旧ジャニーズ事務所の苦境が日本を変える可能性

旧ジャニーズ事務所には、ここ、踏ん張ってほしいというか、耐え忍んでほしい。なぜか。もしここで耐え忍び切り、踏ん張れば、業界だけでなく、日本の多くの業界で、犯罪に近いことも平気で糊塗できる「独裁者」たちを震え上がらせる効果が生まれるからだ。

今回の件、ジャニー氏が犯した罪であり、今の経営陣には直接の罪はない。あえて言うなら、噂くらいは耳にしていたのに、それを見過ごしていた罪だろうか。罪深きジャニー氏と、それ以外の人間の落差が大きい。ジャニー氏が巨悪なら、他の人達は小悪だろう。

だから「なぜ巨悪のジャニー氏は称えられながら死ねて、残った我々がこんなにも苦労せねばならぬのか」と怒りが湧いてきても不思議ではない。
しかし。非常に残念なことに、ジャニーズ事務所の問題は、ジャニー氏の巨悪をなぜ生きている間にとめることができなかったのか、という点にある。

今、旧ジャニーズ事務所の経営陣は、ジャニー氏の巨悪の尻ぬぐいをやらされるという理不尽なことをやらされている。そしてこれは、大変に「教育効果」が高い。よその業界でも「うちの巨悪をそのままにしたら、あとに残る我々がこんな理不尽な目に遭うのかもしれないのか」と震え上がることだろう。

芸能界に限っても、昔から枕営業などの噂が絶えない世界。嫌だと拒否しようにも拒否できない空気が、ジャニーズ事務所と同様に形成されているのだとしたら、この際、そうした悪習は撤廃されるべきだろう。これまでは、会社の権力者に楯突くのはとても無理な空気があり、逆らえなかったかもしれない。

しかし旧ジャニーズ事務所の今の有り様を見ていて、「うちの巨悪も放置していたら、先々とんでもないことになる」と、全社員的に懸念が広がるだろう。また、「独裁者」も、空気の変化を感じて、下の人間の忠告に耳を傾けざるを得ない気分になるだろう。

旧ジャニーズ事務所の踏ん張りが、日本を変える可能性がある。小泉旋風以来、日本は各地に「独裁者」が現れた。反対する人間を「既得権益層」「抵抗勢力」扱いし、改革と称しながら自分の欲望もついでに満たすような人物が各地で跋扈するようになった。「失われた30年」のかなりの責任がここにある。

これからも旧ジャニーズ事務所には、厳しい批判が続くだろう。あえてその厳しい批判から逃げず、受けとめてほしい。その一つ一つに辛抱強く応えていくことが、日本社会を変えるモデルケースになる。理不尽な批判には腹も立つだろう。なんでジャニー氏の尻ぬぐいを自分たちが、という思いもあろう。

でも、あなた達が今踏ん張ることで、「独裁者」に苦しめられている人達が声を上げやすい空気を作ることになる。「独裁を放置したらこんなにも面倒なことになる」という認識が、独裁者を黙らせ、衆知を集める力となる。あえて厳しい批判にさらされることを選んでほしい。そして耐え切ってほしい。

あなた達の振る舞いが、これからの日本のモデルケースになる。ぜひ、SMILE-UPの経営陣には、強い批判もあえて受け、それに耐え、乗り切ってほしい。あなた達が日本を変えるのだ。

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