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記事執筆のパフォーマンス評価

書く力、めちゃくちゃ大事だと思いませんか。そして書く力への評価って退屈なもののままか、なおざりになっているのが普通じゃないでしょうか。

評価方法が変われば、人が成長するプロセスや指導方法も変わっていくと思っています。リバネスでは「話せる・書ける」というコミュニケーションを強化するために色んなことをしてますが、より良い執筆体験にするためにも評価方法がよくしたい。私は社員のライティング指導にここ10年くらいずっと関わっていますが、評価方法の見直しに興味が湧き、考えるところがあったので本noteを書くこととしました。

このnoteでは、行動目標に基づく評価とパフォーマンス評価の違いを調べてみたので、紹介するとともに、リバネス内での取材記事や紹介記事執筆のセルフチェック項目(ルーブリック)を作成してみたので晒します

「行動目標に基づく評価」との違い

サッカー選手の評価で捉えたイメージ

観察可能な行動のリストを作成してそれをチェックしていくこと(行動目標に基づく評価)と「パフォーマンス評価」は別物。行動目標は、機械的に訓練できる要素に分解しがち。例えば「サッカーの試合で上手にプレイできる」という目標を「リフティング」「ドリブル」「シュート」「パス」「ダッシュ」などの要素に分解する。練習場面や試合では「シュートできた・できない」「パスできた・できない」でチェックしていく。
しかし、目標を細分化したうえで、要素の総和が最終的なゴール(試合で上手にプレイする)自体の成功イメージを明らかにしてくれません。ドリブルが苦手ならパス、あるいは相手のディフェンスが固いならシュートはこうする、など補ったり、組み合わせたりすることで個人のプレイスタイルが出来上がります。
パフォーマンス評価は、試合の場面において、問題把握が正確か、判断の際に重視している視点がモレないか(包括性)、もっともらしいか(妥当性)などがプロ(熟達者)のようにできている程度(熟達度)を評価します
よって、パフォーマンス評価で「〜ができる(can-do)」を点検するときも、ドリル的なDOではなく、ゲーム的なDOになっているかを問うことが重要です。
ルーブリックは、「できる・できない」レベルの学習にも使えるが、一番適しているのは「使える・使えない」という思考を伴う実践の評価において有効です。


学び続ける力を育てる評価 =学習としての評価 Assessment as Learning

自分の動きのどこが良かったか、改善点か、という視点を養うのが「学習としての評価」

評価を考える際は、何のための評価かを考えておく必要があります。そこで使われるのが、こういった用語です

  • 学習の評価 assessment of learning

  • 学習のための評価 assessment for learning

  • 学習としての評価 assessment as learning

「学習の評価」は、これまでよく言われる総括的評価のことで、「学習のための評価」「学習としての評価」は形成的評価に相当するが、区別する考えが生まれてきています。両者はフィードバック情報を活かす主体が違い、「学習のための評価」は教師が指導の改善に活かすということです。これに対して「学習としての評価」はフィードバック情報を学習者自身が学習改善に活かすということです。
「学習としての評価」を大事にするのなら、単に振り返りをするだけでなく、レポートやプレゼンの相互評価の場面を評価眼を鍛えるための鑑賞学習的場面として意識化するなど、学習者のモノサシを豊かにする機会を充実させることが肝要です。

of なのか、forなのか、asなのか。

記事執筆のパフォーマンス点検票

優れたライティング力を有したリーダーになり、いい記事を書けるようになることを目指した場合、どういった視点を養えばいいのか。それをまとめるために、レポート課題に対する相互評価票(河野哲也氏作成、出典『学生を思考にいざなうレポート課題』)を参考に、記事執筆のパフォーマンス評価点検票を作成しました。
一見、「行動目標に基づく評価」のようなチェックリスト羅列にも見えます。が、ルーブリックの骨組である、質を捉える観点とグラデーションを盛り込んでいます。質を捉えるための観点として内容面:独創性、や表現面:リズムなどを示し、質のグラデーションをとらえるための軸として、「すぐに読ませたい〜修正されたら読ませたい〜人に読ませるレベルでない」を用意しました。
自分の書き方や記事が、どの段階にいるかを認識するとともに、他人が描いた作品に対してもこの観点で見ていくことで「なるほど独創性がある」といったことが理解する眼が養われるでしょう。

記事にあらわれないパフォーマンスの評価

上記の点検表には、下準備編の項目を入れています。優れたライターには、記事を書く前から優れた素養があると考え、また、前回の執筆時より良くあろうという姿勢が重要だというメッセージを入れ込みたいからです。

パフォーマンス評価の運用

いつ、この評価を適用するといいでしょうか。当面は、原稿一発目へのフィードバックとして使いつつ、最終稿をもとに振り返るときにも使うことを想定しています。2回のサンドイッチにします。あるライティング学習者が1回の記事作成プロセスで、まずは初稿を書くまでは素のままで取組み、フィードバックをかけて記事品質を上げつつ、ライティング力の伸ばしどころを掴む。そして、仕上がりまで辿り着けたら、自分の記事はどこがどう良かったのかを確認する。

成功体験だと思えれば、ライティングは強みになっていくでしょう。伸び悩んでいるならば、何と向き合うべきかもアタリがつけやすくなる。それがライティング力向上の時間をぐっと短縮してくれるはずです。

各項目ををどのように養うか

「じゃあどうやって各能力を養うんだ?」という観点では、幸いリバネスの場合、定期刊行の冊子もあり、執筆に取り組むのがマストという空気があります。その時に流れ作業にさせずに、前回よりも良いものを自分で出す。という気持ちが持てるかどうかが大きいように思います。そのためにも点検表を使って課題を知ってください。

さらに、ピアレビューに関わる人だという意識も持つことが重要でしょう。つまり、評価を受ける人でもありながら、多くの場合、「どうすれば同僚のライティング力向上の力になれるか?」を問われる育成者でもあるのです。この2つの視点を行き来して、「人のライティング力を引き出すプロ」になっていけると、組織としてはライティング力総和が上がって嬉しいです。

結び

評価系は退屈、という出発点からのつもりでしたが、「見る目を養うための評価系」という発想でまとめていけば、評価系もいいものだなと思えています。とはいえ、どうすれば色んな苦手意識を持つ駆け出し社員たちに、ライティング力を身に着けてもらえるか。試行錯誤は今後も続くでしょう。
普通は評価をうけるときは嫌だなあとか、プレッシャーだとか負の感情がつきまとうわけですが、完全に自分のためであり、どう伸ばすのかというアシストとセットなら抵抗感も少しは減ってくれるといいなと思います。
実は、評価系をつくってみると、自分がどのように「ライティング力を向上させてきたか」の棚卸し体験をすることになりました。恥ずかしい記事をいっぱい書いたなと思いつつ、今はそこまで迷いなく「人に読ませたい品質」にめがけて一直線に書き始められるのは成長したなと感じるところです。

もし、「科学技術をわかりやすく伝える」ためのライティングや、「自分のやりたいことを伝えて、仲間を増やす」ための記述力向上に興味がある人がいたらメッセージください。お待ちしております。

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使ったスライド


参考文献


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