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メンバーの成長機会を奪わない1on1を実行するために気を付けていること

久しぶりに、1on1をやることになった。2018年ごろに、チームを持つ機会があって数か月という短期間的やっていたことがあった。今回はもう少し長いスパンになるかもしれない。

3人のチームメンバーと初回の1on1をやった。メンバーにとって、1on1ってそもそもなんだっけ?というところの目線合わせは必要だとおもい、初回は1時間とって、最初の10分は、自分は1on1は、こういうものだと捉えているというのをお伝えした。その内容について今日は紹介したいと思います。

1on1の教科書

本投稿の下部にまとめてのせるが、自分が参考としているのは、「ヤフーの1on1/本間浩輔」「職場がいきる、人が育つ経験学習入門/松尾 睦」「フィードバック入門/中原 淳」の3冊です。

1on1はメンバーの経験学習を効果的に回すための手段

3名のメンバーに1on1にどういうイメージを持っているか、聞いてみると、順不同に書くと以下のような答えでした。

1on1のイメージ「雑談。仕事の進捗確認。キャリアの話をする。相互理解の場。対話の場。」

教科書的には、「1on1はメンバーの経験学習を効果的に回すための手段」です。中原さんの言葉を借りると、「耳の痛いことを告げて相手を立て直す場」という表現もされています。本間さんは「部下の情熱と才能を解き放つ」のが1on1の目的だという表現もされています。

経験学習ってなんだ?

1on1は経験学習を促進する手段だということなんですが、経験学習といっているのは、以下の図のようなKolbの経験学習サイクルというものですね。経験し、それを振り返り、そこから教訓を引き出して、次の行動に応用する。そしてまた経験して、ということを繰り返すことで、経験から学習し、成長することができる、という至極当たり前のサイクルです。

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しかし、松尾さんも言っていますが、この「振り返り、教訓を引き出し、応用する」というのが一人でやるのが非常に難しいのです。だからこそ、1on1という上司と部下の1対1の対話で、上司が部下が「振り返り、教訓を引き出し、応用する」ことをサポートするというのが1on1の趣旨です。

1on1の具体的なやり方

ヤフーの1on1の中では、1on1の具体的な進め方を以下のように紹介しています。

「今日は何を話そうか?」
メンバーの日常に次のテーマを探す内省を促す

「もう少し詳しく話をしてください」

メンバーから自分の知らない情報を得てアドバイスをするための質問ではない。メンバーの頭の中のいままで動いていなかった部分を動かすことが目的。

「それで(沈黙)」「なるほど(沈黙)」「うん(沈黙)」

など相手が頭の中で色々な情報にアクセスして、自分なりの考えを抽出する時間(=内省)を作り出す

この最初の「何を話そうか」からメンバーによってかなり、色がでます。何を話せばいいやら、と雑談になってしまうこともあります。1on1で話すべきテーマってどういうものなのか、ということを一度話しておいてもいいのかもしれない、といま書いていて思いました。

経験学習の対話例。どっちが成長を促せてる?

単純化した会話の例があると、とたんにわかりやすくなるので、よくある例を書いてみます。

<対話1>
上司「A社のプレゼンうまくいったみたいだね」
部下「はい、おかげ様でうまくいきました」
上司「資料みたけど、顧客にとってのメリットをしっかり打ち出せてたね」
部下「はい、ありがとうございます!」
上司「次のB社のプレゼンでもメリット①を打ち出すとよさそうだね」
部下「それでいってみようと思います。」
上司「よろしく頼むよ」
<対話2>
上司「A社のプレゼンはどうだった」
部下「評価は上々です。受注は近いです」
上司「どこら辺が良かったの?」
部下「A社にとってのメリットを強調したのが良かったと思います。」
上司「なるほどね。他の案件にも生かせそう?」
部下「はい。次のB社ではメリット①が刺さるんじゃないかと思います」
上司「いいね!期待してるよ」

対話1と対話2の違いが判るでしょうか。どちらもありがちな対話に見えますが、経験学習という観点で見ると雲泥の差があります。対話1では、答えをすべて上司が先に言ってしまっています。これは、部下の内省の機会をすべて奪ってしまっています。

