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水素への理解がより深まれば、医療も美容も新たな世界が広がる


 
日本における水素研究を牽引する山口大学医学部器官病態内科学講座 教授の佐野元昭さんと、ヘアメイクアップアーティスト・森ユキオさんの対談が実現。
“科学”と“メイク”というまったく違うアプローチでありながら、水素に秘められたパワーに可能性を感じている二人が、それぞれの視点でその魅力を語ります。



山口大学医学部器官病態内科学講座教授/佐野先生と
ヘアメイクアップアーティスト/森ユキオさん


抗酸化力は強ければいいというわけではない!
人類の進化の歴史に大きく関わってきた、水素と酸素。


森:まずはズバリ、水素について教えていただけますか?
 
佐野:水素の話をする前に、まず酸素の話をさせていただきます。我々は酸素を取り込むことでエネルギーを作り、それを活動の源にしています。人間にとって酸素は必要不可欠なものであり、地球上に酸素があったことによって、単細胞から多細胞化して人類まで進化してきたわけです。
 ただ酸素といったらすべて良いのかっていうと、実はそうではない。過剰すぎる酸素が有害であるということは医学的にも明らかになっています。過剰な酸素は、日常生活でいえば疲労の原因だったり、病気でいえばガンになったり動脈硬化の原因になったり、認知症の原因だったり、さまざまな弊害をもたらしてしまうんですね。
いってしまえば、老化そのものの原因も酸素なわけです。
 
森:酸素にはいい面と悪い面があるってことですよね。
 
佐野:そうです。でも、我々は酸素を吸わないと生活ができませんので、ジレンマが生じます。酸素の作用は、その酸化力に依存しておりますが。これが強すぎると、有害な作用が目立ってきます。鉄が錆びてしまうように体も錆びてしまって、さまざまな病気の原因となるわけです。
 この酸素の「ダークサイド」を中和する働きを持っているのが、水素なんです。わかりやすく説明するならば、酸素がアクセルだったら水素はブレーキで、それぞれが表裏一体になっている、という感じでしょうか。
 
森:なるほど、わかりやすい。
 
佐野:少し話は逸れますが、人類は進化の過程において、どっちかの選択を迫れたらしいんです。
 
森:といいますと……?
 
佐野:酸素を使って膨大なエネルギーを得て、細胞分裂して進化していく道を選ぶか、単細胞のままだけれども、体内で自ら水素をつくって老化しにくい生き物になる道を選ぶか。
 
森:なんと!
 
佐野:酸素を使ってエネルギーを作る分子のコンプレックスと水素を作る分子のコンプレックスは同じような形をしていて、二者択一なんですね。両立できないんです。我々の細胞は酸素を使って膨大なエネルギーを産生することができますが、水素を作ることはできません。であれば、水素は外から取り込めば、この2つが両立できるのではないか、というのが私の研究なんです。
 
森:非常に面白いですね! これを理解することによって、皆さんの抗酸化についての考えをアップデートできるのではないかと思います。というのも、ほとんどの方は抗酸化力は強ければ強いほどいいと信じています。
 現にビタミンやポリフェノール、アスタキサンチンなどなどさまざまな抗酸化サプリなどがとても人気で、数字が高いものほど選ばれています。僕は抗酸化力が過剰に強いものを常に服用するのは怖いと認識しているんですが。
 
佐野:過剰な抗酸化物質が怖いっていう感覚は、森さん、さすがです。
ビタミンCとか、ビタミンEとかっていうのは、確かに非常に強い抗酸化力をもっているんですが、逆を返せば強力な還元力をもっているということです。つまり、我々がアクティビティを保つために必要な酸化反応まで、すべて押さえてしまうリスクがあるんです。ですが、水素は還元力がそこまで強くない。細胞の機能維持に必要な酸素の働きまでブロックすることはないんです。酸素がさらに酸化力を増した活性酸素に化けたときにだけ、水素はそれに対して作用して中和してくれるというイメージです。
 
森:普段の酸化反応とか、生きていくために必要な元気を維持するために必要な酸化に対しては影響を及ぼさずに、有害な部分のところだけをちょうど中和してくれるぐらいの弱い還元力を持っているっていうのが、水素のメリットということですね。
 
