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東洋医学と不妊治療〜実践編

特別なホルモン治療や手術を行わない、なんだか漠然としていて不安なタイミング法。その成功確率を上げるために東洋医学に何ができるのか。今回はその実践編。


生理周期とその治療

生理周期が陰陽のサイクルというお話をしましたが、それに合わせて治療をするのが基本。
陰が増加していく卵巣期には生理後ということもあり、腎と失われた血を補う。陰がピークを迎える排卵期は血を補いその流れをアシストし、排卵後の黄体期は腎と任脈衝脈の働きを高める治療を施す。月経期は血行をよくし、月経がスムーズに起こるのをサポートする。
これを基本にそれぞれの体質に合わせた治療を行う。

腎陽虚

東洋医学における妊娠とは母親と父親の精が出会うだけでなく、そこに母親の命門の火というエネルギーのスパークルが起こることで成立する、というのは前に述べた。精というのが卵子と精子を指すのは明快だけど、命門の火ってなに、となるでしょう。そう、それこそが腎の陽の気なんである。これが弱っていると卵胞が十分に育たず排卵しなかったり、受精に至らなかったりする。

39歳のわたしのような高齢女子になると、腎の陽が弱って十分な数の卵胞が育たず、その中で最良だった卵胞が成熟して排卵に至っても、クオリティ面で最善とはいかなかったのだろう。で、タイミングを合わせて受精しても着床に至ることなく流れてしまったのだと思う。そこでうまく腎の陽を補うことができれば排卵誘発剤と同じ効果を期待でき、多くの卵胞の中からよりよいものが排卵すれば、染色体異常のない質の高い卵子が生まれる可能性が高まるのではないか。

生理サイクルが長めだったり冷え性だったり、しょっちゅうトイレに行くような人はこのパターン。生理の量は多かったり少なかったりどちらもあり得る。わたしの生理周期は30日前後で、西洋医学的には全く問題にはされないけど28日を基準にすると若干長め。生理が本格的に始まる前にダラダラと少量の出血が続くのも陽の気が十分にはたらいていなかったのだろうと思われる。さらに低体温で寒がりなので納得の陽虚体質。

使われるツボは以下の通り。

気穴 
衝脈と腎の経路が交差するツボで、腎だけでなく衝脈さらに任脈にも気血を送り、子宮に届けることができる大事な大事なツボ。

太谿
腎兪
志室
腎の陽を補う。

関元
ここにお灸をすると子宮の働きが高まる。

命門
その名の通り腎の陽を補う。ここも同様にお灸をすると子宮の働きが高まる。

神闕
おへそ。塩をもってお灸スティックで温めると腎と精の強化に。

水道
長らく授からない場合の治療に古くから使われる不妊のツボ

腎陰虚

さて腎の陰が足りてないとどうなるか。陽がエネルギーなら陰はもっとかたちあるものや養分として捉えられ、陰が足りないとそもそも育つ卵胞がなかったり、養分が足りずに排卵しても受精に至らない。

長く不妊が続いていたり、生理サイクルが短く量も少なめで、手のひらや足の裏に汗をかきやすかったり寝汗をかいたりするタイプは陰虚が疑われる。ちなみにカナダ人に多い。不安症を抱えていたりすることも。

用いるツボは

関元
陰虚の場合、すでに熱を持ちがちなのでお灸は用いない。

陰交
太谿
三陰交
陰を補う

気穴

志室
精を養う

血虚

西洋医学と同様、血は全身隅々まで養分を届けるはたらきをする。これが不足すると栄養失調でさまざまなエネルギー活動ができなくなり不調に陥る。精や任脈衝脈、子宮に栄養が届かなくなるため、卵子の質が下がり、受精・着床に至らなくなる。

生理が軽く遅れがちで、疲れやすく気分も落ち込みやすいタイプ。そもそも気血をつくる脾が弱っていたり、思い生理や流産などで大量に血が失われても血虚になる。

関元
気穴
腎を養う

足三里
三陰交
血を補う

腎兪
脾兪
それぞれ腎、脾のはたらきを高める。

膈兪
血をつかさどるツボで瘀血や血虚の治療に用いられる。

とここまで虚証の治療法をみてきたけれども、瘀血や痰湿など実証は子宮内膜症や卵管癒着、PCOSなど原因が分かっているケースに多く、西洋医学的な治療と並行して鍼灸治療を行うとより治療効果が上がる。ここではとりあえず母体に特に問題がない場合に勧められるタイミング法のサポート治療、ということで実証には触れません。

アクティベート、任脈

そして妊活の奥の手、妊娠の経路である任脈をアクティベートすることによってこれらの治療効果がダイレクトに生殖機能の向上につながるのである。奇経にはそれぞれをオープンするツボの組み合わせが決まっていて、そのコンボに施鍼するとダムをオープンするように経路が解放されるのだ。そのツボは単独で使われると別のはたらきをするので、左右とうつタイミングが重要。
任脈をオープンするには、全ての鍼の中で一番はじめに右の列欠、続いて左の照海に施鍼する。
衝脈も妊娠出産において大事な経路ではあるけれど、実際の治療ではむしろ月経不順などの不調に用いられる。

さて実践

生理が終わってすぐ、治療開始。任脈をオープンしてから、腎陽と生理で失われた血を補うツボを取る。これを排卵日までなるべく毎日。
漢方は服用しなかったけど、アジアスーパーで手に入る高麗人参エキスを毎朝飲んでいた。人参には胃と脾の働きを助ける作用があるからスタミナ増進には効果的だけど、陰虚の傾向がある人には向かないので注意。

基礎体温も毎朝測って、準備は万全。さあ次の排卵日が来た!





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