それに対して対話2では、上司は、部下がどうとらえているのかを聞いています。注釈を入れて振り返ってみます。

<対話2>
上司「A社のプレゼンはどうだった」 ・・・振り返りを促す
部下「評価は上々です。受注は近いです」・・・振り返り
上司「どこら辺が良かったの?」・・・教訓の引き出し
部下「A社にとってのメリットを強調したのが良かったと思います。」
上司「なるほどね。他の案件にも生かせそう?」・・・応用の引き出し
部下「はい。次のB社ではメリット①が刺さるんじゃないかと思います」
上司「いいね!期待してるよ」・・・やる気の引き出し

ここで、例えば振り返りの回答は「いやぁ、案件自体はとれそうですが、準備に非常に時間がかかりました」と部下が回答するかもしれません。ここから、さらに、「それで?」と内省を促せば、「B社の案件も並行で走っていて、事前の調査で情報に飲まれちゃってました」といったように、プロジェクトの進め方や、キャパオーバー、チーム内でのアサインメントの課題などが判ったり、部下の方の視座の高さなどがわかるかもしれません。

それによって、上司ができるサポートというのは大きく異なってくるでしょう。

この前紹介した、VOOXの中で人事コンサルタントの小倉広さんの肉声による、1on1の対話例を紹介されていて、とても分かりやすいのでおすすめです。

1on1に関する私にとっての金言

私が、メモを読み返すたびに、肝に銘じているのが以下の2つです。

相手の沈黙は相手が脳みそに汗を書いている大切な時間
(それを遮り、相手の経験学習の機会を絶対に奪ってはいけない)

私は、おしゃべりなので、ついつい、いろいろ言ってしまうのです。それが、大切な相手の成長の機会を奪ってしまう、という。そして、こちらが先に行ってしまうことの罪はもう一つあります。

上司が先に行ってしまう言葉がアンカリングしないように厳重注意

アンカリングというのは心理学の用語で、認知バイアスのことです。例えば、「この商品の価格は、いくらが妥当だと思いますか?」と聞くのと、「この商品は1000円、2000円、3000円のどれが妥当だと思いますか?」と聞かれるのとでは、価格の例を出された方では、そのあたりの金額にとらわれてしまいます。いくらが妥当か?とオープンに聞かれれば1万円くらいかなー、というかもしれません。

アンカリングとはこのように、最初に提示された数字やことがらを基準に考えてしまうようになる認知バイアスです。

先ほどの対話例でいけば、「A社の案件どうだった?」と聞くのと「A社の案件とれそう?」と聞くのとでは、雲泥の差があるのです。

後者は、対話の方向性が受注確度に方向づけられてしまうリスクが高まります。でもその人は、本当は、プレゼン能力は、他の案件も合わせた全体のプロジェクトマネジメントについてや、もっと言ったら、A社のプレゼンで、仕入れてきた別の案件の可能性について気付いたことを思い出すかもしれないのです。

アンカリングというのはとても、恐ろしいものですね。

テレワークでの1on1という、自分が実際やってることの補足

Zoom越しで1on1をやっています。画面共有で、メモに言ってくれたことを自分が書きながら実施しています。書いていくと、うまく言語化されていないところがよくわかるので、再度問いかけることができたり、論点が分岐したときに戻って聞くこともできるのでよいですね。このあたりはファシリテーションの基本でしょうか。

そして最後に、そのメモを見ながら、その1on1のまとめをしてもらう。これとても大切で、今回久しぶりの1on1で不覚にも、一人目のときは、最後のまとめを自分がやってしまいました。通常の案件の会議とかでは、ファシリテーターやリーダーがその会議をまとめるのは、逆にやってしかるべきで、ついついやってしまいました。メンバーの内省の機会・成長の機会を奪ってはいけないのです。

会社でのコミュニケーションはTeamsを利用しているので、そのメモをTeamsのチャットで共有するようにしています。記録を継続的に残すことも非常に重要だと思います。また、やっていくうちにいろいろな気付きがあると思うで、ときどき、私自身も、内省して、教訓と次の応用をここに書き残せたらと思います。

参考にしている教科書

形のあるアウトプットを出す、を習慣化する」を目標にnoteを更新してますしのジャッキーでした。

Twitter: shinojackie




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