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輝き始めた才能ー髙橋隆大という高卒ルーキー [天皇杯vs飛鳥FC]

2023年5月7日、橿原公苑陸上競技場。
朝から降り続く雨のなか、入場料無料という事もあって観に行くことにした。
奈良県サッカー選手権決勝・兼天皇杯奈良県代表決定戦。
無料なのは県の大会だから。それ故、スタグルとかイベントとか、「おまけ」の部分は一切ない。スタジアムに着くと、レインウェアを着込んでスタンドへ。
今日はメインスタンドのほぼ中央に座った。サポーターの一団からやや外れたところ。その環境のせいか、応援したい気持ちもありながら試合に集中して観る事になる。

対戦カードは奈良クラブvs飛鳥FC。
飛鳥FCは関西1部リーグに所属しているチーム。JFLの一つ下のカテゴリー。あまりこういう言い方はしたくないが、奈良クラブから見れば格下にあたる。
さらにゴールデンウイーク中とあってリーグ戦が不規則でタイトなスケジュールになっている中での一戦。フリアン監督は、いつもリーグ戦でレギュラーを張っている選手のほとんどをベンチ外に外し、普段あまり出場機会のない選手を中心にメンバーを組んだ。
そこに、彼の名前があった。
「髙橋隆大」
そう、3日の宮崎戦でグッズ売場の一日店長をしていた彼である。

ここまで、髙橋選手の名前はほとんど出て来なかった。J3のリーグ戦では、今まで一度もベンチ入りすらしていなかった。
何故?
その理由すら分からなかった。
奈良クラブは、選手が試合に出ない理由を教えてくれないチームだ。怪我?体調不良?それすら教えてくれない。情報にオープンか否か、Jリーグでも「それぞれ」だが奈良クラブはそこを「閉ざす」姿勢を貫いている。選手を守る為だろうか。賛否両論あるだろうが、ファン・サポーターとしてはそこで妄想を巡らせるなど「楽しむ」一つの要素として捉えた方がいいように私は思っている。
髙橋隆大は今どうなっているのか。ネット上でちょいちょい話題に上っているのも何度か見た。若い才能を気にかけるサッカーファンは結構多いだろう。
この試合を以て、いよいよ「情報公開」という訳だ。

飛鳥FCは、しっかりゴール前の守備を固め、相手にボールを持たせつつ隙あらば積極的守備でボールを奪いにかかりカウンターを狙う戦術を取って来た。相手を格上と見た上での戦術だろうか。
奈良クラブは相手のエリアでプレーする事が多くなった。確実に押し込みつつ、しかしなかなかゴールが生まれる気配すら起こらない。サッカーでは割りと良くあるパターンだろう。おまけに、今回のスタメンにFWが本職の選手がいない。奈良クラブは試合を支配しつつ決定力を欠く時間が続く。前半はスコアレスで終わる。
後半になっても試合展開に大きな変化はない。そうこうしているうちに奈良クラブにもちょいちょいミスが発生するなど隙が生まれて来た。
やがて、飛鳥FCにも決定的なチャンスが生まれ始める。シュートが奈良クラブゴールのクロスバーを叩くというシーンも生まれた。
飛鳥FCに流れが傾きつつあるように思えたその時。
ディフェンスラインからのビルドアップという、この試合で何度も見た展開。しかし、ボールがペナルティエリアの間際にいた身長156cmの高卒ルーキーに渡ると、彼はミドルシュートという選択肢をチョイスした。
ゴール!
https://www.instagram.com/p/Cr8BjpcvZ9A/?igshid=MTIyMzRjYmRlZg==

 奈良クラブ公式インスタより

いわゆるゴラッソというやつ。
弾丸ライナーがゴールネットに突き刺さる。
初出場にして初スタメン、そして初ゴール。
上々のプロデビューだ。

守りを固める相手に攻めあぐねるという、どうも盛り上がれない展開だったからこそ彼のプレーがひときわ輝いて見えた。
実のところ、最初の方から自然と彼の方に目が行くようになっていた。堅実なプレーを続けていた奈良クラブはさすがプロと言うべきだが、派手さには少々欠けていた分彼のプレーが余計に目立った。
試合はこの1点を守り切って奈良クラブが勝利。天皇杯本戦へ駒を進めた。

やはり小柄なのが目立つ

難しいゲームだったと思う。希望を言えばもっと点を取って欲しかったが、まあ天皇杯という「負ければ終わり」の大会だから勝てた事を素直に喜びたい。
それに加えて。
やはり髙橋隆大である。一人の選手だけに視線を送る、という事を私はほとんどして来なかった。奈良クラブというチームそのものを応援したいという「箱推し」の意識が強かったので。それでも彼のプレーに目を奪われた。彼がボールを持つだけでワクワクする。そういう選手はそう多くはいない筈だ。

彼のプレーがどこまでフリアン監督の心を動かしたか、今のところよく分からない。監督はこの試合を終えての感想を語っていない。リーグ戦で彼の姿が見られるか、まだ何とも言えない。
けれども。

彼が試合に出れば、そしてボールを持てば、観衆を湧かせる事が出来るだろう。そして、今回掲載した写真を見ても他の選手たちから愛されている事がわかる。レギュラー陣の中に入ってもすぐに溶け込める筈だ。
あとは彼が奈良クラブの勝利につながるプレーが出来るかどうか。フリアン監督はその辺を考えているのではないだろうか。

髙橋隆大。
彼の次の出番を楽しみに待ちたい。









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