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生乳廃棄の問題について

牛乳余りについて表面的に説明するニュースしか無い気がします。
根本的なところまで解説してくれる人いないだろうか。
酪農業界にいる身として私の理解を整理します。
間違っているところはご指摘お願いします!

生乳はコロナ以降余り続けている

2019年の緊急事態宣言以降、乳製品はずっとあまり続けている。
当初説明されていた「学校給食がなくなったことで牛乳消費が減った」というのはその時だけであって、その後は飲食・外食向けの乳製品(牛乳だけでなく、ヨーグルトやバターや生クリームも乳製品)需要が減ったことで生乳の消費は減ったまま。
余った生乳はバターと脱脂粉乳に加工され民間で在庫されている。
生乳廃棄は表面的な動きでその裏ではバターや脱脂粉乳の在庫過剰になっているという問題は根深く、バター、脱脂時粉乳の在庫量は過去にないレベル。
前回廃棄のあった2016年の在庫量に対しバターが1.6倍、脱脂粉乳が1.85倍の在庫量となっている。

コロナ以外の要因でも生乳消費は減る可能性がある

この解決のために「牛乳を消費しましょう!」というのは目の前の解決策の一つとしていいと思うのだが、「牛乳を消費しましょう!」としか言えないことこそが根本的な課題とも思う。

コロナ以降消費が落ち込んでいることに加え、温室効果ガスの問題、飼料作物を家畜に給餌することによる迂回生産などの問題など、環境負荷への課題として乳製品の消費が減る傾向があったり、虐待的飼育への反対としてのヴィーガンの考えが広がる可能性もある。
また、日本人の人口が減少に転じ、特に少子化により牛乳をガバガバ飲む世代は特に減る傾向にあり、乳製品の消費が落ち込むネガティブな要因が並べられる。
既にコロナと並行してこういう要因で消費が落ち込んでいる可能性も否めない。

生乳生産は減らせない

一方、生乳生産はこの一年で減っていない。
減っていないというより「減らすことができない」
牛は生まれてから搾乳を始めるまで2年以上かかるため、需要に合わせて生乳を生産するためには2年のタイムラグがある。
減らそうと思っても2年前にこの状況を予測することは難しい。
では、2年後のため今から生産を減らせるのか??

生乳生産を減らせない一つの要因

現場レベルの話をすれば、飼料は高騰しておりこの1年半で1.2倍に、トラクターなどの機械を動かす燃料代も1年で1.2倍に、生乳の買取価格も上がっているものの厳しい状況が続いていて、この状況を解決するためには規模拡大によるスケールメリット以外に方策が取りづらい。
頭数を増やすということは生産を増やすということでもある。
資金の調達ができない、もしくは跡継ぎがいない生産者は残念ながらやめるしかなく、その代わり設備投資で増頭できる生産者はさらに規模拡大をしていく。
現状は「廃業する酪農家<規模拡大する酪農家」となっていて生産の拡大を止められない。
というのも、国としても規模拡大への施策は今現在も続いていて「クラスター事業」「AI化」「集約化」などへの補助金は引き続き手厚い。

そもそもこういう酪農業界の構造が根本的な課題なのだと思う。
業界内のしがらみや既得権益などが強いイメージ(勝手に思ってるだけ??)の酪農業界の構造改革はできるのだろうか。

森林ノ牧場の場合

一方、私自身は元々酪農家ではなく会社の一事業から始まった牧場で、六次産業化により生産・加工・販売を一貫した経営をすることで上記の酪農業界の構造の中には組み込まれない酪農家である。
「放牧」「森林の活用」「耕作放棄地を価値に」という「生乳の価格」ということ以外の付加価値を乳製品に乗せていて販売価格も高い。

構造改革ができるのか

自分のやっていることが素晴らしいとか、これを真似しろ、ということが言いたいのではないし、うちのような酪農家ばかりになると乳製品の需給バランスが取れなくなるのでそれはそれで問題。

イノベーションのジレンマ状態なのだろうが、六次化を既にやっている部外者として、大好きな酪農をよくするために何ができるのかと考えて行動に移す日々が続きます。


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