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英会話教室で学んだことは英語だけじゃなかった話

先日、英会話教室の先生が母国のカナダへ帰ることになった。彼(以下、「ジョン」(仮名))のレッスンは迫真の演技と得意のイラストを駆使した分かりやすく、楽しいものだった。だから、とても残念だった。

ジョンへお礼の手紙を書いていたら、私は英語以外のことをジョンから学んでいたことに気づいた。それは、「好きなものを、好きと言うことの楽しさ」と「人との違いを楽しむこと」だ。そのことを、書き残しておきたい。

初めてのレッスンの自己紹介で、ジョンは「僕は仮面ライダーが好きなんだ!(I love Kamen-Rider !!!)」と言いながら、全力の変身ポーズを披露した。私は唖然とした。
2回目のレッスン。ジョンは「カッコいいだろう!(So cool !)」と腰に着けた仮面ライターの変身ベルトを見せてきた。私は「イエス」とだけ応えた。
3回目のレッスン。ジョンは「これゲットしたんだよ!(Yeah !!!!)」と仮面ライダーのクリアファイルを鞄から出してきた。私は無言で微笑んだ。
それ以降のレッスンでも、英会話の例文には必ず仮面ライダーに関する単語が登場した。

それだけ好きなものがある、ということは良いことだと思う。そう思いつつ、正直、毎回、アクションヒーローについて無邪気に話すジョンに引いていた。ジョンは30歳前後。いや、年齢なんて関係ないのだけど。だけど。全力の変身ポーズを披露することは恥ずかしくないのか。変身ベルトを日常的に着けるのって、子供の時だけじゃないのか。着けたくても、家でコソッと着けるんじゃないのか。なんて、思っていた。

私には好きなアイドルがいる。でも、何となく恥ずかしくって共通の趣味を持つ友達としかアイドルの話はしない。昔、アイドルについて話した時、マイナスなことを言われたり、知識が浅いことを指摘されたりしたからだ。とはいえ、私もジョンに引いていたのだから、傷つくことを言ったヤツと同じようなものだ。

ジョンは私に、「好きなものは何か?一番は?僕の仮面ライダーのようなものは君には無いのか?」といつも聞いた。毎回、アイドル以外の話をしていたのだが、ジョンが何度もこの質問をするので、”仕方なく”、好きなアイドルの話をした。するとジョンは、その場でスマホで調べて、興味津々にアイドルのことを質問してくれた。「彼らはどんなジャンルの歌を歌うんだ?おすすめは?」「なんで好きなんだ?」「いつから好きなんだ?」「一番好きなのは誰なんだ?」「会ったことはあるのか?」。
本当は、”仕方なく”、じゃなかったかもしれない。いつからか、楽しそうに仮面ライダーについて話すジョンが素敵に見えていたし、羨ましかったのだ。
それに、自分の仮面ライダー好きと同じ熱量で、私の”好き”について知ろうとしてくれるジョンの姿勢はとても素敵だった。ジョンはそれ以降のレッスンで、英会話の例文にアイドルを登場させてくれた。私は、ジョンとそのコミュニケーションが出来て、本当に楽しかったし、嬉しかった。

”好き”は自分の中で楽しむもので、人に言うものではない。好きなものに対する、他者からの偏見も受け入れなければならない。好きだと言うには、その対象について全てを知っていないといけない。そんな風に勝手に思い込んでいた。
でも、今はそれらが間違っていると分かる。
「好き」と言うことを楽しんで良いし、誰かの「好き」を知ることは自分との違いを楽しめる機会になる。

ジョン、ありがとう!!!

巾着に仮面ライダーを刺繍したジョンへのプレゼント


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