新型コロナウイルス騒動は働き方改革の機会
新型コロナウイルスの蔓延で自宅待機や在宅勤務を余儀なくされている人が多くなっています。企業は感染を食い止めるために、苦渋の決断をしたことでしょう。非正規雇用などで収入が激減する人たちには、死活問題となったことも確かです。それについては、国民の心に寄り添う政策が必要です。
しかし一方で社会人本人たちにとっては、思いがけず家族との触れ合いの時間が多くなり、自分の人生を振り返り、これからの過ごし方を考える機会になったことでしょう。
ワークライフバランスが叫ばれて久しいですが、毎日の仕事の仕方を変えることは至難の業です。日本人は周りが変わらないのに自分だけ変わることに極端に躊躇します。
私が請け負っているある業界の社員研修でも、たった月1回の夕刻の学びの時間すら確保できずに欠席する、あるいは夜7時半までの研修後に会社に戻って仕事をする人たちが結構います。職場への気兼ねや顧客の理不尽な要求がそのようなことを強いているのです。
しかし今回の強制的在宅勤務は感染症対策ですから、いわば仕事を減らす大義名分が与えられたことになります。そして振り返ってみると、業務上ずいぶんと無駄な時間が費やされていたのだと気が付いたのではないでしょうか。
無駄な通勤、無駄な会議、無駄な書類、無駄な相談、無駄な指示、無駄な訪問、そして無駄なサービス、等々。
この機会に業務の簡素化を図り、少人数でも仕事をこなせるよう、改革のトリガーとしてはいかがでしょうか。
その次に取り組むべきは、首都圏にオフィスを持っていることの価値判断です。現代は、昔よりずっと首都圏集中が進んでいます。大阪をはじめとして、地方に本社機能があった企業の多くは、今では東京に本社を置いています。その理由は、大市場に近いからとか、中央省庁に近いからという漠然としたものです。
そのため、おびただしい数の人々が郊外から都心に向けて、長時間満員電車に揺られながら通勤をしています。往復で3時間前後の時間の無駄です。通勤交通費も雇い主負担です。それだけでも何と多くの経済的無駄でしょうか。
それでいて、都心に居なければならないような業務についている人は、極めて少ないのが現実です。オフィスの賃料や維持費も高いし、住居費も高く、教育費や通学費、そして飲食費も総じて高くつきます。さらに、通勤時に感じるストレスは人々の心をすさんだものにし、家族や友人との有意義な時間も確保できていません。
これらを総合すると、都心に主たるオフィスを構えることが、いかに経済合理性に反しているかが明らかです。われわれはこの機会に広く日本中を眺めて、どこで業務を行うのが最適で、ワークライフバランスを実現できるのかを再考する必要があるのではないでしょうか。
フィンランドでは、朝早く仕事を始めて3時には退社します。金曜日は半ドンです。夕刻は家で子供の世話をしたり、趣味に時間を費やします。夕食を夫婦交代で作れるような役割分担も可能です。そんな人生が当たり前になるような日本にしたいものです。
働き方改革は、今回図らずもテストケースになった在宅勤務と、職場の立地再考を組み合わせて計画・推進するべきです。
それにしても、このような改革は下っ端から提案することに難しさがあります。働き方改革は収益力向上に必須であり、経営トップにしか推進できないことを肝に銘じるべきです。
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