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おもしろくて考えた、「マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか」

以前から行きたいと思っていた、京都市は左京区にあるこだわり書店「誠文社」に娘とでかけて3冊、買ってきました。

結果、どれもおもしろかった。看板に偽りなし。

今回は「マンガ人類学講義 ボルネオの森の民には、なぜ感謝も反省も所有もないのか」の感想を。

わたしはもともと、文化人類学とか民俗学とか好きだったわけだけれど、この本はなんの予備知識がないひとが読んでもおもしろいのではないかな。

また、ボルネオの森の民「プナン」にフォーカスしながらも、人類について、生きるについて、仏教的考えについて思いをいたすので、これまで自分が読んで体験して考えてきたことと照らし合わせて考えるのもとてもたのしかった。

そして、これをマンガという手法をとったのは正解だったと思う。
マンガの後に著者のひとり、文化人類学者の奥野克己さんの解説があるのだけれども、これが必要なことを書いてあるとはわかるのだけれども面白くなくて、文量多くないのに挫折しかけた。どうしても、学者、研究者さんの書き言葉は論文になじんでるからか、全方位的に問題のないような、面白みのない文章になってしまう。

けれど、この人のアイデア、経験、考えること自体はとてもおもしろいので読みやすく漫画仕立てにすることでそれが生き生きと読み取れたし、原案を魅力的な構図で漫画に生まれ変わらせた漫画家の力量もすごいと思った。

~以下は中味に関する感想。~

ボルネオの森の民プナン

まだまだ知らないことがたくさんあるわけだけれど、
この人々についてもまったく知らなかった。
彼らはいわゆる先進国の文化についても知っていて、
服など取り入れたりしても
かたくなにではなく、自分たちの文化の通りにゆる~く生きているさまがとても興味深かった。

そして、所有欲てまったくないのか?
と思うとそうではなく、子どもの頃からそういう文化で生きることでそうなるらしい、というのもおもしろい。

自分はこれまで生きていて、自分がとても動物的だなあと思っていたけれど
この本を読んでいて、いろんなものに精霊を感じて、動物は人間と平等だし、欲望には素直でセックスも乱婚的(自分では「飛鳥時代的」と思っているのだけれど)な自分はかなりこのひとたちに近いところあるかも?と思った。そして、わたしだけではなく、彼らに自分を重ねるひとも、じつは多いのかもしれない。

セックスについて

以前の職場で終業後にいろんな研究者の無料講義をきけたものだから
興味があり、都合のつくセミナー、講義、講座あれこれに参加していた。
そのなかで、何人かの霊長類系研究者の話をきいた。
ゴリラ、ボノボ、チンパンジー…
それぞれ、ボスがハーレムを形成したり、乱婚でしかも同性愛的行為をする種もあったりと面白かった。

そんな講義をきいたり、自分の経験とひきくらべたりして
「人間は、いろんなタイプがいるんじゃないかな?わたしはセックスはスポーツであったり、社交儀礼であったりする面があるけれど、ひとりにつがうだけで満足というひともいるし…」と考えていた。

しかし、いろんな本や言説では「人間は〇〇的」と型にはめようとするのが多いのが不満だったわけだけれど、この本ではいろんな性のあり方が、文化によってさまざまにあるということを紹介していて「そうよ!そうなのよ!」とひとりで大きくうなずいたものだった。

バランスが大事

この本だけでなく、これまで読んできた本そして自分の経験から、身体性、心身のバランス、そしていろんなことについて、バランスはとても大事だと感じている。

仏教的考えについて

ボルネオの森の民に、仏教的考えと解説が急にでてきて「?」となったけれど、著者の人類学者、奥野克己さんはさまざまな民族と一緒に生活してきて、上座部仏教の僧にもなったというから、なるほどと思った。
わたしはカトリックの高校に通ってキリスト教に関してはちょっと、いやかなり苦い思い出があるのだけれど、高校の頃だかNHKが放送していた「神話の力」というような番組でジョーゼフ・キャンベルが「神はひとつのものだけれど、みんなそれぞれ自分の見方から見て、それぞれの名前をつけている」と言っていたのが腑に落ちて、以来ひとを傷つけるものではない限り、宗教を攻撃しないものではあるけれど、仏教はいちばんしっくりくるもののひとつだと思う。

そして、この本での仏教的解説はなかなかに興味深いので、これまで仏教に興味・関心がなかった、なにも知らない、というひとも気軽に仏教的思想に触れられてよいのではないだろうか。


生きる意味とは?

いまの多くの日本人が、「生きる意味」を考えてもがいている。
けれど、「生きてるから生きている」のであって、「生きる意味」を探る必要はない!「わたしには生きる価値はない」なんて思う必要はないのだ!
ということをこの本でも読み取ったし、実感しているところであります。

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