エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンスは「劇場版嵐を呼ぶ仮面ライダーマルチバース」だった!?

マルチバース、正直に話すとめちゃくちゃ飽き気味な設定。MCUはめちゃくちゃテーマの軸に使っているし、それ以外の作品でも使っているのをたびたび見ます。とはいえ、作品お幅を広げるためにはうってつけの設定ではあるので、必要悪とまで言わずとも助かる存在なんだろうと思う。

そんな中でとある予告編を見た。「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」(以下エブエブ)である。

簡単にストーリー言ってしまえば、ランドリーを経営して確定申告に悩んでいる母が、闇堕ちした娘をカンフーだったりいろいろ使って、なんとか救う話である。何を話しているんだって書いていて思ったが、正気です。

マルチバースという設定が舞台装置になりつつある現状の創作の中で、エブエブはマルチバースを活かした話であるのが読み取れたので、結構期待していた。そういったわけで劇場に向かって見てきた。

エブエブは「劇場版嵐を呼ぶ仮面ライダーマルチバース」だった

与太話的な感じで言ってしまえば、エブエブは「劇場版嵐を呼ぶ仮面ライダーマルチバース」だった。テレ朝でしか例えられないのか君は?

とはいえ、作劇のメインは家族愛と下品めなカンフーアクションで構成されており、まさしくクレヨンしんちゃんの劇場版のフォーマットなのである。

仮面ライダー要素はどこにあるんだよって思うかもしれないが、エブエブではマルチバースから特技を持ってくるという設定がある。しかし、マルチバースから特技を引っ張ってくるためには馬鹿げたことをしないといけない。

作中では、愛の告白を突然伝えたり、おもらしをしたりなどをした。困ったことにマルチバースごとに馬鹿げたことの条件が変わり、得られる特技も変わるのである。中盤以降、マルチバースの特技を連続して使うのだが、完全にその様は平成・令和ライダーで見られる連続フォームチェンジだった。マジで坂本監督の夏映画ぐらいフォームチェンジする。

あとは低予算的な作りがどことなくニチアサを思わせるところはあった。マルチバースの技術を引き出す機器はヒューマギアのヘッドセットみたいな感じだったし、撮影場所はオフィスと自宅、ランドリーがメインで予算をカットしているだろうなって思わせる。とはいえ、絵面が転々と変わっていくし、作劇としてもかなり機能していた。

抑圧されても辛いし、何にでもなれても虚無である

与太話的な話は置いておいて真面目な話をしていきたいと思う。確信的なネタバレはないが、気になる人はここで止めといてほしい。
登場人物のほとんどはなにかしらの抑圧されながら生きていている。主人公のエブリンは、ADHDぎみで移民であり、娘はレズビアンと社会的に抑圧されている。

一方でマルチバースを使って成功した人生を体験しても虚無であることを作中では語られる。すべてを満たしてもダメ出し、今の状況でも辛い。何者にもなれないままで辛い中で行く宛もない状態でどうすればいいのかってところに、やり直して人生を楽しもうってメッセージを打ち出しているのは本当に強い。痛快で、いろんな絵面で訴えてくる。

タイトルが「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」と長いが、まさしくこのタイトルの通りである。邦題付けたほうがいいじゃないかって思ったけどもこればっかりは仕方ない。「いつでも、どこでも、いっせいに」動き出す、そんな人生讃歌を訴えてくれる作品でした。

ちなみにここまで読んでいてまだエブエブを見てない人に言います。「レミーのおいしいレストラン」を見ろ!!!!!!!!!!!!!

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