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メンタルリハーサル

大事な商談、大勢のオーディエンスを前にした講演、スピーチ、大舞台で失敗が許されない場面で、ビジネスパーソンはどのようにメンタルの状態をコントロールすれば良いのでしょうか。

一番シンプルで確実な方法は、準備を十分にすることですよね。

準備とは、相手に届ける情報を相手にとって有益な形に整えること、簡単に言えば商談の、プレゼンの、スピーチの資料や原稿を徹底的に仕上げることです。そしてロールプレイングなどで、実際の場面を想定してリハーサルをすることです。

これが通常の準備であり、最も効果的な方法です。

しかし、日々忙しいビジネスパーソンが特定の機会のために掛けられる時間は限られています。

少なくとも僕はそうです。社長業は全方位で事業の推進にエネルギーを注いでおり、発表のために多くの時間をさくことができません。別に社長や経営者じゃなくても、特定の職種の人でも同じだと思います。

特に組織や部署を代表する人にとっては、対外的メッセージや社内へのメッセージは正確に、できればパーフェクトに行いたいものです。

心理学には、メンタルリハーサルというものがあります。

馴染みのある言葉で簡単に言うと、イメージトレーニングです。

スポーツの世界でアスリートが取り入れていることが多いので、聞いたことはあると思います。

サッカーの本田圭佑選手は、2010年南アフリカワールドカップで決めたあの伝説のフリーキックを振り返り、「想定内だった」「決まる映像が見えていた」と言っています。

クリスティアーノ・ロナウド選手がフリーキックで必ず5歩下がるのは恐らくイメージの中でそうしているからでしょう。

メッシ選手は、自分の過去の最高のパフォーマンスの動画を見てイメージしていると言います。

徹底的にイメージトレーニングできたらならばそれは実際のトレーニングと同じくらいの効果を得られるということが数多くの実験からもわかっています。

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アラン・リチャードソンという心理学者が行った実験が有名です。

3つのグループにバスケのフリースローの練習をしてもらい、
グループ1には20日間毎日練習、
グループ2には1日目と20日目だけ練習、
グループ3にも1日目と20日目だけ実際の練習、その間の期間(2日目から19日目)はイメージの中だけで練習、イメージは毎日20分間。
自分がフリースローをしている場面を頭の中でイメージ、イメージの中でフリースローを「失敗」したら、次のスローはうまくいくようにイメージの中で「練習」

その結果フリースローの上達率は
グループ1はフリースローの成功率が24%上がった。
グループ2は全く上達していなかった。
グループ3はフリースローの成功率が23%上がった。

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人間の脳は実際に体験した映像と、頭の中でイメージをした映像を区別するのが苦手な構造になっていると言います。

大切なことは、五感を駆使することです。

なぜなら、徹底的にイメージするとは、現実に近い臨場感を脳内で描き出すことが必要になるからです。

現実に近い状態というのは、一言で言えば臨場感です。臨場感が上がればそれは現実というリアリティに近づきます。

現実とはまさにイマココで五感を通して感じている状態のことですから、イメージトレーニングでもその状態に近づけることができれば、脳としてはそれが実際に行われている状態を錯覚してくれるということになります。これはすごい脳の仕組みです。

僕が実践する効果的なメンタルリハーサルは下記のステップを踏みます。

  1. 徹底的にリラックスする – 緊張状態では良いイメージを脳に描くことができないためです

  2. 過去うまくいった体験 (スピーチやプレゼン)とその時の体感を思い出す、そして改めてその場面を再現し再体感する

  3. その気持ちいい・心地いい体感をそのままに、次に控えている場面(スピーチやプレゼン)を想定し、五感を駆使して、イメージする

  4. その時の五感を味わう、オーディエンスの歓声、会場の雰囲気、緊張による汗の感触やその味、会場の匂い、自分のプレゼンがうまくいっていて自信がみなぎっているところ、など。想像力を働かせ、最高の場面を想像する

  5. 4を繰り返し、当日に向けてイメージトレーニングの頻度をあげていく。一回の頻度は数分。寝る前、移動中、トイレ、仕事の休憩時間、どこでもできる。

冒頭でも書きましたが、実際の準備が大前提にあることは言うまでもなく大切です。

それに加えて、イメージトレーニングでメンタル的にリハーサルしておくことは、きっと本番に役立ちますし、本番に至るまでの時間を緊張状態のまま過ごさないという意味でも有用です。

僕は元来人前があまり得意な方ではありませんでしたが、立場上そういう機会が増え、組織の代表として発言する以上、しっかりとした姿勢、態度、準備で臨みたいと思う様になってから、このメンタルリハーサルという方法を意識的に取り入れ、今では無意識レベルでリハーサルできるようになっている気がします。

スポーツの世界で当たり前に実践されているメンタルリハーサルやイメージトレーニング。

ビジネスの世界でも良い成果を出すと言う意味では全く同じ目的ですから、やるとやらないでは明らかに成果に違いが出てきそうですね。

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