佐野:そうです。強力な還元力を持っているものを摂りすぎた場合には、必要以上に酸化を抑えてしまうことで、調子が悪くなることもあるんです。でも水素に関しては、吸いすぎたとしても、それによって調子が悪くなるということはないわけです。
 
森:悪玉と呼ばれている活性酸素=ヒドロキシラジカルに対して水素が有効なのは間違いないと思いますが、それは身体の不調を防ぐことに繋がっていると考えて良いでしょうか?
僕、個人としては体調が明らかに安定するという実感があるのですが。
 
佐野:どうしても“必要悪”として酸素の一部が活性酸素になり、ヒドロキシラジカルができて、ヒドロキシラジカルからさらにいろんなものが酸化してしまうのですが、我々の身体には当然、酸化されたものを速やかに無毒化するシステムが備わっています。
 ところが、いろんな病気の状況とか、加齢とともに酸化ストレスに対する防護力が低下してくると、ヒドロキシラジカルを消去できずに臓器障害を引き起こし、その結果として、ガンや動脈硬化、認知症など、あらゆる病気を引き起こしてしまいます。
 ですから、抗酸化力が足りないところは何とか補ってあげなければいけないわけです。そのときに水素を活用すると、我々の抗酸化力が下がっていても、若いときと同じように、あるいは健康な状態のときと同じように働いてくれるので、病気になりにくいっていう風に考えるのがいいのではないでしょうか。
 

酸化が原因の疾患に対する水素の効果は医療界の定説。
水素はブームから常識へ、次のフェーズに。


 

佐野先生


森:現在医療の分野では、水素は実際はどのような立ち位置になっているのでしょうか?
 
佐野:病気に関しては大きく分けると、いわゆる急性疾患と慢性疾患があります。急性疾患は循環器内科でいうところの急性心筋梗塞のような病気で、ある日突然発症して、患者さんの命を守ってあげるためにサッと治療してサッと良くするというイメージです。一方で、慢性疾患というのは、リウマチ患者や神経変性症など、ゆっくりと進行していく病気で、長い時間、患者様に寄り添って機能低下を少しでも遅らせるというイメージです。水素は急性疾患に対しても慢性疾患に対しても、効果が期待され活用され始めています。
 
森:なるほど。
 
佐野:ただ、本当に効果があるかを証明するためには、白黒が早く出る急性疾患の方が結論を早く出せます。心肺停止のような急性疾患の場合は、病態が均一なため少ない数の症例で評価が可能であり、わずか3ヶ月の短いフォローアップ期間でも生存率や神経学的後遺症で判断できます。慢性疾患の場合は、パーキンソン病、アルツハイマー病、リウマチ疾患だと、病気の進行もゆっくりですし、進み方にも個体差が大きいので、多くの患者さんを対象として少なくとも2年、3年はフォローアップしてみないと効果が判定できません。
 
森:確かに、そうなりますよね。ところで、水素が効くという人はいる一方で、まったく、自覚症状的に効果がないという人がいますが、この点はどう考えますか?
 
佐野:私としては、水素を摂取して変わらない人と変わる人がいるっていうのが本物だと思っています。全員に効くってものっていうのは、存在しないんですよ。何十兆円、何百兆円という高額な医薬品で、どんなに素晴らしいといわれる薬であったとしても、3人に1人効いたら、それはもう極めて優秀な医薬品なんです。
 
森:そういう目安なんですね!
 
佐野:そうです。3人に2人っていうのもほとんどない。私は動物実験とか臨床研究で水素の効果を目の当たりにしているので、その効果を頭で理解していますが、それでも水素を吸入しても正直、変化を自覚できません。一方で、妻は水素を吸入すると頭がボーッとなるけれど、翌日の肌の調子がすこぶる良いと、明らかに変化を自覚します。
 
森:水素の摂取を10年以上続けていてしっかりと体感を得ている身としては、老化と健康維持にもっとも優れているのが水素と確信しています。今では、ガス吸引に水素風呂、水素水、水素ゼリーを使い分けて日常に取り入れていていますが、吸引でいえば摂取の時間やタイミングなどわからない事がまだまだあります。今後どう解明されていくのでしょうか?
 
