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ドラゴンズが山女魚になる日

清流の女王「山女魚」は釣るのが難しい魚らしい。
私は釣りをやらないけれど、釣り好きな友人知人が多い。
山ヒル?に噛まれて大けがした!
そんな痛い目に遭っても、山女魚を追って上流へいく。
コロナで収入が減ったと憂いても、仕事が減ったと嘆いても
「でも山女魚を釣る時間ができた」嬉々として車を走らせる。

鮎釣りはしないの?
ピザを頬張りながら、素朴な疑問を投げてみた。
すると、飲みかけのビールを一気に流し込み一言。
「わかってねーなぁ」

山女魚は美しい川、それも上流の澄んだところでしか出会えない。
1日中、川面とにらめっこしても姿すらみれない事もザラなんだ。
だから、鮎のそれとは違うんだ。

「鮎も綺麗な川しかいないでしょ?」
…そこから長い長い講釈を賜ることとなった。
ピザは冷え切り、チーズはカピカピになり食欲は失せていった。

「なんとなくだけど分かった。」

「正直でよろしい」
私は解放され帰途に着いた。

ドラゴンズが負ける度、ネットが荒れる。
フォロワーから、負を練り込んだ硬い固い言葉の球が豪速球で投げ込まれる
どんなポジ要素で打ち返しても、太刀打ちできない。
うん、わかるんだ。
みんな誰に投げてるのかわからないほど
ドラゴンズの勝ちがみたくて、投げてること。
心が澱んで視界不良になってること。

日本の川は上流に行けば行くほど澄んでいく。
観るものの心まで美しく清らかに
流れを止めることなく光で揺らぐ。
上へ上へ。
青く碧く青く。

ドラゴンズが【山女魚】になった時
深々した緑の木々に守られた水面は
木漏れ日を受けてキラキラ光るだろう
あの頃のように。
見知らぬ者同士がハグし、泣き笑い、飲み明かす。

その日を待って球場へ向かう
主治医は好きなことをしていいと言っているから。
行ける間は行き続けるんだ。
微々たる力しかないのだけれど
ドラゴンズの何かになりたい。
結果、選手の笑顔が見れるならそれでいい。

ああ。私も山女魚釣りの1人だったんだ。
いつまでも待ち続ける。
山道を駆け抜けポイントの場所へ向かう。
諦めるなんて意味ないことはしない。
ドラゴンズが、選手が、首脳陣も裏方さんも
私にとって【山女魚】だから。

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