ブダペスト1

中堅サッカークラブで最高のファン体験をつくるには 〜①FCコペンハーゲン編〜

こんにちは、ベルギーで中堅サッカークラブ経営に携わっております村田と申します。突然ですが、これ行って来ました。

ちなみに会自体の詳細は弊社CFOの飯塚が凄まじい勢いで仕上げていたので、こちらをご参照ください。帰りの空港にはもう出来上がっていて、なんちゅう仕事の早さと関心しましたが、その後体調崩したのでチャラです。

私はどちらかと言うとコンテンツの詳細、その中でもファン体験について複数回に渡って纏めようと思います。

先に断っておくと、Jリーグでも凄くちゃんとやっているところはあり、何もヨーロッパが優れている面ばかりではありません。中規模な国の中堅クラブと比較すると、浦和レッズや川崎フロンターレの方が規模として大きかったりします。

なので、ヨーロッパ中堅クラブの施策成功例を紹介する純粋なレポートとインサイトについてお話したいと思います。

FCコペンハーゲンのデータドリブンなアプローチ

まずはデンマークの名門、FCコペンハーゲンです。彼らのスタジアム入場者数は下がり続けていました。
平均観客動員数
2006−07シーズン:22,000人
2017-18シーズン:14,000人(▲37%)

端的に言って、やばい状況です。理由は色々あるのですが、主な理由はファン層の高齢化と若年層の購買行動の変化でした。そこでコペンハーゲンは、そもそも購買データを正確に把握していないよね、ということに気づきデータの集約を始めたのです。

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アクセスコントロール(入退場記録)、POS、スポンサーCRM、チケットリポートなど、あらゆるデータを集約し徹底的に分析しました。

各顧客のユニークIDから、Aさんは一体どんな購買行動をし、誰とチケットを購入し、どんなものを食べたり飲んだりしているのかということを分析し、施策の打ち手を考えました。こんな感じで、FIFA選手のイメージで顧客のスタッツを作ってターゲティングするということです。

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では、ここから大きな施策のみ紹介して行きます。

シーズンチケットのサブスク化

シーズンチケットホルダーはクラブにとって非常に大事な顧客です。彼らはここから分析を始めました。

顧客分析から得られたインサイトとして、シーズンチケットの継続率が80%程度と低いことがわかりました。つまり数シーズンで顧客が全て入れ替わってしまい、販売効率が悪いと。チームは強いのに不思議に思ったマーケティングチームは更に解約者へのアンケートで理由を深掘りしていくと、更新のプロセスがめんどくさいことがわかりました。

通常こう言ったシーズンチケットの更新は、インボイスを発送し紙で手書きの申込書を送っていたらしいので、このプロセスだと特に若年層の継続率に響き、中には更新したかったのにプロセスを知らず解約になってしまう顧客もいる程でした。

毎年ゼロベースでリセットされ、更新のプロセスを強いるシーズンチケットは販売側、顧客側両方にペインであることがわかりました。

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ここから、コペンハーゲンはシーズンチケットを廃止しサブスクリプションモデルに移行しました。IT業界にいる方にとっては信じられない話かもしれませんが、スポーツクラブでサブスクモデルを活用しているクラブは多くありません。

シーズンチケットは今や、空きがある限りシーズンの途中で入会も退会も可能です。なので、一年中シーズンチケットのキャンペーンを行うことができます。冬のブレークでも解約率は1%以下に収まり、施策は成功を納めました。

コンテンツのパーソナリゼーション

また、ファン層をセグメント分けし、それぞれにフィットするコンテンツ配信を始めました。

例えば、若い女性は試合以外のコンテンツに興味があるというデータが取れていたので、Netflixのようなドキュメンタリーをプロの制作チームと共に作成しています。

こちらはErik Johanssonという選手が大怪我に見舞われ、手術を経て復帰するまでのドキュメンタリーです。

こちらの動画は7本立てなのですが、各動画15,000-25,000回の視聴数を記録しました。スタジアム入場者数が14,000人程度であることを考えると、各動画が1試合を行う程度のパブリシティ効果がありました。

また、視聴した方のエンゲージメントが高まり、スタジアム来場者数が増えたそうです。

再生回数としては驚嘆に値する、とまでは行きませんが、実益のあるアプローチとして非常に有効だったとのことです。(ケガをしている選手は忙しくないこともあり、映像利用が簡単だったとも言っていました)

もちろん、Jリーグにも面白いコンテンツはたくさんあるので、参考にしてみるのも良いと思います。

結果発表

この他にも、試合観戦の意思決定が2週間以上前に行われているという調査から試合のチケットは3試合先まで買えるようにしたり、先にチケットを抑えると様々なグッズをプレゼントしたり、1年で100施策程度回したところ、コペンハーゲンの入場者数は超絶V字回復を果たしました。

平均観客動員数
2017-18シーズン:14,000人
2018−19シーズン:17,800(+21%)

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1年でここまで成果が出るというのは凄いですね。

1.  顧客を知る
2. 顧客の欲しいものの仮説を立てる
3. 小さくテストし反応を見る
4. 効果測定し、次の打ち手を考える

マーケティングで言うMVPの様な枠組みでしょうか。
当たり前のことをやっているのですが、スポーツ業界では中々体系だって行うのは難しいですよね。

我々のクラブも来シーズンに向けて施策を高速回転させていく為に、まずはデータ蓄積と分析環境を作ることに没頭しようと思います。
次回もファンエンゲージメントについてnoteを書こうと思います。
よろしければ、トッテナムのスタジアム体験が最高だったのでこちらもご覧下さい。ではまた。


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