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【解説2】冷涼少女は囁いた

Story2.curiosity(好奇心)

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温かい空気に微睡む凛。そこに一人の老人が優しく起こす。
「君は自分が何者であるのか忘れてしまったようだ」
あたりを見渡すと先程まで賑わっていた地下街は無人となり老人はどこか悲しそうに嘆いた。
ー私のようなバグを除いて正規の私達は崩壊した。クローンである宿命なのさと。

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一方で連絡が途絶えた凛を心配する湯川は取り調べで桜からの取り調べで得た情報(実験に関するもの)から閉鎖都市内のネットワークに何かしらの手がかりがあるのではないかと調べ始めた。すると、閉鎖都市内のデータセンターに凛と同じ名前のファイルを見つける。そのデータを起動させるには閉鎖都市内にあるソフトがインストールされているコンピュータが必要だとわかり湯川も閉鎖都市へと侵入する。

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「ニューラルネットで合成された世界へようこそ そして、クローンの世界へおかえりなさい」
老人が立ち去るとひどい頭痛とともに凛は地上への出口へと向かう。だけれども強くなっていく頭痛に耐えきれず倒れ込んでしまう。
しばらくして、朦朧とする中で優しい声…いや、自分自身の声が聞こえてそう言った。

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地下深く、紅の光が立坑から溢れるように光っていた。覗き込むと背後で見知った少女は囁くように言う。
「今、現存するのは君とバグである老人だけ。そして、君自身も3代目の”私”」白衣を纏った私は私をどこか悲しそうに見ている。
「なぜ、悲しそうな顔をしているの」
その問いに彼女は答えない。

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崩壊した都市とはいえ、美しいほどに澄んだ空気に湯川はどこか気分が晴れていた。相変わらず音信不通の彼女のことが気になるものの歩みを進める先はコンピュータがあると踏んでいる大学遺構。仲間の他のメンバーは無事に脱出したと連絡があった。必死に僕を引き戻そうと説得してくるものの今更だ。 どこか、見覚えがあるような景色に僕は高揚していた。
「僕はここが初めてではない。彼女と出会うのも…」

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大学には無数にあるコンピュータ。電源をつけてアクセスする。正常に動作している彼女のプログラムにアクセスすると現在地がコマンドとして返される。その場所は地下にある実験施設。当時、非合法な実験で出た廃棄物やヒトだったものを無害化処理していたプラントだ。かくいう僕は当時兵士として来ていたのだ。そして彼女と出会ったのものここだった。

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ー過去
上官に釣れられて来た場所は薬品臭がする場所だった。プラントには立坑と呼ばれる物がいくつも連なっていた。紅に光るモノ、緑に輝くモノ。そして青く光るソレ。引き返すことのできない場所にいるとわかったのはその時だった。 そんな場所に不釣り合い…否 似合いすぎている彼女がいた。
白衣を来た彼女は美しかった。恋をした。
だけれども、僕達は恋をできなかった。そんな彼女は襟がよれていると言って襟にマイクロカードを忍ばせた。そこには時代が変わる(=終戦)ということ。そして記憶が処理され過去は書き換えられる。そして、マイクロカードを読み込めば過去を思い返せると。

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好奇心。その言葉は嘘でない真実。
白衣を来た私は、少女ににこの先どうなるのか尋ねた。すると私は嬉しそうに、恐怖の笑みを浮かべていう。
「あなたの役割はここで終わり。彼をここに導くためのあなたは因子」
そう言うと紅の方を指さした。
「自然に融解する恐怖を体感する自分とよくわからないままリセットする自分好きな方を選びなさい」

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私は、戦争によって強制的に指揮官である父から働かせられていた。誕生したばかりでベッドに横たわるもうひとりの自分を時折見せられながら 私はこの世界に存在しない無名の者になったと刷り込まれた。
だけれども、もし戦争が終わったら。
私は元の自分として生きていけるのか。それとも、物語で言う悲劇のヒロインになれるのかという好奇心が湧いた。自分のことなのに。

Next. story END . ignorance.(無知)


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