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変わらないもの/変わっていくもの「銀河鉄道の父」門井 慶喜

 タイトルの通り、宮沢賢治の父を描いた作品。

 詳しいわけでもなく、全く知らないわけでもない宮沢賢治。賢治に対しては多少の先入観を持ちつつ、しかし、賢治の父の目線は新鮮で、先入観なく、この家族の群像劇に引き込まれる。

 賢治の祖父⇔賢治の父⇔賢治を含む家族の親子関係の物語を読みながら、変わらないものと、変わっていくものについて思いを馳せた。

【変わらないもの】

・ 親が子を可愛がる気持ちと心配
・ 子の親への甘えと反抗
・ 商売の基本(賢治には不向き)

【変わるもの】

・ 家の形(家業を子に継がせる常識→職業選択の自由)
・ 核家族化と兄弟の減少
・ 社会、経済、娯楽、流行

 父の(商売人としての)人生経験に対して、子は新しく学んだ学問、宗教で父を乗り越えるべく挑戦する。それをはらはらしながら見守る父。状況は違えど、親は子のことを心配して気をもむのは普遍的なこと。

 結核を始めとする様々な病との戦いにはカネがかかる。病を始めとする苦しみに耐えかねたところに、宗教が入り込む。そんな人間の営みの変わらないところを目にしつつ、この物語を生きた家族の心持ちを追体験することで、自分の人生を省みる。


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