佐野:水素が世の中に急速に普及し始めたのは、2007年の太田成男先生の論文以降だったように思います。もちろん、それ以前からも実際に効果を感じていた方はたくさんいらっしゃったようですが、学術的に注目を集めたのはこれがきっかけだったと思います。それから16年が経過して、その間に日本だけではなくて、世界中からさまざまな、それこそ急性疾患から慢性疾患まで、あらゆる病気に対しての有効性が証明されてきたので、今は水素分子自体が、いわゆる酸化する病気に対して有効であることという事実は、揺るがない段階に達していると思います。
 
森:医療の分野ではそういう常識になっているんですね。
 
佐野:ただその水素を一般の方々がどうやって取れればいいのか。吸入がいいのか、水がいいのか、ゼリーがいいのか。個々の患者さんが水素に何を求めるかによっても変わってくると思います。コストパフォーマンスの問題もあるので、そんな中で何を選択していくのか、最適な投与方法を示していくことが課題かと思います。
 
森:やはり、そうですよね。
 
佐野:吸入だったら1日何時間吸入すればいいのか、どのくらいの濃度の水素だったらいいのか、というのはまだまだ研究段階なので、その辺も含めて整理されてくると、さらに普及してくると思います。我々は今、実際にある程度はっきりと水素が検出できるような濃度で摂取しているんですけど、実はそんなに高い濃度は必要ないかもしれない。となれば、もっと選択範囲は広がってくると思います。もちろん、医療業界において、それが真のいわゆる治療薬としての効果として万人に認めてもらうためには、しっかりとした臨床試験で結果を出すことが重要です。
 
森:そうですね。
 
佐野:心肺停止蘇生後の患者さんへの水素ガスの有効性と安全性を示した我々の臨床試験は、ある程度その礎にはなったと思うんですが、まだ決定打にはなっていません。質の高い臨床試験を今後積み重ねていくと、さまざまな病態に対して水素が信憑性の高い科学的な治療法として認知されるようになると思っています。その一方で、やっぱり影響力のある方たちの実体験のもとに、抗疲労効果をはじめとした健康増進にも水素が有効であるということをアピールしていただく。その草の根的な活動も非常に重要だと思います。
 
森:それで言うと、僕自身は世間との温度差を感じています。エビデンスが徐々に増えているにも関わらず、まだ水素は“怪しいもの扱い”なのがとても不満です。
 
佐野:やっぱり風評被害を恐れてるんだと思うんです。世間から、水素なんて使っているんだと言われたくないのだと思います。現実的には、一部のアスリートの人は、水素が体感として有効であることを自覚されており、トレーニングには欠かせないものとなっています。
 
森:そうですよね、多いですよね。
 
佐野:それは一時期、水素がブームになったときに、いろんな意味でみんなが急ぎすぎたんですよね。それでワーッと産業的に伸びてしまって、そうなると、どうしてもまがいものが出てきちゃったんですよ。それによって、“水素=まがいもの”みたいなレッテルが貼られてしまったということもありますよね。
 
森:僕から言わせれば、もう30年ものあいだ美容をやっていて、いろいろ試してきた中で、水素の実感ってやっぱりすごいなと。世の中的には情報がちょっと先走ってしまったかもしれないけど、でも実際ブームになってから何年か経って、今やっと期待通り、いや期待以上に臨床試験とか体感が出てるなって。そういう風にしか感じてないんですよね。
 
佐野:森さんのような美容のプロにそういってもらえるのは、非常にありがたいですね!

profile

 
山口大学医学部器官病態内科学講座
教授 佐野元昭さん
慶應義塾大学医学部研修医(内科学)を経て、1996年慶應義塾大学医学部助手(内科学)に。2000年にはBaylor医科大学循環器内科Research Fellow、2004年にはBaylor医科大学循環器内科Assistant Professorとして活躍。
その後、2006年からは慶應義塾大学医学部准教授として、慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート水素ガス治療開発センターの活動を推進。2023年には水素療法が画期的な治療法となりうる臨床試験結果報告。現在は、山口大学医学部器官病態内科学講座教授。
 
森 ユキオ さん
ROIヘアメイク代表
ステムボーテ ブランドディレクター

90年代から雑誌、広告などさまざまな媒体で活躍し、あらゆるビューティトレンドを牽引。数多くのモデルたちから圧倒的な支持を得ている。メイクはもちろん、スキンケアに関する知識も豊富。常に情報をアップデートし、数々のヒットプロダクトをプロデュースしている。
 

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