連載小説「クラリセージの調べ」3-4
朝晩の冷えが厳しくなると、空気に透明感が増す。玄関の掃き掃除をしながら、結翔くんと出会って一年が経ったと気付く。
今日の午後、お義母さんは町内会の会合、お義父さんは教員時代の仲間と会うので、私が皇太郎くんのお世話をし、おじいちゃんの訪問診療に立ち合う。すっかり市川家に組み込まれた一年を思うと、目まぐるしい変化に驚いてしまう。
そんな感慨を断ち切るように、ゴパンが焼き上がりの電子音を鳴らす。皇太郎くんのおやつの米粉バターケーキが焼き上がり、香ばしい香りが漂う。手を洗っ