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#みの編マフィア小説 【第2夜】 一触即発

「おい達夜ァ!! あと30分で始まるってのに、随分と悠長だなぁ!? ウチの若手にやらせりゃあとっくに終わってるぜ!!」

キャップを前後逆に被り、体格のいい男を2人従えた男が、まくし立てるように達夜に詰め寄った。

「あぁんん!!?そう言うてめえこそ、随分な重役出勤じゃありませんかねぇ?偉くなったもんだなあ、なべサンよぉ?」

達夜も負けじと言い返す。

「狂一朗さんから頼まれてたハイボールを調達しにいってたんだよ。能無しのてめえと違ってちゃんと働いてんだ。それとな、俺を呼ぶときは語尾を上げろ!何度も同じこと言わせんじゃねえ!!」

どうやら”なべサン”と呼ばれた男は、自分の名前のイントネーションに並々ならぬ拘りがあるらしい。


「お前ら、毎度毎度いい加減にしろ。喧嘩しかできないのかまったく…」
見かねた狂一朗が仲裁に入る。
「なべ、買い出し行ってきたんだろ?早く中に運んどけ。」

「すいません狂一朗さん! 行くぞ、豆タンク、サンチェース!」

両脇の男2人に呼びかけ、買い出しのビニール袋を中に運び込む。


この組織の定例会には、いつの間にか奇妙な伝統があった。
掲げる盃にはハイボール。
そして机の一角は必ず、近くにあるたこ焼き屋の詰め合わせを広げる。

誰が始めたかは定かではないが、ボスも気に入っているので、特に辞める理由もなく続いている。

この会を仕切っているのが、達夜をリーダーとする「行事取締班」なのだが、必要なものの調達を行なっている”みの亭”と呼ばれるショバのリーダー なべサンとは事あるごとに喧嘩をしているため、準備が平和に済んだことはない。

「あいつら、なんでこんなに仲が悪いんだ?確か去年の夏ごろからだな…」
狂一朗の悩みは尽きない。
夜はまだ、始まったばかりだ。

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