『税金を使ってお米を配る』のムダさについて

シングルマザー支援を中心に貧困問題に取り組んでいる辻由起子さんが、現場からの声を届けておられました。許可を得たのでここでシェアします。お米を配るという政策の問題点について。
・・・・・・・・・

『税金を使ってお米を配る』が、いかに税金のムダ遣いか。

体験しないとわからないと思うので、普段やっていることをレポートします。

今回は、災害備蓄の余剰「消毒グッズ」が、子ども食堂などに提供されました。

お米ではありませんが、お米を運んでいると想像しながら読んでください。

私たち市民は人件費・ガソリン代も含め手弁当でやっていますが、官がやると、人件費、事務費、輸送費などが発生します。

どういうお金が発生するかというと…

✅私がいつもお世話になっている運送会社で、お米10キロの送料は、約1500円です。

✅申請書類に「お米が いる いらない」 チェックをして、役所に提出してから発送される予定なので、往復の郵便料金もかかります。

✅申請書類をつくるお金&封筒に入れて発送するのも、税金です。

✅配るのに必要な、莫大な人・時間・ガソリン代。

✅地産地消では足りないから、どこかからお米を購入する必要があります。

SDGsから程遠いのが「お米を配る」作業です。

「もらえるものは、もらっとこ」と、申し込んだものの、「うちでは必要ない」という家庭は、私たちのような団体に持って来られるので、受け取りのやり取りをメールや電話で何度か調整したあと、提供側・受け取り側、両方のお金・人件費・ガソリン代が更に発生します。

お互いの本来の活動ができなくなります。

「お米をもらって、ラッキー」と思われるかもしれませんが、スーパーで購入した方が安くて、好きな銘柄を、必要な量だけ購入できます。

税金が高くなる理由は、全体から見たら小さな事かもしれませんが、こういうムダ遣いを許しているからです。

一人ひとりに「お米10キロ」が届くまでに、何度も荷物を持ち上げて置く作業があって、ようやく、誰かの手元に届きます。

「子育て支援」と謳うなら、5千円相当のお米ではなく、18歳以下全員に1万円の給付の方がよっぽどいい。

お金を配ると「親が勝手に使う」という議論をよくされますが、今までの経験上、お米を炊かない家も多いので、そっちの方がよっぽどムダ。

全員に配ると、ある一定数そういう家庭があるのは防ぎようがないです。

そもそも。

2013年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」が成立してから約10年。

お米を配らないと、お腹がいっぱいにならない子どもがいる…現状に疑問を持ってほしいです。

「18歳未満の子ども1人につき10キロ」というけれど、今までお米を配りまくってきた経験上、食べ盛りの中学生がいる家庭は、1週間もたないです。

逆に、乳幼児で、母親がお米は食べない…という家庭は「お米はいりません」と言われます。

そもそも。

若い世代の給料の低さ、非正規雇用の高さ、税金の高さ、保育・教育環境…根本的な政策をなんとかしてもらわないと。

「お米」という目くらましではなく、根本解決が必要です。

そんな事を考えながら、昨日もひたすら「私ら、運送会社でも、お米屋さんでもないで…」と思いながら、早朝から深夜まで、必要な家庭に物資をお届けしていました。

お米配りに公務員の手間暇がとられて、結果、住民サービスが下がる。
本当に必要な政策にエネルギーを注げないから、更に税金が上がる。

お米に罪はまったくないですし、行政とつながっていない家庭がお米をもらえる事で助かるのは良いのですが、私は自給自足の農家生まれなので、政府の減反政策などに農家が振り回された歴史を見聞きして育ちました。

自分が「違う」と思ったことには、ちゃんと声をあげます。

参考までに ↓

✅農林水産省
2020 (令和2)年度
年間1人当たりの米の消費量
50.8 kg

✅博報堂総研 生活定点調査 (1992年~2022年)
お米を1日1回以上食べないと気が済まない人の割合
2020年 42.8 %

・・・・・・・
辻さんは最近、災害備蓄の余剰「消毒グッズ」が子ども食堂などに提供され、それを配る作業を通して、「もしこれがお米だったら」と置き換え、現場で起きる問題点をあげておられます。

現場の声は重要です。これを踏まえた上で、政策を考えていきたいものです。

なお、米屋という方からの反応を紹介すると、
・公が配るとなると、同じ品質のコメを大量に配ることになる。しかし銘柄もバラバラなのがコメ。同品質のものを大量に同時期に揃えるのは無理がある。
・コメをどうやって配るのか?
・米屋や卸の仕事を奪うことになりかねない。
・コメを欲しがらない家庭はカビさせるだけに終わる。
・まだお米券を配る方がマシ。それなら様々な銘柄のコメを消費者が選んで買える。供給側も対応可能。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?