PCR陽性≒感染、と考えるのはなぜか

PCRで陽性でも感染しているとは限らない、という話を信じている人が一定数いる。PCRをやっている会社の社長が俺は専門家だと言いながら間違った話を流布していたこともあったりしたので、いまだに混乱している人も多いのも仕方ない。
ただ、陽性≒感染、と考えて差し支えないと思う。
陽性であっても感染しているとは限らない、と信じている人は、PCRの高感度を理由に挙げる。PCRはわずか数分子の遺伝子でも検出できてしまう、だからしぶきを浴びた人の粘膜にたまたまくっついてる、わずかな数のウイルスでも陽性になるはずだ、と考えている。しかし。RT-PCRは超高感度は誤解。
PCRは確かに超高感度なのだけれど、新型コロナの検出で使われているRT-PCRというのは、PCRを行う前に余計なステップがある。ウイルスの遺伝子であるRNAをいったんDNAにコピペする反応をかませなきゃいけない。これの効率が、そこまで高くない。
それに、新型コロナを検出する際に採取する、唾液や鼻水には、ウイルスの遺伝子であるRNAを分解する酵素がたっぷり。このため、DNAへのコピペを終わらせる前にウイルス遺伝子(RNA)が全部分解してしまう恐れがある。その点でも効率が落ちる。
このため、PCRの前段階であるウイルス遺伝子(RNA)からDNAにコピペする反応(RT)がさほど効率よくないため、いかにPCRが高感度でも、その前段でウイルスが全部分解されてなくなるリスクが結構ある。それでもPCRが陽性となるには。
粘膜の細胞にウイルスが感染し、しっかり増えていないと、「DNAへのコピペ」(RT)がうまくいかない。感染し、しっかり増殖できて初めて「コピペ」がうまくいき、PCRで陽性として検出できる。だから、感染してウイルスが増殖していないと、RT-PCRでは陽性にならない。
いまやどのマスコミも、感染症専門家も、医療関係者も、PCR検査(正確にはRT-PCRによる検査)で陽性だったら感染者とみなす、のは、以上のような理由。かつて、専門家を名乗る人がいろいろ言って混乱した時期はあったけど、そろそろ「RT-PCRで陽性≒感染」と考えるのは妥当だと知っておいてほしい。

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