若い移住者が増え始めている!?地域資源が豊富な辰野町で観光を超えた関わりをつくる(第4期 地域紹介)
こんにちは、信州つなぐラボ事務局の桒原(くわはら)です。
第4期信州つなぐラボでは、「観光のこれから」を1つのテーマとして、若い世代の移住者が増えつつある「長野県辰野町」を舞台に、観光を超えた新たな地域との関わり方を考えていきます。
今回は、辰野町の地域情報と、すでに地域の課題に取り組んでいる地域サポーターを合わせてご紹介。
明治時代から、東日本で一番ゲンジボタルがたくさん見られる「ほたるの里」として有名な辰野町。毎年開催される「信州辰野ほたる祭」では、県内外から10万人(人口の約5倍!)もの観光客が訪れています。
最近では、空き商店街を活用したプロジェクト「トビチ商店街」が話題となり、賑わいをみせていますが、実は商店街だけでなく各エリアにもキーパーソンがいるそう。それぞれの人たちが共鳴し合い、まち全体で活気づいてきているというなかで、今回は「小野地区」と「川島地区」に着目していきます。
①宿場町として栄えた「小野地区」に根付く老舗酒屋
初期中山道、三州街道の宿場町として栄えた小野地区には、現在でも当時の面影を残す建物が大切に保存されています。その一角にたたずむのが、辰野町唯一の造り酒屋「小野酒造店」です。
辰野町のテーマ①では、地域に根付く老舗酒屋を軸に、宿場町でもある小野地区だからこそできる酒蔵・地域との関わり方を考えます。
元治元年(1864年)創業、代表銘柄は原材料にこだわった「夜明け前」。販売数全体の80%が長野県内を占め、そのうち70〜80%は辰野町と周辺エリアのほか、町内のほとんどの飲食店が取り扱うなど、地元に愛されながら酒造りを行なってきました。
文豪・島崎藤村とも繋がりがあり、その代表作「夜明け前」の名をいただいたそう
「できるだけいいお米で、いい酒をつくりたい」という、代表取締役社長の小野能正さん。原材料のお米も選びぬき、「華やかな香りがあり、口当たりがまろやかで、もう一杯飲みたくなる、そんなお酒を目指しています」と話します。
代表取締役社長の小野さんは、現在6代目
地域とのつながりを大切にする小野酒造店では、美味しいお酒を届けるだけでなく、新成人による日本酒造り企画「oresake プロジェクト」を2018年から実施。若い人にも日本酒に親しんでもらいたいと、日本酒のファンづくりにも積極的に取り組んでいます。
2000年の辰年に辰野町で吟醸造りをしたことが名前の由来になっている特別本醸造「辰の吟」
「oresakeプロジェクト」の企画は、地元新聞でも取り上げられました
今後も、お酒に興味がある方や、高品質のお酒を飲んでみたいという方に、日本酒の魅力を届けていきたいという小野さん。
「うちのお酒を飲んで、まちを散策しながら辰野町の日常を楽しんでもらえたら。そして、酒造りを通して、小野地区が持つ魅力をより多くの人に伝えながら、辰野町のファンを増やしていけたら嬉しいですね」
②移住者やファンが増加中!理想的な田舎「川島地区」
川島振興会の皆さんと地域おこし協力隊の北埜 航太さん(写真左下)・鈴木 雄洋さん(写真左上)
国道から一本入った、山間の静かな場所。穏やかな里山に、青々とした稲が広がる田んぼ、そしてその田んぼの真ん中をまっすぐに伸びる一本道……、まさに「田舎」と言われ思い描くような、気持ちのいい景色が広がっています。この場所こそが、いま移住者に人気の「川島地区」です。
辰野町のテーマ②では、移住先進地域・川島地区だからこそ可能なこれからの地域との関わり方をデザインしていきます。
寒暖差が大きい気候を生かし、米やそばなどの農産物の栽培が盛んです
「14歳以下の人口が唯一増加しているのが、川島地区。他はマイナス200人ぐらいなんですけど、このエリアだけはプラス10人で社会増になっているんですよね」と話すのは、辰野町地域おこし協力隊の北埜さん。
その理由のひとつとして、小規模特認校である「川島小学校」の存在が挙げられます。授業では、地元の人たちが先生役となり、そば打ちの技を伝授するなど、フィールドワークが充実。自然教育をさせたいという子育て世代に特に注目されているのです。2018年には、長野県の「移住モデル地区」にも選ばれ、すぐに住める空き家がないほどの人気ぶり。
川島地区を支える地域のリーダー・根橋 正美さん(写真中央)
そんな移住者たちを温かく受け入れつつ、川島地区の景観保全や農業振興を行っているのが「川島振興会」の皆さんです。約20年前に発足し、60〜70代のメンバー中心で活動。川島地区の景観整備や、紅葉まつりといったイベントの主催、有害鳥獣対策など、その活動は多岐にわたります。
「次世代でもつながりを大切に、川島地区が賑わっていってほしい」と話す川島振興会 事務局長の根橋さん。どうやって若い世代に今の活動を引き継いでいくかが、今後の課題だと話します。
地域の課題=関わりしろ と捉え、観光を超えた関係性をつくる。川島地区だからこそできる、新しい関わり方を一緒に考えてみませんか?
