見出し画像

分断が生む善意による後回しという罪

コロナ、ウクライナ戦争、円安など一連の状況により
酪農業界は結構やばい状態が続いています。

コロナの影響でコンテナ人員不足
円安・日本経済の弱体化で飼料が日本に入らなくなってきた上に、
飼料価格が異常に上がっていて昨年末の20−30%アップとなっています。

酪農にとって飼料代は原価そのものなので
本来その分販売価格を上げて対応しなければなりません。
しかし、酪農家から各組合などへの乳価は変わらないままで
原価が上がった分コスト高・利益が薄くなっている状況です。

原価が上がっているんだから乳価を上げて対応すればいいものの、
なぜ上げられないかというと
昨年から問題になっている「生乳が余っている」から。
これは昨年から今年にかけて大きなニュースになりましたが、
3年前のコロナから蓄積されたもので今に始まったことではありません。

これは海外でも同様でコロナで乳製品の需要が落ちた際、
アメリカやヨーロッパでは消費が減った分を生乳廃棄も行い
酪農家は痛みを伴いながらも生産調整を行ってきました

日本の場合、酪農家の生乳は守られました。

生産調整することなく酪農家が痛むことなく
指定団体が生乳を買い続けることができたのです。
酪農家を思っての善意の判断が酪農家を守りました。
生産者も未来の需要増、コロナ復活後のために生産をし続けたのです。

・・・乳製品消費は減っているのに。

問題を後回しにしているに過ぎないのです。
その結果余った生乳で作られるバターや脱脂粉乳の在庫は増え続け
生乳の行き先がなくなっていき、
その度に繰り返される「牛乳飲んでください」キャンペーン。

結局、
コロナ前同様の価格や量で販売し続け、
消費が減った分は消費者に協力を求め2年以上を過ごしてきました。
ここに酪農家の「消費が減っている」ことへの危機感や当事者意識はあったのでししょうか。

我々、森林ノ牧場の場合。
六次産業で直接消費者へ販売し業界団体外で販売する我々も、3年前のコロナから大きなダメージを受けていて、一時期は元の乳製品の消費が8割ほど無くなりました。
そのため色んなことをやりました。

搾乳回数を減らし生産調整を行い
牛を出荷し乳量を減らすことも検討し
(出荷したら牛は戻らないので最後の手段として出荷調整まで行ったけと、ギリギリのところで回避!)
販売価格を下げて安くても消費される様に知り合いに頼み込み

多くの協力をいただいて、私も現場も一体となってとにかく必死に対応してきました。

こういう当事者意識が3年前の酪農業界にあったら今の状況は違っていたのではないでしょうか。
この問題の根深いところは誰も悪気がなく「善意」で問題を先送りしたこと。
3年前、正直業界に守られる酪農家が羨ましかったけど、
一方で矢面に立たされ消費が減っている影響を直接受けてすぐに対応していることは絶対に無駄にならないとも信じていました。

生産者含めた当事者意識
酪農家による乳製品消費への自分ごと化
時に痛みもありながら
自分だけのためでなく自分のために全体を考えること
酪農業界の構造や意識の改革ができなければ今回の困難を乗り越えられない酪農家が増えてくると思います。

とはいえ、うちも今回の飼料の入荷不足・飼料高騰は本当にきつい。
だからこそ酪農文化を高めること、酪農の価値を高めることにもっともっと注力していきたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?