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物語「星のシナリオ」 -10-

そうだ、ボクは答えを聞きたいんじゃない。それを自分で見つけるためのヒントを集めてるんだ。答えが自分の中にあるのなら、その本当の答えを知ってるのは、ボクしかいないんだから。

いつものおばあちゃんの家までの景色は、今日は一段と色鮮やかに映って、その景色の中をボクは全力で走り抜けて行った。

こんなにも強い気持ちでおばあちゃんの家に向かうのは初めてだな。全力で走りながら自分でそんなことを感じる余裕もあって、そんな自分のことが何だか可笑しく思えた。

「おばあちゃん!」

「奏詩。良い表情してるじゃないか。何か手がかりをつかんだかい?」

「おばあちゃん。ボクはおばあちゃんからまた、星の世界の話が聞きたいと思ったんだ。だからボクはその自分の望みを叶えるためにここに来た。おばあちゃんから全ての答えを聞こうなんて、もう考えてない。ただ、自分が気になったことを道しるべにして行動してみた。それで、何が起きるのか、それで自分で答えを見つけられるかなんてわかんないけど、でも…」

「ただ、私から話を聞くという体験をしに来たんだね」

「そう、たぶん」

「よく来たね。ちょうどお茶の準備をしていたところだよ」

初めて虹を歩いた日から、何か現実的なことが大きく変わったわけじゃないけど、今のボクは、そうまるで、自分の人生をずっと積極的にいきていた。

「どうだい?楽しくなってきただろう、生きるのが」

そう言ったおばあちゃんは優しく微笑んだ。

「うん、そうだ。まるでゲームの主人公になったみたいだ」

「あはは。ゲームの主人公かい。それはまた、おもしろい例えだね」

「そう、あれだよ。おばあちゃん知ってる?人に会ってヒントもらって、いろんなツールを手に入れたりしてさ、物語を進めていくゲーム」

「ロールプレイングゲーム!」

おばあちゃんが魅せたとびきりの笑い顔は、ボクの心に優しく響き渡ってきた。

そうだ、母さんが言ったように、大きな意味付けなんていらないのかもしれない。ただ、自分が感じて、自分で決めて、自分で体験をして。そうして誰かと一緒にそれを分かち合って。

「じゃあ、星の話をしようかね」

そう言って、お茶をいれながらおばあちゃんは、ゆっくりと話し始めた。

「あの星の世界で、自分の人生のシナリオを描き決めてくる。おばあちゃん達はそのサポートをしていたんだよ。例えばどういう人物設定で生まれてくるのか、全て自分で選び、それに見合う星の日に地上に降りてくるんだ」

「うん」

「月星座の話は少ししたね」

「うん。その人の人生のベースになるんだったね」

「そう。月をみると、その人物がどんなエネルギーを宿しているのかわかるよ。月にはね、過去世の記憶も含め、無意識の部分のその人のパターンや想いなんかが描かれているんだ。大切な人生のベースだからね、自分の月を認め受け入れてあげると、ラクに生きられるよ」

「自分らしくいられるってこと?」

「そうだね、その表現でも良いかもしれない。そしてね、月は宇宙と繋がるためのカギにもなってるんだよ。月に寛いでいる時には、宇宙からのメッセージや人生の道しるべを受けとりやすくなる。自分自身で描いた人生のシナリオの流れに自然と導かれて、同時にそれは、生きる歓びに感じられるはずだよ」

生まれた時の月か…。

「えっと、でもおばあちゃん。そんなに良いヒントなのに、自分の月星座のことなんて知らない人の方が多いよね」

「そうだねえ…。この話は少し難しいかもしれないね。大事なことほど大切にしまっておきたくなるものだよ」

そう言ったきり、空を見上げたままおばあちゃん黙ってしまった。猫たちまで揃って空を見上げてる。大事なこと?なら大切にしまっておくより、みんなに伝えた方が良くないかな。

「そうだねえ。もう、その時なのかもしれないね」

そう言うと、やっといつものおばあちゃんが戻ってきた。

「ちょっと、あれを見せようか。ついておいで」

おばあちゃんの後ろを、ボクと五匹の猫たちが続いて向かったのは、二階の奥の、今は亡きおじいちゃんの書斎だった。


つづく


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