連載小説「クラリセージの調べ」4-2
アロマディフューザーから、クラリセージの香りが流れる。パソコンに取り込んだ曲から、クリスティーナ・アギレラのHurtを選び、連続再生にする。芳香は暖房の風に流され、調べを奏でるようにたゆたう。腰痛と子宮が収縮する痛みも手伝い、ソファから立ち上がる気力が湧かない。落胆しているのに、好きな香りに包まれる開放感を覚える自分が滑稽だ。
カーテンの隙間から漏れる夕陽が時間とともに弱々しくなり、宵闇が黄昏時を飲み込んでいく。自然の営みと歌声は、直線的な時間の流れを教えてくれる。私だ