

雪崩に埋没した人を掘り出す際に必要。
ブレードとシャフトを取り外すことができザックに収納しやすいようになっています。ショベルのブレードの足で踏む部分が丸くなっておらず、しっかり踏むことができるものを選ぶことをお勧めします。雪山でテント泊することなどあれば固い雪面などで作業することもありえます。私はMSRのものを使用しています。

滑走用具(滑るために必要)

バックカントリースキーにはいくつか方向性があるので、ビンディング>ブーツ>スキーの順に用具を選ぶのが良いのではないかと思っています。

ATスキービンディング

Dynafit ST Rotation 14

ここでは雪山を自らの足で登り、そして滑るというバックカントリースキーのスタイルについて説明します。このスタイルのバックカントリースキーで使用するATスキービンディング(ATはAlpine Touringの略)は登る際には登りやすいようにかかとを浮かすことができ、滑る際には安定して滑ることができるようにかかとを固定するという機能を持っています。

ATスキービンディングは大枠以下のパターンに分類できます。

  • テックビンディング

    • 片足600gくらいで軽量性を重視。バックカントリーにおいて上りで優位。テックビンディング対応ブーツが必要(つま先にテックビンディングのピンを入れるためのスチール製の穴がある)。

    • DynafitのST ROTATIONやG3のIONなど。

  • フレームビンディング

    • 片足1400gくらいで従来のスキービンディングに近い性能がある。重量がある。

    • マーカーのBARONなど。

  • ハイブリッドビンディング

    • 片足700gくらいで上記2種類のいいとこ取り。多くはビンディングの爪先部分がテックビンディングになっており、かかと部分は従来のスキービンディングに似た仕組みになっています。テックビンディング対応ブーツが必要(つま先にテックビンディングのピンを入れるためのスチール製の穴がある)。

    • マーカーのKINGPIN、フリッチのテクトンなど。

私は長くDynafitというメーカーのテックビンディングを使用しています。Dynafitは山岳スキー向けの超軽量の製品もありますが、私はST Rotationなどのオールラウンド向けを使用しています。軽量であることと使い慣れているので壊れるとしたらどこなのかを理解しているので扱い方にも注意しながら使用しています。

ビンディングの種類の解説としてこちらの動画がわかりやすいです。

スキーブーツ

Dynafit Radical Proにはつま先にテックビンディングに対応するための穴があります。

スキー場で使用するスキーブーツとは異なるバックカントリー用のスキーブーツがあります。

バックカントリー用のスキーブーツは相対的に軽量で歩行に適したラバーソールを備え、登る際には登りやすいように足首を可動させることが可能になっています(ウォークモード)。以前は軽量だが滑走性能はイマイチというブーツが多かったようですが、最近は軽量かつ滑走性能の高いブーツが多く登場しつつあります。

各メーカーそれぞれのラインを持っていることが多いですが、大枠以下のパターンに分類できます。

  • 最もしっかりしたブーツ

    • 片足1800-2200gくらいでスキー場で使用するスキーブーツに近い。

    • DALBELLO、LANGE、NORDICA等。

  • 軽量性と堅牢性のハイブリッド

    • 片足1500gくらいでスキー場で使用するスキーブーツに近い形状をしているが、素材が軽いものが多い。

    • ATOMIC・TECNICAの軽量モデル、Dynafit・SCARPAの滑走重視モデル。

  • 軽量性重視

    • 片足1200gくらいで登り重視。

    • Dynafit、SCARPA等。

私が現在使用しているのはDynafitというメーカーのRADICAL PROというブーツで上記の分類では「軽量性と堅牢性のハイブリッド」に該当します。ユニークなバックルの仕組みを持っており、登りから滑りへのモードチェンジを極めてスムーズ・スピーディーに行うことができるのがメリットです。

スキーブーツの種類の解説としてこちらの動画がわかりやすいです。

スキー板

左はセンター幅106mm、右は115mm

スキー場で使用するスキーとは異なるバックカントリーに適したスキー板があり、以下の特徴があります。

  • ファットスキー:新雪で浮力が生じるように幅が広い(センター幅100mm以上のものが主流)

  • ロッカー:新雪で浮力が生じるようにスキーの先端が反り上がっている

ICIスポーツなどでの取扱も増えており、神田本店では取扱スペースの1/4程度がバックカントリー用の板です。バックカントリー向けのスキーを用意しているメーカーをいくつか例示しますが、他にもいろいろあります。お好みで選んでいただくのが良いかと思います。

2023-24のシーズン、私は4FRNTというメーカーのRenegadeというスキーを主に使用していました。

登行用具(登るために必要)

スキーシールを使って登っている様子

スキーシール

スキーシールを取り付けた様子

スキーの裏の滑走面にカーペットのようなものを貼付けて、スキーを履いたまま登るための道具。スキーシールもしくはクライミングスキンなどと呼んだりします。

登る際にスキーにスキーシールを取り付け、登り終えたらスキーシールを取り外して滑走します。

スキーシールの裏側は接着面となっており、スキーシールの先端についているフックと接着面を利用してスキーに取り付けます。接着面はベタベタしていますが、正しく使用すればスキーの滑走面にベタつきが残ることはなく何度でも利用できます。1日のうちに登ったり滑ったりを繰り返す際に接着面が濡れたり雪がついたりするとスキーとの接着がうまくいかなくなったりするため接着面は丁寧に扱う必要があります。

