君の名は? オカヤドカリ
君の名は?
つぶらな目や仕草が可愛らしく、近年になってペットとして注目を集めている。
オカヤドカリは陸上での生活に適応したヤドカリで、沖縄県や小笠原諸島など日本にも生息する。
生息地の浜辺などでは普通に見ることができる。
天然記念物に指定されているので、許可なきものが勝手に採取することは禁じられている。
採取許可を受けた業者から販売されており、特に届け出などをせずとも飼育が可能。
オカヤドカリの飼育方法や種類などについて記すnoteです。
オカヤドカリとは?
特徴
十脚目(エビ目)オカヤドカリ科オカヤドカリ属
現在のところ世界で15種が確認されており、日本には8種が生息している。
海中よりも海辺の陸地での生活に適応した種で、同じ科には「ヤシガニ」が属す。
体長は最大で6cm程度。
一般的な甲殻類と同様に脱皮を繰り返すことにより成長し、その際に宿となる貝殻も交換する。
食性は植物食性が強い雑食性
夜になると活動し始める夜行性
日本に生息している品種は全て天然記念物に指定されている。
許可を受けた業者以外が採取、販売、譲渡などを行うと、法に抵触するので注意。
分布・生息地
国外では台湾以南の西太平洋やインド洋に分布する。
国内では小笠原諸島や鹿児島県以南の南西諸島に分布する。
砂浜と海岸樹林の境目付近を好み、陸上で長期に活動できるようにエラが発達しているものの、乾燥してしまうと呼吸ができなくなるので、日中は日差しや外敵を避けるために物陰や砂や土に穴を掘って身を隠している。
寿命・値段
オカヤドカリの寿命は長く、普通に飼育しても10年以上は生きる。
飼育環境を上手に管理できれば、30年以上生きる個体もいるらしい。
値段
安価
1匹あたり300~1000円前後で販売される。
大きい個体ほど高価。
種類
オカヤドカリとして流通している種類は主に以下の3種。
オカヤドカリ
ムラサキオカヤドカリ
ナキオカヤドカリ
ショップなどでは特に区別されずに販売されている。
ヤシガニを含めた、8種が日本に分布する。
オカヤドカリ
ムラサキオカヤドカリ
コムラサキオカヤドカリ
ナキオカヤドカリ
オオナキオカヤドカリ
サキシマオカヤドカリ
オオトゲオカヤドカリ
ヤシガニ
オカヤドカリ
Coenobita cavipes
内陸性が強く、山の中でも見つかる。
海辺よりもやや内陸に生息しているオカヤドカリの1種で、色は全身が褐色。
発音器を持たないので、「ムラサキオカヤドカリ」や「ナキオカヤドカリ」などとは異なり鳴かない。
個体数は以下の2種と比較するとやや少なく、生息域も若干異なるため流通量は少ない。
飼育法は他の2種と同じ。
ムラサキオカヤドカリ
Coenobita purpreus
日本固有種で、美しい青色に成長する。
海辺の陸地に生息するオカヤドカリの1種で、オカヤドカリの中では北限に分布する日本固有種。
若い個体は白色や赤色などカラーバリエーションが豊富。成長するにしたがって紫色が強くなる。
発音器を持つので鳴くオカヤドカリとして有名で、流通している品種の多くが本種。
姿はナキオカヤドカリと酷似するが、眼柄(がんぺい)の下部にある暗色の模様の有無で見分ける。
模様が有る方がムラサキオカヤドカリで、無い方がナキオカヤドカリ。
コムラサキオカヤドカリ
Coenobita violascens
成体は青紫だが、幼体は赤い。
ナキオカヤドカリ
Coenobita rugosus
最もよく見られ、砂浜に多い。
海辺に近い陸地に生息しているオカヤドカリの1種。若い個体は白色や赤色、紫色などカラーバリエーションに富む。
老成すると褐色が強くなる傾向にある。
名前の通り発音器を持つ。
ムラサキオカヤドカリに次いで個体数が多いため流通量も多く、オカヤドカリとして流通している品種は主に本種とムラサキオカヤドカリ。
姿もムラサキオカヤドカリとよく似ているが、眼柄の暗色の模様の有無で判別できる。
オオナキオカヤドカリ
Coenobita brevimanus
丸くて大きな左鉗脚を持つ。
サキシマオカヤドカリ
Coenobita perlatus
発色の良い個体は苺のよう。
オオトゲオカヤドカリ
Coenobita spinosus
謎が多く、日本ではまず見つからない。
ヤシガニ
Birgus latro
世界最大の陸生甲殻類。
オカヤドカリの飼育方法
必要な器具
オカヤドカリを飼育するためには、主に次に示す器具類が必要です。
水槽
底砂
流木、石、シェルター
水入れ、エサ入れ
水槽用ヒーター、水槽用クーラー
バックスクリーン
フタ
貝殻
エサ
人工海水
水槽
昆虫飼育用のプラケースなどでも代用が可能。
大きさや強度、気密性の面で水槽が良い。
オカヤドカリは運動性が高いので、傷つきやすいアクリル製よりはガラス製の方が良い。
同一の水槽で安全に飼育できる個体数はオカヤドカリの大きさによって異なる。
甲長2cm程度の中型個体の場合は60cm規格水槽で4~5匹が目安。
過密飼育は脱皮の失敗などを招くので注意。
底砂
