電力供給になぜ石油、天然ガス、石炭が不可欠なのか

自然エネルギーの普及に大切なのが、雨。
自然エネルギーは、自然任せ。太陽光発電はお日様が出ている時にしか発電できない。風力発電は風が吹いてる時だけ。そのとき発電した余分の電気を貯めるのが、揚水発電。下流の水を電気の力でダムに戻し、自然エネルギーが発電できないときに水力発電。

しかし今年のヨーロッパは干ばつで雨が降らず、揚水発電したくても水がなかった。だから自然エネルギーで作った余分なエネルギーを貯めようとしてもできなかった。自然エネルギーの弱点をあぶり出した。もし今後、自然エネルギーをさらに普及させたとしても、電気を貯める技術の開発が欠かせない。

電気を貯める技術は、あまり決定的なものがない様子。リチウム電池、全固体電池などが開発されているけれど、大きなエネルギーを貯めるにはまだパワー不足らしい。ナトリウム電池もまだ十分とは言えないらしい。自然エネルギーが石油などの化石エネルギーにとって代わるには、まだ電池がパワー不足。

自然エネルギーで作った電気を水素製造にあてる開発も進められているけれど、効率よく水素を作るのもまだまだのようだし、何より作った水素をコンパクトに貯める技術でまだよいものがないらしい。水素は常温ではどれだけ圧力をかけても液化しない。かなり超低温にしないと液化しない。

超低温に冷やすのにエネルギーを食うから、水素を貯めるだけでエネルギーが無駄になってしまう。水素吸蔵合金というのも開発されてるけど、重い、かさばるという問題がまだまだあるらしい。そんなこんなを考えると、自然エネルギーが化石エネルギーを上回るほど作れても、貯められないという問題が。

貯める技術が重要な理由の一つが「停電するから」。今の交流で送る電気のシステムは、電気の消費と供給のバランスが崩れると停電する。だから自然エネルギーが電気を作りすぎても停電する。少なすぎても停電する。電気の消費と同じ量の電気を供給する必要がある。

石油、天然ガス、石炭(化石燃料)による発電が優秀なのは「電気の消費と供給のつじつま合わせ」が可能だから。電気の消費が急に高まれば、石油や天然ガスを燃やして大量に電気を作り、消費が減れば発電を減らすという臨機応変な発電が可能。融通が効く。こんな芸当ができるのは化石燃料だけ。

もし化石燃料による発電が減ると、電気の消費と供給を、臨機応変に釣り合わせることができなくなり、停電が起きやすくなる。自然エネルギーはお天気任せなので、人間の電気の消費量に合わせて発電してくれない。余ったり足りなかったり。化石燃料という調整役がなくなると、停電しやすくなる。

しかし今年のヨーロッパは干ばつで雨が降らず、揚水発電したくても水がなかった。だから自然エネルギーで作った余分なエネルギーを貯めようとしてもできなかった。自然エネルギーの弱点をあぶり出した。もし今後、自然エネルギーをさらに普及させたとしても、電気を貯める技術の開発が欠かせない。

化石燃料という調整役に引退してもらうには、揚水発電や充電池のような、余った電気を貯め、足りなければ電気を出す、という調整弁役を開発する必要がある。この調整弁役の技術が、まだ決定的でない。今一つ役不足。このままでは、電力供給が安定せず、停電しやすくなるかも。

次の時代は電池が重要、とされるのは、こうした理由から(大型トラックや農業機械を動かすパワーのある電池も必要)。しかしどうも、電池というのは原理的にあまりエネルギーを貯められないらしい。
1リットルの体積にどれだけエネルギーを貯められるかをエネルギー密度というけど、電池は低い。

電池は「イオン結合」という「弱い結合」を使ってエネルギーを貯める。他方、石油や天然ガス、石炭などの化石燃料は「共有結合」という「強い結合」でエネルギーを貯めてるので、エネルギー密度が高い。原理的に、電池はエネルギー密度を石油ほどには高めにくい。

だったら、共有結合という強い結合でエネルギーを貯められたらよいのだけど、人間は共有結合の形でエネルギーを貯めるのがまだ下手くそ。あまり効果的な技術がない。端的に言えば「石油を作ることができない」。もし余った電気で簡単に石油を作れれば画期的たが、それは難しい。

エネルギーを大量に貯めることができ、必要なときに電気を出せる、そんな技術を開発できるか。今のところ、まだ目処も立っていない様子。停電せずに済み、工場を停止させずに済む電気インフラを維持できるか。電気を貯める技術開発が、極めて重要。

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地球温暖化を防ぐためにも石油などの化石燃料から早く卒業したいのに、簡単にはそれができないのはなぜか。食料安全保障の観点からエネルギー供給の問題まで考えてみた本。
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