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物語「星のシナリオ」 -44-


「にゃ〜」

ドアを開けるのはキミの役目。まるでそんなセリフを言うようにシロがないた。

「こんにちは…。あはは、やっぱりそういうことか!」

「先生…今日のお客さんって先生のこと?」

「ああ、そうみたいだね」

昨日会っていた時は何も言ってなかったのに。そうか、おばあちゃんの微笑みはこれだったんだ。

「いらっしゃい。主役が揃ったね」

「主役?」

「ふふふ。ほら、猫たちも集まってきたよ。奏詩、お茶をいれるのを手伝ってちょうだい」

「うん」

「そう、それから…」

「はい、これですね。買ってきましたよ」

先生が袋を差し出した。

三人で逢うことは初めてじゃないのに、不思議な空気に包まれている気がして、ボクはちょっとソワソワしていた。そんなボクの心に寄り添うかのように、またリビングに優しく風が流れ込み、カーテンを舞わせていた。

「ローストビーフにプリンにハーブティー。自分では選んでおきながら、やっぱりおかしな組み合わせだね」

テーブルの上に並んだメニューを見て、おばあちゃんは楽しそうに笑った。

「今日って?満月なんだっけ?」

「満月は来週だよ。今日はね、二人の誕生日を祝いたかったんだ」

「あ…そっか。先生もボクも九月生まれ…」

「来週の満月の宴も誕生日スペシャルにするからね。二人とも主役として出席するんだよ」

「来週の満月…」

「二十一日だよ」

「ボクの誕生日?」

「そう。奏詩にとって今年は特別だね。誕生日当日に満月を迎えられることなんて、人生でもそう何度もあることじゃないよ。新しい一年の始まりを、その先に進む道を、しっかりと満月が照らし出してくれるはず」

年に一度巡りくる自分の誕生日。気持ち新たにその先へ一歩踏み出す時。

家族が祝ってくれて、数字が一つ増えるくらい…。これまでの誕生日って、それくらいの「イベント」でしかなかったけど。今年は本当になにか特別な感じがしていたから、おばあちゃんのその言葉を、身が引き締まる想いで受けとった。

「さあ、いただこうかね。ハーブティーで乾杯だよ」

自分で言いながら笑い出したおばあちゃんにつられて、ボクの気持ちも穏やかにほぐれていった。

九月の風は…。

きっと、この日のことを思い出させてくれるように、それから先も優しく寄り添いボクのもとに流れてきた。


つづく


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