北朝鮮風のリーダーシップ

「首相は〜するよう指示した」と言うのがテンプレになってるけど、私は気色悪いと感じている。この不気味な表現は以前、北朝鮮のニュースでしか耳にしなかった表現。将軍様が〜するよう指示された、ってな感じで。

日本の首相は歴代、ボトムアップであることを隠そうとしなかった。「この事案については〜することとなりました」という表現が多かったように思う。官僚が現場から聞きとりを重ね、練り上げた案に承認を与える。案を練り上げたのは部下達だけど、決をとった最終責任は自分にあるという形。

首相は別に、日本の何もかもを承知している神様でも何でもないのだから、ボトムアップであることを恥じる必要はない。むしろボトムアップで運用しているということは、ありとあらゆる人材をうまく活用している証拠であり、私はむしろ好ましい表現のように思う。

部下も「これは自分が中心になって取りまとめた」と誇りに思い、ますます仕事に熱が入るというものだろう。政策が現場とそぐわないものになったら評判がガタ落ちになるから、そんなことが起きないよう、現場でのヒアリングも十分に行うし。多くの人たちが有機的に躍動するようになる。

しかし「首相が指示した」だと、すべての案は首相から湧き出たという体裁になる。うまく行けば全部首相の功績。うまくいかない場合は現場のせいにしがち。これでは現場はやる気をなくしてしまう。

私の記憶では、「首相が指示した」という表現は、第一次安倍政権で妙に増えたように思う。その後、首相が変わり、民主党政権を経て再び第二次安倍政権が始まると、またしても「首相が指示した」という表現が。

安倍政権の時は不思議なことにNHKニュースのナレーションまで北朝鮮のニュースで登場するアナウンサー風になり、みんなから「北朝鮮か!」と気色悪がられてしばらくしてナレーションが交代したことがある。「首相が指示した」とナレーションの2つが北朝鮮風になるという奇妙な現象。

その後、安倍首相と旧統一協会との浅からぬ縁が明らかになった。私は妙に符号した感を覚えた。「あ、日本を北朝鮮みたいにしたい人がいたのかな」。
岸田首相は、今も「首相が指示した」という表現を踏襲している。強いリーダーシップを演出するためだろうけど、どうも北朝鮮風なのが気色悪い。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?