カリンの花 続き
しばらくしてリビングから戻ってきたダンリの手には、1枚の紙が握られていた。
「それ何?」と聞くと、悲しそうな顔をしながら
「通知書が来たんだ…。俺、兵士団に加入しなきゃならないんだ。」と言った。
それを聞いた時、目の前が真っ暗になった。これは現実なのか?はたまた夢を見ているのか?
「明日、俺はこの村を出発する。」
通知書が来てから3日以内に住んでいる村を出なければならないという規則があった。そして、兵士団に加入するために村を出発するする者を盛大に見送りをするという暗黙のルールがあった。
明日、ダンリがこの村を出発する、、、
私はこの現実が受け止められなかった。
それからはどうやって家に帰ったか覚えていない。
翌日、朝早くからダンリの家の前にはたくさんの村人が見送りのために集まっていた。
ダンリが戦争に行く。死ぬかもしれない。
私も見送りに参加しなければならなかったが、今すぐにでもここから逃げ出したかった。
いよいよ出発のとき。馬車を出すために大人達が準備をしている間、ダンリが家の裏に私を呼んだ。
「戦争、行くんだね。」と言うと「義務だからな。お国のためにがんばるぞ。」とダンリが返した。もうこれは現実なのだ。決して夢ではない。泣き崩れそうになっていると、ダンリが1輪の淡いピンク色の花を渡してきた。
田舎育ちのためか植物には詳しいので、花の種類はすぐに分かった。しかし、ダンリは花などに興味を示す人間ではない。
「なんでカリンの花?」と聞くと、「それは図鑑で調べてくれ。」と意味深な答えが返ってきた。
馬車の準備ができ、大人達がダンリを呼びに来た。あぁ、行ってしまうのか。
馬車に乗る直前、ダンリは振り返り私にこう言った。
「その花渡すのはお前しかいないからな!」
その言葉を言い残し、ダンリは馬車に乗り込んだ。
ダンリは手を振ってこの村を出ていく。私はただその馬車を見つめることしか出来なかった。
馬車が見えなくなると、すぐに家に帰り植物図鑑を開いた。
カリンの花の説明が載っているページを読んでいるとある事に気が付いた。私はそれを見て涙が零れてきた。ダンリがこんな気遣いをするとは思っていなかった。もっと早く想いを伝えておけばよかった。私は後悔したが、それ以上にお互いの想いが同じで嬉しかった。 馬車に乗り込む直前の言葉の意味がやっと分かった。
「その花渡すのはお前しかいないからな!」
カリン バラ科カリン属
花言葉 : 唯一の恋
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〘あとがき〙
ここまで読んでいただきありがとうございます。
少し長めの物語を書かせていただきました。
彼女とダンリ、2人の結末はどうなるのか。
それは読者さんにお任せいたします。
拙いと思いますが最後まで読んでいただきありがとうございました!
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