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『のぞく』 嶺豪一監督 【在宅映画制作 LINER NOTES #19】

コロナ禍のスライス・オブ・ライフ。この一瞬も、等しく未来へと続いている。

嶺監督は、在宅制作という環境からとんでもないアッパーカットを繰り出してきた。多くの者が目の前の現状に注力するこのご時世、彼はそこから地続きのこれからに目を向け、この外出自粛期間を、ひとりのカメラマンの黎明期に例えた。この期間、私たちはある不可抗力の如く、自問自答を強いられ、ミニマムな自己探求の旅に出た。嶺豪一はその旅路を”のぞく”。日常を切り取るイメージの鮮烈は、次第にマジックリアリズムの気配を帯びながら…。のぞき、のぞかれ、撮り、撮られ、自作自演の密室劇は、やがて合わせ鏡のような無限の迷宮に変貌する。近い未来、コロナウイルスが終息し、私たちは各々の迷宮から外に繰り出し始めるだろう。その時、ふと、思い出して欲しい。もうすでに、どこか誰かの伝説の”始まりのゴング”は、人知れず鳴り響いていたのだと。

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Postscript #19 嶺豪一監督

嶺

・今回の作品の着想は?

在宅映画制作という企画を聞いた時に、まず自分の家の中で何が撮れるかなと考えました。すると一人で一体何が出来るのだろうかという不安が押し寄せて来ました、が普段通りに映画を撮るという事に立ち帰ってみようと思い、今まで一緒にやってきたスタッフに連絡をとりました。カメラマンにはロケハンのように部屋の写真を送ったりして、撮影の手法を一緒に考えたり、編集マンとは映画の構成について話したり、今回組むのは初めてでしたが、シネカリという手法でアニメーションを入れたく、映像作家と入れる場所を検討したりと、今、自分たちがいる場所から出来る創作についての話になり、始めの不安はいつの間にかどこかへいき、普段通りの創作の悩みへと突入していきました。
そこで、自分が以前から長編でやりたいと思っていた、カメラマンの話を、今回の短編でやってみようと思い、「普段スナップ写真を撮っていたが、その男が部屋から出られなくなった時にカメラはどこに向かっていくのだろうか」というテーマで構想を練っていきました。

・撮影時のエピソードや裏話を教えてください。

自宅のWi-Fiの速度がとても遅く、テレビ電話会議でも四人のうち自分だけがフリーズすることが多くて、「例えば、こういうこと?」みたいな感じでカメラマンが何かを見せてくれても、音だけ先に聞こえきてそこから1分後くらいに皆が見ていたものが自分に見える、という事が多くて・・・自分が一番伝えなければいけない事が多いはずなのに、距離を隔てるとなかなか上手く伝えられない。それからは、とりあえず自分で映像を撮ってみてから皆に随時送っては、課題を聞き、また撮影をするというプロセスでやっていきました。リアルタイムでの映像のコミュニケーションが出来なかったことはやはり大きな障害で、豪一のWi-Fiがもう少し早ければ徹夜せずに済んだかもね、と終わってから皆に言われ、スタッフの皆さんには本当申し訳なかったなと思います。僕がアップロードすると待ち時間が3時間と出たものが、皆には3秒と出たり、こんなにも違うのかと驚きました・・・取り急ぎ、光回線の契約を申し込み、現在工事待ちです。

・今回の作品を制作して実感したことは?

制作が終わり実感したことは、今回iPhoneで撮影してみて、4Kの24pという映画モードのような画質で撮影することが出来たり、簡単な編集もiPhoneで出来たり、iPhone一つあれば映画を作れてしまうのだなと。もちろんプロのカメラマンのようなショットや映像美といった技術的なことは全然出来ませんが、映像として撮れてしまうなという感じは驚きでした。今までは携帯電話としてしかみていなかったiPhoneですが、以前よりも大切に扱えるようになりました。もう酔っ払ってiPhoneを投げたりしません。

・ 在宅映画制作を通して、これからの映画制作に活かせそうなことだと思ったことは?

編集は、リアルタイムで遠くにいる編集マンの画面をみながら一緒に編集していたのですが、素材が足りないなと思ったところは、その場で「ちょっと撮ってきます」といった感じで撮影をしてすぐにそれを送り、また編集をしていきました。そういうリアルタイムでの撮影&編集は初めてだったし、色々と試すことが出来たので面白かったです。

・作品をご覧になった人にメッセージをお願いします。

この映画は今自分が置かれている状況がなかったら作ることが出来なかった映画だと思います。
今、皆さんに自分の映画を観て何か感じていただけることがあれば嬉しいです。
そして、いつか、全然違う状況下にいる人達がこの映画を観た時にどう感じるのかな、という楽しみも一つできました。
この先もまた、どこかで映画を作り続けていけるよう、そして、一映画ファンとして映画を観続けられる世界であることを願っております。

・その他、感じたこと、考えたことがあれば、教えてください。

今回の撮影とは関係のない事なのですが、テレビ電話飲みをした時に、切るタイミングが分からなくなり結局朝まで飲んでしまい、一人の先輩はそのまま画面上で寝てしまっていて、また別の画面では先輩が同棲している彼女とキスしたりしていて、僕はベロベロになり吐くという、割といつもと同じように時間は流れているのだけども、ふと周りを見ると一人・・・という感じが、普段通りの飲み会とほぼ同じなのに、やっぱり大きな違いというか、何だか少し寂しかったです。このようなオンライン飲みやオンラインでの人との交流が、今後主流になっていくのだろうかとか、同じくオンラインでの映画作りが、今後一つのスタンダードとなっていくのだろうかとか、いろいろ考えてしまいましたが、人がいるから作れているのだということを信じてその感覚は忘れないようにしようと思いました。

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写真は、なかなか伝わらなかったシリーズです。
スタッフに話してもなかなかイメージが伝わらなかったので、描いてみたのですが、より混乱が生じてしまいました。送って、「絵心よ」とだけ返信が来たときは僕も心の中で「絵心よ」と唱えました。

『のぞく』

監督・脚本 / 嶺豪一 

撮影 / 同居人 

遠隔スタッフ
撮影協力 / 矢川健吾 
タイトル / 川本直人
編集 / 小野寺拓也 
撮影機材 / iphone8 FUJICA35-ML MAMIYA EE

キャスト

嶺豪一

#SHINPA #在宅映画制作 #嶺豪一

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