地域サポーターの紹介
素材提供:北埜 航太/鈴木 雄洋
今回、辰野町の地域サポーターを担当するのは、辰野町地域おこし協力隊の北埜さんと鈴木さんです。お二人は、地域の課題を可視化して、そこに関わってくれる人材を呼び込む「川島お困りごとtrip」を企画。都市圏の人と住民たちが交流するきっかけづくりを目指し、活動されています。
▼北埜 航太さん(東京都出身)
学生時代から辰野町と縁があった北埜さんは、PRやメディアの会社を経て、2019年の7月から協力隊に着任。現在、外から来る人たちの入り口として、関係人口創成のためのコーディネートを中心に活動。特に関わりしろの可視化に取り組み、その一環で『かわしま地域新聞』の発行にも携わっています。
▼鈴木 雄洋さん(千葉県出身)
2020年の3月に協力隊の移住・定住担当として着任。前職での不動産ディベロッパー経験を生かし、宅地建物取引士として空き家バンクの運営管理が活動のメイン。空き家オーナーと物件を欲しい人とのマッチングのほか、移住検討者への物件と人の案内も行っています。
地域のつながりが豊かで、自然と質の高い関係性が築けているという辰野町。新たに関わりたいという人にとって、非常に適している地域だとお二人は話します。
鈴木さん「小野地区だったり川島地区だったり商店街だったり、同じ辰野町でも全然色が違って、いい意味でカラフルな多様性がある。そして、いざという時はみんな一つになるコミュニティが魅力だと思いますね」
北埜さん「商店街のプロジェクトにしても反対する人があまりいなくてスタートが切りやすかったし、空き家バンク制度にしても、行政と地域のバランスが良く、お互いに連携しているので、マッチング率が全国でトップクラスらしいんです。観光資源が豊富で有名という訳でもないんですけど、そういったソフト面での豊かさが充実しているので、いろんなアクションが取りやすいと感じます」
人と情報が集まる多目的施設『STUDIOリバー』@トビチ商店街。こちらも空き店舗を再利用したプロジェクトの一環
現在、町全体でおよそ30ものさまざまなプロジェクトが進行中です。事業としての仕組みづくりに向けて、プロボノ的に地域に関わってくれる人を増やしていきたいという北埜さん。そのためにはプロジェクトの可視化が大事だと話します。
北埜さん「関わりしろの見える化と、そこに接続できるようなメディアが欲しいよねって前から話が出ています。あと、個人的には川島地区のような里山に特化したバージョンでも、関わりしろの見える化していきたいので、里山の持続可能性のある取り組みに興味がある方がいたらぜひ」
鈴木さん「人口の自然減が多い地方の小さな町にとって、関係人口がどのくらいプラスにエネルギーを発揮できるか、個人的にも興味があります。今回のつなぐラボがきっかけで、その効果を実感できたら嬉しいですね」
信州つなぐラボ第4期、辰野町のテーマは「観光のこれから」。観光を超えた地域との関わり方にスポットをあて、地域住民とつながり、新たな地域との関わり方をつくる人を募集します。
地域に入り込み、資源豊富な辰野町ならではの関わり方を一緒につくってみませんか?
信州つなぐラボのプログラムに関する詳細はHPをご覧ください。
撮影:小林直博