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シャルル七世のために書かれたレクイエム

カクヨムコンのことを書こうと思ってたのに、それどころではない!


「シャルル七世は楽譜を読める」という英文資料を見つけて興味を持ち、関連情報を調べていたらフランドル楽派のヨハネス・オケゲムという人物に辿り着きました。

なんでも、オケゲムのレクイエムはシャルル七世の死に際して作られたらしい!

ちなみに当時(15世紀)の楽譜は、私たちが知っているト音記号と五線譜の楽譜とは別物で、いまだに解読できないか解釈が分かれる特殊な記法・記号もあるらしい。

日本の義務教育で学ぶ西洋音楽はバロック音楽のバッハ以降からなので、さらに200年以上前の古楽はなじみがない。日本語の情報が少なくて、英語やフランス語まで探しました。

Missa pro defunctis (Requiem) a 4 (incomplete, probably composed for the funeral of Charles VII in 1461)

Johannes Ockeghem - Wikipedia

英語版Wikipediaに「おそらく1461年のシャルル七世の葬儀のために作曲された」と書かれてますね。ルイ11世説もありますが、生前から交流があってオケゲムが恩義を感じていたといわれるシャルル七世説の方がしっくりくると思う。

ここ数日で、つぎはぎだけどオケゲムとシャルル七世について少しずつイメージがつかめてきた。

こちらの動画が、ヨハネス・オケゲムのレクイエム
正式名は「Missa pro defunctis」

現存する最古のポリフォニック(多声)のレクイエムだそうです。
写本には白紙部分があり不完全だとも。全五楽章で30分くらい。

「シャルル七世に恩義がある」と聞いてなんとなく予想してましたが、このYouTubeの概要に、オケゲムはシャルル七世に才能を見出されたと書いてありますね。

さて、聞いてみて…
モーツァルトやヴェルディなどのレクイエムとはだいぶ違う印象。

グレゴリオ聖歌の印象に近いけど、もっと柔らかい。個人的には、第二楽章「Kyrie」の純度の高い美しさと、第五楽章「Offertorium」22:19辺りからのかっこいいところ(語彙力がなさすぎる!)が好き。
あまり知られてないかもしれないけど、間違いなく天才の仕事だ!(ちょっとシャルル七世が憑依してない?😂)

オケゲムがめったにやらない技法だったり、レクイエムとしては一般的ではない様式だったり(最古のレクイエムだから様式自体が定まってなかったかもしれない)、シャルル七世への恩義と敬愛、専門的なことはわからないけどこの曲は四声のうちバスが非常に難しいらしく、オケゲムが当時著名なバスの歌い手だったことを考えると、このレクイエムには故人(シャルル七世)の音楽の好みが反映されているのかもしれない。
あるいは、オケゲムから見たシャルル七世の人となりが表現されているとかね。

あと、オケゲム本人が王の葬儀でこのレクイエムを歌った可能性もあるな。
やばい、エモすぎる……

七月二二日の朝、彼は死の床に付き添う司祭に「今日は誰の祝日か」と聞いた。カトリックの暦には、毎日、その日の守護聖人が記されているのである。
「今日は、マグダラのマリアの祝日です」
「そうか。あの罪深い女の祝日に、世界一罪深い男が死ぬのだな。神の御心に感謝しよう」と言い残し、その日の午後、従容として黄泉の国に旅立った

上記シャルル七世の臨終エピソードと合わせ技で、涙ぐんでしまう…😢

『7番目のシャルル、壮年期編』のフラグか?🤣

拙作に限った話ではないですが、もしシャルル七世の生涯を最期まで映像化するとしたらエンディングはオケゲムのレクイエムで決まりですね。


web小説『7番目のシャルル』シリーズ



自著の紹介

既刊:デュマ・フィスの未邦訳小説『トリスタン・ル・ルー』

2022年10月21日、シャルル七世即位600周年記念にリリースしました。
Kindle版(電子書籍)とペーパーバック版があります。

新刊:『十九世紀の異端科学者はかく語る』

ジョン・ラボック著『The Pleasures of Life』第一部を翻訳・書籍化しました。訳者・序文で「ダーウィンとラボックの師弟関係」を書き下ろし。


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