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妊娠はしたけれど…ふたたび


生理が、こない

生理開始予定日。基礎体温は高温を保っている。相変わらず、猛烈に眠い、だるい。生理前にダラダラ続いた少量の出血も今回はなし。何かが間違いなくいつもと違う。でもこれでフライング検査して陰性だったら落ち込むなあ、と思って1日待つ。でもこの異常な倦怠感はなに。もしかしたらコロナって可能性もないではないし…。
妊活中、排卵から生理までの二週間が本当に果てしなく長い。焦るし、焦れるし、不安。とにかくどっちでもいいから早く白黒つけたくなる。今回もモヤモヤするのはもう限界!予定日を過ぎた翌朝、検査をすることにした。その前の夜は何度も陽性だったり陰性だったりする夢を見て、心理的にかなり追い詰められていたんだと思う。

翌朝。
心を無にして結果を待つ。薄目を開けてラインを見ると…

陽性!

検査キットを持つ手がぶるぶる震えた。そうだろうと思ってた、でもすごい安堵感と一抹の不安。
興奮して検査結果の写真をDDに送る。まだ早いけど電話にすればよかったかな?前回妊娠が分かったときみたいな喜んで感激するところを見たかった。
すぐにDDから着信がある。寝起きの冴えない声。
「すごいね〜、ほんとに妊娠したんだ。S子って妊娠しやすいんだね」
「嬉しいけど不安だな〜」
なに、そのテンションの低さ。こっちも一気に冷めた。妊娠しやすいわけないだろ、歳考えろ。どんだけの思いでやってきたか全然分かってない。そりゃ男は出しただけ、体が変わるのは女だけだもん。だけどなんなの、なんなのそれ。

だけど手放しで喜べないのはわたしも同じ。流産を経験したカップルならみんなそうだろう。また奈落の底に突き落とされないように、喜び過ぎないように予防線を張ってる。妊娠を心から喜んでもらえないなんて、赤ちゃんがかわいそうだと思う。でも。

なんで妊娠したんだろう

なんで今回、妊娠できたのか。まったく期待してなかったのに。一度しかできなかったけど、結果として運よく排卵日に当たっていたみたい。無事に育つかは別だけど、着床まで漕ぎつけたのは治療のたまものなのか。
もちろんそうだと思いたいけど、やはり精神面の変化が一番大きいと思った。

実は夏の終わり、ちょうど39歳の誕生日を迎える頃にわたしたちは一度別れた。一筋縄ではいかず、先が見えない関係性に疲れ切っていたところ、ささいなことで大げんかになり、「もう無理だ」って言われた。「俺たちの赤ちゃんが流産しちゃったのは、別のパートナーを見つけなさいっていう神様のメッセージだよ」って言われたことは忘れられない。
辛くて辛くて本当に苦しかったけど、親友と長電話して前を向くことができた。こういうとき、自分に仕事があって、ふたりの娘がいてくれるてほんとうによかった。じゃなければ生きていけなかったと思うほど別れは苦しかった。
結局数日後にDDの方からやり直したい、と言ってきた。それだけの覚悟を決めてくれたんだと思う。わたしも一旦別れたことでストンと執着を捨てることができた。それ以来夏の間ピリピリと張り詰めていたわたしたちの関係は、出会った頃の穏やかなものに変わっていった。

正直言って、「妊娠がきっかけで関係が安定するかも」と期待している自分がいた。妊娠ってどうしたって親のエゴ。でも神様がいるならきっとこんなわたしの自分勝手な下心をお見通しで、だから授けてくれなかったのかしら、と思ってしまう。そんなときはいくら切実に願っても赤ちゃんは来てくれなかった。
けんかして別れて、お互いへの愛情を再確認してからそういう気持ちは無くなった。できなければそれも運命なんだと思った。切ないけど。

それからずっと悩まされていた口の中の苦味はいつの間にかなくなっていた。心がストレスから解放されたのだと思う。東洋医学では心は特別な経路で子宮と繋がっている。心の気がスムーズに子宮に流れることによって妊娠しやすい状態になったのだろうと思う。
今回休みをとってアメリカに行ったのも、DDがゴルフのコンペでホテルのペア宿泊券を当てたから。せっかくだから休みをとって楽しもう、ということで、DDは半分仕事しながらだったけど、初めて訪れる街を観光して、美味しい食べ物を食べた。子供ができてもできなくても、これからどうなるか分からない二人の関係のことも、いったん置いといて今を楽しもうと思った。そういう心の持ちようが結果としてよかったのかもしれない。

妊活は思うようにいかない。人間関係も、まわりの環境も。いくらいろんな方法を試しても、努力しても、心が整っていないと成果は限定的になってしまう。そしてうまくいかないとますます焦って気の流れが乱れていく悪循環。鍼で気を流すサポートをすることはできる。でも根本的な原因が取り除かれない限り、一時的で限定的な効果に過ぎない。こればかりは簡単な解決法があるわけじゃない。自分を追い詰めない、執着しない、それがすごく難しい。

消えない不安とこれから

二回続けて流産をする確率は4%。多少のずれはあるけど、どこのサイトでも大体この数字。妊娠が分かってからわたしは今度は別の不安でネットサーチに走っていた。
流産する確率が三分の一って言ってたのにそれが二回続くとなると4%?なんでそんなに下がるかな?不安は消えない。
おそらく流産するのは染色体異常が原因がほとんどで、妊娠成立までいくこと自体が稀なんだろう。一度くらいはあるかもしれないけど、二度までもは起こりづらい。その前に流れてしまうから。そういうことなんだと思う。

さて、次にどうするか。前回の病院に電話するのはやめた。どうせ流産するから検査はしない、という雑な対応、結局ファミリードクターに一度も会うことはなく研修医やナースを含めた毎度違う対応窓口、そういうところがじわじわストレスだった気がする。高齢だからどうなんだろう、とは思ったけど今回はミッドワイフを頼ることに決めた。

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