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コロナワクチンの効果と安全性

最近院内でコロナワクチンについて聞かれることが多くなり、関心の高さを感じます。

 ワクチンを打ったあとの副反応で、打たなければよかったと思う人。打たずに感染して大事な人が亡くなり、打っておけばよかったと思う人。必ず両方出てきます。どちらも悲しいことですが、断片的な副反応報道の前に、叩き台になる基本的な効果と安全性の情報が必要です。

 最初に日本に導入されるファイザーのワクチンの治験の結果は、New England Journal of Medicineに論文として掲載されました。製薬会社の協力があるデータは慎重に見る必要がありますが、しっかり査読のある論文で盲検の無作為大規模試験です。ちょっと長くなりますが、どんなワクチンか不安な方は是非目を通してください。

 で、結局、先生はどうするの?と聞かれれば、、、

 有効率95%というと、ワクチンを打たずにかかった人のうち、95%は打っていれば感染が防げたという意味です。この効果は予想よりかなり高く、一方で副反応は想定内でした。集団免疫が獲得できるかはまだ不明ですが、もはや医療崩壊といっていい現状は変えたいと思っているので、自分は打ちたいです。また感染したときのリスクを思えば、自分の両親にもぜひ打って欲しいワクチンです。

 ワクチンには限りがありますし、優先順位も付ける必要があります。大事なワクチンなので絶対に強制はしないほうが良い。対象となった方は、打つにしろ、打たないにしろ、後悔しないためには自分で決めることが大事なのかなと思います。

以下、備忘録として作った論文の要約です。

Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine
 2020 Dec 31;383(27):2603-2615. doi: 10.1056/

「方法」
BNT162b2(ワクチン) 30μgを2回、21日間隔で筋肉内投与した場合の安全性と有効性をプラセボと比較した。対象は16歳以上の男女。無作為にワクチンと生理食塩水に割り付けた。COVID-19の発症率(発熱や呼吸器症状の4日前後に核酸増幅検査でSARS-CoV2が陽性となったもの)を検討。安全性は局所と全身性の有害事象、6ヶ月後までの重篤な有害事象を評価。
「対象」
2020年7月27日から11月14日までの間に、米国、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、ドイツ、トルコで、合計43,448人の参加者が注射を受けた(Figure1)。2回目の投与後に少なくとも2ヶ月間の安全性データの中央値が得られた37,706人を評価。白人83%、アジア系4%、BMI30.0以上が35%、年齢中央値は52歳で、参加者の42%が55歳以上であった(Table1)。
「局所反応」Figure2 A
注射後7日以内の注射部位における軽度から中等度の痛みが最も多い局所反応であった。55歳より上の高齢層の約7割、55歳以下の若年層の約8割にみられた。発赤腫脹は少なかった。局所反応は2回目でも増加はなし。重篤は反応はなく、ほとんどが2日以内に解決した。
「全身反応」Figure 2 B
全身反応は1回目よりも2回目の方が多く報告された。16−55歳の若年層では、2回目投与後、倦怠感59%(プラセボ23%)と頭痛52%(プラセボ24%)55歳より上の高齢層の2回目では倦怠感51%(プラセボ17%)と39%(プラセボ14%)。1回目投与後、38度以上の発熱は、若年層の4%、高齢層の1%。2回目の接種後の発熱は、若年層では16%、高齢層では11%。発熱や悪寒を含む全身性イベントは、ワクチン接種後1~2日以内にあらわれ、その後まもなく消失した。
「有害事象」
重篤な有害事象の発生率はワクチン群0.6%とプラセボ群0.5%で同程度。ワクチン投与群では4件の重篤な有害事象が報告(肩の損傷、右腋窩リンパ節腫脹、発作性心室性不整脈、右脚の麻痺)。2名が死亡(1名は動脈硬化、1名は心停止)。プラセボ投与群で4名が死亡(原因不明の2名、出血性脳卒中1名、心筋梗塞1名)。いずれも因果関係のある死亡はなかった。安全性のモニタリングは2年間継続予定。
「有効性」Figure3
2回目の接種から7日後以後に発症したCovid-19の症例はワクチン接種者で8例、プラセボ接種者で162例。有効率95.0%。補足解析の結果、年齢、性別、人種、民族、肥満、持病の有無で定義されたサブグループのワクチン有効率は、全集団で観察された有効率と概ね一致していた(表3および表S4)。 ワクチンによる効果は、1回目の投与から12日後から認められた。
「考察」
単回投与の評価はできないが、1回目と2回目の投与の間での有効率は52%であった。10例の重篤なCovid-19のうち、ワクチン群で発生したのは1例のみで、重症化の抑制の可能性も示唆された。
発生率が0.01%の有害事象であれば、少なくとも1つの有害事象を検出できる確率は83%以上だが、さらにまれな有害事象を確実に検出するには十分な規模ではない。
ワクチン接種が無症候性感染を防ぐかどうかについてはまだ明らかではなく、抗体評価は今後報告予定。妊婦、12歳未満の小児、および免疫不全者などの特別なリスクグループの人々におけるワクチンの評価を目的とした追加試験が計画されている。

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