いくつかメーカーがありますが、薄くて軽量なポモカもしくは接着面がしっかりしていて扱いやすいブラックダイヤモンドがおすすめ。G3は長期間使っていると接着面が劣化しやすいと言われていて、コンツアーも接着面が特殊で癖があると言われています。

購入する際にはスキーの長さと幅にあったものを購入します。スキーと同時に購入し、スキーの形にカットしてもらうと良いです。

スキークランポン・アイゼン

Dynafitのビンディングにクランポンを取り付けた様子

スキーに取り付けるクランポン。雪面が硬くしまった厳冬期の稜線や春の朝に安全に登るために使用します。ビンディングを経由して取り付けることが多くビンディングのメーカーがスキークランポンを提供しています。スキーの幅にあったものを選んでください。ちなみにドイツ語でアイゼン、英語やフランス語でクランポンと呼んでいますが同じものです。

ギア

ザック

ザックにスキーを固定して登っている様子

ザック(バックパック)はバックカントリー専用のものが使いやすいです。以下のような特徴があります。

  • スキー板・スノーボードをザックに固定するためのストラップ

  • プローブ・ショベルを素早く取り出すための個別の収納スペース

  • 背面から荷物にアクセスするための機能

THE NORTH FACEのチュガッチシリーズは評判が良く、私も使っていたことがあります(毎シーズン早く売り切れている印象)。私は日帰りのバックカントリーではNorronaのlofoten 30L Packを使用しています。

グローブ

左の薄手のものは登る時に使うだけでなく、厳冬期以外は滑走時にも多用

滑走時用2つと登る時用のものを用意できると便利。滑走時用の一つは濡れた時用のスペア。登る時には体温も上がるので薄手のものなど。私はヘストラのライナーがウールのものを好んで使っています。極寒時には厚手の三本指のものも使用します。

ゴーグル

左が晴天時用のレンズ、右が荒天や夕方によく見えるレンズ

Oakley、SMITH、POCなど。顔にフィットしたものを選んでもらえればと思います。鼻と目の下あたりがフィットしていないと新雪を滑った際に雪がゴーグル内に入ってきますのでご注意ください。
ゴーグルはレンズの明るさの異なるものを2つ用意しておくと晴天時・荒天時で使い分けられ、またレンズが曇った時などのスペアとしても使用できるので便利です。
私はPOCの平面レンズのものを使用しています。球面レンズのものは自分の顔にはフィットしませんでした。

ヘルメット

使用する人・しない人がいますが、私は滑走時は常に使用しています。スキー用のヘルメットで頭にフィットしたものを選んでもらえればと思います。私が使用しているのはPOCのものです(耳あて等は持ち運びの際にジャマなので外しています)。

アクセサリ

ヘッドライト

小さいもので良いので用意することが望ましい。充電式のものがおすすめ。Petzl、Black Diamond等。

スクレーパー

スキーの滑走面が氷結した際に使用。鍋洗い用のMSR アルパインディシュブラシスクレイパーが人気。

マルチツール

レザーマン等ペンチが付いているものがおすすめ。

ウェア

シェル(ゴアテックスなど)、ミドルレイヤー(フリースなど)、ベースレイヤー(化学繊維またはウールの下着)をレイヤリング(重ね着)するのが基本。
登る時には体温が上がり、休憩時には冷えるので、温度・行動に合わせて脱ぎ着をしましょう。ただ人によって代謝や寒さの感じ方が異なるので、人のものも参考にしつつ、自分に合うレイヤリングを調整していく必要があります。この動画がわかりやすいです。

スキーケース

北京空港にて

飛行機や電車で移動する際にはDbのSnow Rollerがお勧め。私はスキー、スキーブーツ、ヘルメット、ウェアー、ザック等ほとんどの荷物をこのスキーケースに入れて持ち運んでいます。宅急便でも送れます。使用しない時にはロールして小さくまとまるのも良いです。

スキー・ブーツはもちろん、ザックやウェアーも入れています

どこで買うのか

北海道だと秀岳荘やICIが品揃えが素晴らしくまた店員さんも詳しいのでいつも羨ましく思っています。東京だと以下のあたりでしょうか?

スキー・スキーブーツ等

ウェアー等

ウェアー等もまあまあ壊れたりするので、店員さんがしっかりしているお店をお勧めします。その観点ではフルマークス・パタゴニアはお勧め。アークテリクス・ノースフェースは商品自体は好きですが、店員さんは山や商品に詳しくなく適切なアドバイスができていない方も多いように思っています。

いつ買うのか

最近は店舗での在庫が薄く、また入荷タイミングも遅くなっているように思っておりまして、慎重に選択すべきブーツは6月や7月に行われるICIのカスタムフェアなどで予約するのが良いのかなと思っています。ウェアーなどはあえてシーズンオフにアウトレットセールなどを利用するのも賢いように思います。


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