科学の中のゆらぎ

私は頬を噛んだ跡が必ず口内炎に。チョコラBBを教えてもらい、飲むようにしたら、口内炎で悩まされることがなくなった。
チョコラBBが切れたので薬局に買いに行くとプライベートブランドを勧められた。「成分同じ!量もたっぷり!しかも安い!」騙されたと思って買ってみた。

そして騙されたと思った。チョコラBBなら一回1錠なのに2錠飲めと。倍。これじゃ増量の意味がない。何より効かない!噛んだところが口内炎になる!意味ない!
確かに成分表見ると一緒なのに効果がない。成分同じでも効くとは限らないんだなあ、と思った。
以来、プライベートブランドの薬は買わない。

体操服の頑固な汚れを落とす特殊な洗剤を売ってるメーカーの方から聞いた話。ある時、顧客から「汚れ落ちない」と苦情が相次ぐように。製造プロセスや製法などを全部チェックしたが原因が見つからない。疑うのは原料しかない。そこで原料を提供してる会社に電話してみた。すると。

「同じ化学物質で安価なものに切り替えました」という返事。純度も申し分なく、化学物質だから全く同じもののはずだという。しかし洗剤メーカーの方は「金がかかっても構わないから、元の原料メーカーのところから仕入れてくれ」と依頼。
すると洗浄力が戻ったという。

私の実験。ある酵素を作る微生物の研究をしていて、微生物の大量培養を行っていた。
「蒸留水は電気代かかかるからイオン交換水で我慢してくれ」と言われ、培養液の水をイオン交換水に切り替えた。そしたら微生物が酵素を作らない!これでは意味がない!
蒸留水に戻した。

イオン交換水もそこそこピュアな水。活性炭フィルターも通してるから、ゴミはほとんど取れてる。それでも蒸留水と比べると何か違うらしい。あまりに微量な成分過ぎると思われたし、研究の本筋じゃないから調べなかったけど、微生物はほんの少しの違いにも敏感に反応するんだな、と思った。

これは個人的体験だけど。私は醸造アルコール入りの日本酒が苦手。口では美味しいな、と思うけど、胃に落ちた時にドスンとくる。この感覚がある時はお猪口二杯で悪酔いする。ラベルを見ると「醸造アルコール」が原料に。不思議なほど見破れる。

醸造アルコールのメーカーとしばらく共同研究したことがあって、この体験を話すと「そんなはずはない、純粋なエタノールですよ」という。私もそう思う。純粋なエタノールで悪酔いするって不思議だな、と自分でも思う。

ある時、変わった体験が。訪問先で久保田の千寿を勧められた。千寿は醸造アルコール入りで、これまでも悪酔い体験複数。勧められ、仕方なく飲んだらドスンがこない。あれ?不思議だな、と思い、聞いてみたら「一年以上部屋の隅っこで放置していた」という。エタノールが水分子とこなれたのだろうか。

大学の実験で、同じ製法で作られた鉄の棒3本の曲がり具合を計測しろ、という実習が。先生に聞くと、全く同じ製造ラインで、同じ条件で作ったものだという。そんなの同じ計測結果になるに決まっているやん、と思ったら、実によくバラつく。同じように作ってもこんなにバラつくとは!

化学成分が全く同じなのに同じ効果を示さない。原因が全く分からない。けれど再現性よくその現象が観察され、元に戻すと元に戻る。そんなことがよく起きる。しかもその原因を突き止めることは困難。そんなことが世の中にはまだまだ転がっている。

窓も何もない、完全閉鎖され、年中同じ気温で保たれた実験室で、植物の細胞培養してる方からの話。季節によって実験の成功率が変わるという。日も差さないのに!温度も一定なのに!植物の細胞は何かを感じて、反応しやすさが変わるのだという。原因は不明。

100%(近くに)純度を高めたつもりでも、完全に人為的にコントロールした環境のつもりでも、どうもそうはなっていない「ゆらぎ」がある。もちろん、大きな傾向としては制御できるのだけど、どうも何かの要因が残っている。こうした科学の中の不思議は、いろんなところで見つかる。

思い出追加。中国茶の先生が、よく似た備前のぐい呑み2つ出して同じ日本酒を注ぎ「利いてみて」。飲んでみると、味が違う!いろんなぐい呑みやお酒で試したけど、片方の備前のが日本酒の味を劇的に変える。他のぐい呑みはそんなことないのに。もう一つの備前と何が違うのか、見た目で分からないのに。

やっぱり同じ先生が別のぐい呑みを。それにビールを注いで「試してみて」。不味い!このぐい呑み、ビールが不味くなる!
面白くなって、ビール系飲料やノンアルコールビールを試したら、ビール系の味のはみんな不味くなる。他のお酒はそんなことないのに。不思議。

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