底砂の材質は特に問いませんが、メンテナンスがしやすいのはサンゴ砂。砂の粒径はオカヤドカリが潜りやすいように1~2mm程度のものが良い。
オカヤドカリは脱皮の際は底砂に潜って古い殻を脱ぐ。
そのため、底砂はオカヤドカリの体長の2~3倍(貝殻含む)ほどの厚さになるように敷く。
具体的には、少なくとも15cm程度の厚さが必要。
流木、石、シェルター
オカヤドカリは臆病な性格をしているので、流木などで身を隠せる場所を作らなければストレスを感じてしまう。
飼育する個体数に応じて流木などを導入し、身を隠せる場所を十分に作る。
水入れ
水入れは真水用と海水用の2つを用意する。
いずれもオカヤドカリが貝殻ごと浸かれるくらいの深さがあると良い。
ただし、陶器製やガラス製、プラスチック製などの表面が平滑なものだと、オカヤドカリが滑って自力で脱出できなくなる。
それらの容器を用いる場合は、滑らないように木製の板などで足場を作る。また、オカヤドカリは力が強いので、軽い容器だとひっくり返してしまうこともよくある。ある程度の重さを持った容器を導入する。
バックスクリーン・フタ
オカヤドカリは臆病なので、水槽の四方が開けているとストレスを感じる。
透明なガラスを認識できず、ひたすらガラス面に向かって歩こうとしてしまうので、水槽の前面以外にはバックスクリーンを張り付けると良い。
また、オカヤドカリは立体的な動きが得意なので、脱走防止にフタが必要。
意外と力持ちで軽くフタをしたくらいでは持ち上げて脱出しまうため、重りを載せて簡単には外れないようにする。
貝殻
オカヤドカリは脱皮のたびに宿となる貝殻も交換する。
新しい貝殻を用意しなければならない。
貝殻の好みは個体ごとに異なり、好みに合わない貝殻には入らない。
場合によっては他の個体の宿を奪いに走ることもあるので、貝殻はなるべく色々な形状・大きさのものを用意する。
エサ
オカヤドカリは雑食性なので何でも食べる。
本能的に栄養が偏ることを避けようとするためか、同じものばかりを与えていると食べなくなる。
そのため、エサは植物質のものと動物質のものを、バランスよく与える必要がある。
植物質のエサ
果物や野菜の端材
リンゴやナシなどは食いつきも良い
酸味が強い柑橘類などは嫌う傾向が強い
野菜類
ニンジンやレタス、トウモロコシなどはよく食べる。
タマネギなどの辛みや匂いが強いものは嫌う傾向にある。
動物質のエサ
魚介類を好む。
アジやサバなど、加熱した切り身などを皮ごと与えると良い。
ニボシや乾燥エビ、加熱した貝類なども食べる。
市販されている「ザリガニのエサ」は、オカヤドカリにとっても総合栄養食になり得るので、たまに与えると良い。
オカヤドカリの飼育環境
温度・湿度
オカヤドカリに適した温度は20~28℃。
もともとは亜熱帯に生息している生物なので低温には弱く、15℃を下回ると生存が危うくなる。
高温には比較的強いですが、30℃を超えるような温度に晒され続けると危険。
夏と冬は各種温調機器を用いて温度を調節する。
湿度は70%前後。
オカヤドカリはエラが湿っていないと呼吸ができないので、エラが乾かないように湿度にも気を付ける。
なお、ヒーターは水槽全体を温められる、パネルヒーターやフィルムヒーターが良い。
局所的に温めるものは暖を取れる場所が乾燥しやすいので、オカヤドカリに飼育においては不向き。
こうしたヒーターを使用すると乾燥しやすいので、冬季の湿度には十分に注意。
底砂について
オカヤドカリの飼育においては、底砂は適度に真水で湿らせておく必要がある。なぜなら、脱皮をする際には底砂を掘って砂中に潜り、そこで殻を脱ぐので乾燥していると掘ったそばから崩れてしまい、上手く潜れないため。
逆に、水分が多すぎて砂中に止水が生じることでも問題が発生する。
止水には酸素がほとんど含まれておらず、嫌気性細菌が増殖すると生物にとって猛毒の硫化水素が発生する原因になる。
結果として、砂中に潜ったオカヤドカリが酸欠などに陥り、命を落としてしまうこともあるので注意。
底砂は飼育していると汚れてくるので、数カ月に1回は洗浄する。
洗浄する際は脱皮のために砂中に潜っている個体が居ないかよく確認し、当該個体がいる場合はタイミングをずらす。
砂を洗うときは洗剤などは使用せずに水道水でよく洗い、天日干しをして殺菌・消毒をしてから再利用すると良い。
飼育水について
水は水分補給のための真水と、外骨格を形成するためのミネラル類を補給するための海水を与える必要がある。
真水は水道水でも良いですが通常では塩素が含まれているので、煮沸したり1晩汲み置くなどしてカルキ抜きをしてから与える。
海水は人工海水が市販されているので、それを利用すると管理が楽。
水道水をカルキ抜きしてから使用する。
オカヤドカリをはじめとする無脊椎動物は一般的に薬物耐性が低いので、市販されているカルキ抜き剤は使用しないで、曝気などの別の方法を利用するのが安心。
最後まで読んで頂き、感謝です(ペコリ)
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