リモートワーク10ヶ月の中で試行錯誤して生き残った自宅マイク環境

こんにちは、@shinmiyです。
Mobility Technologies Advent Calendar 2020の 17日目の記事です。

4月に誕生した株式会社Mobility Technologiesは、リモートワークの中で立ち上がりました。2社が一緒になって誕生した会社で、お互いのことを知るにもすべてリモート。

そんなこともあってか、今年はマイク環境にこだわってみることにしました。美声とは程遠い声ですが、少しでも安定してクリアに声が伝わることによって思ってることが伝わりやすくなったり、QoLが上がったりするかなと思ってはじめてみました。

リモートワーク開始前

お仕事の内容的に一緒に働いている同僚と比べて少し遅めのリモートワーク移行でしたが、ZoomやGoogle Meet越しのミーティングがある時は会社でも家でもAfterShokz Airを使っていました。

AfterShokz Air

骨伝導の代名詞みたいなブランドのヘッドホンで、評判通り周囲の音が聞こえながらもミーティングの音もクリアに聞こえるとてもいい製品です。

ただいかんせんマイクの質に重点を置いた製品ではないので、ミーティングで話していると相手から聞き返されることもしばしば。しゃべってるつもりでも伝わらないのは双方相当なストレスが溜まりますね。

そこで、リモートワークへの移行を機にもう少しちゃんとしたマイクに導入してみました。

ハンディレコーダー流用期

ZOOM F1LP

もともと趣味で楽器をやっていたこともあって、録音用に持ち運べるハンディレコーダーは持っていました。状況が状況なのでしばらく出番がなかったのですが、ふと思い立って流用してみることにしました。

ZOOM(紛らわしいですがリモート会議のZoomとは関係ない別会社)のレコーダーに限らずですが、ほとんどのメーカーのハンディレコーダーはPCとマイクをつなぐオーディオインターフェースとなる機能も搭載されていて、手軽に高音質の音声をPCで扱うことができます。しかもこのZOOM F1-LPには付属品としてピンマイクが付いてくるので、ちょうど今の用途にピッタリだなと思ってしばらく使っていました。

ピンマイク、軽くて便利なんですが、使っていく内に欠点が大きく2つあることに気付きます。

ひとつは着脱の煩わしさ。打ち合わせの度にマイクをシャツに着けるんですが、そのまま着けていることを忘れて席を立つと「ピーン!」となってリードを引っ張られた犬状態です。そのままPCにも有線でつながっているので、マイクもレコーダーもPCも危ない。

そしてもうひとつは周囲の雑音。ピンマイクは無指向性なので、周囲の音もかなり拾ってしまいます。ちょっとしたメモを取るためのタイピング音から隣の部屋の音までそれはもうバッチリ。

欠点に気づくと、そこはもう沼のはじまりですね。

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4月頃にはまだこんなことを言っていたようです。

ダイナミックマイクへの転換

SHURE SM57

ピンマイクの欠点を克服するためにちゃんとしたマイクを試し始めました。まずは比較的安価で扱いやすいダイナミックマイクから導入してみます。SHURE SM57は言わずと知れた定番中の定番マイク。実はこれも楽器の録音用途で持っていましたが、レコーダーで撮る方がお手軽なのであまり活用はできていませんでした。このシリーズは海に投げ込もうがトラックで轢こうが壊れないほど頑丈なことで有名で、かなり使い込まれたのをヤフオクで3000円くらいで手に入れたのを覚えています。

これとZOOM F1につけられるXLRアダプターを組み合わせると、ミーティングにも投入できるようになります。

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付け替えてみるとかなり違いが実感できました。指向性があるので周囲の音よりも自分の声が優先して入るイメージで、音質もピンマイクより格段に良くなっていることがミーティング相手にもしっかり伝わるほどでした。

Steinberg UR22C

SM57の投入によって音質の問題はかなり改善されましたが、別の問題にもずっと悩まされてました。毎回の設定が邪魔くさいのです。

ZOOM F1に限らずですが、基本がレコーダーなのでオーディオインターフェースとしての設定が毎回手間でした。ミーティングが始まる度に

USBカバーを開く
→USBケーブルをつなぐ
→電源を投入
→オーディオインターフェースの項目を選択
→PC側で入力を設定

といった手順が発生します。ZOOM F1本体の画面を消す方法がないので、液晶の寿命を考えるとミーティングの度にケーブルを引き抜いて本体を消すほかありません。かなり面倒ですね。

ここまできたらと、ちゃんとしたオーディオインターフェースの購入を決意しました。いろいろ探した結果、Steinberg UR22Cに行き着きます。使い込まなかった時の転用も考えつつ、入力が2つある点、USB-C接続ができる点が良かったです。ただし、この価格帯のインターフェースはかなり機能や性能が似通っていて、最終的には好みの問題なのかなという印象を持ちました。

導入によって音質そのものには劇的な変化はありませんが、入出力が一箇所にまとまる、入力レベルの調整が物理的に調整できるようになる、などQoLを劇的に向上させることができました。

コンデンサーマイクの乱

sE Electronics sE4400a

この頃には手当り次第ネットでマイクを漁ってはその差を見たり聴き比べたりするようになっていました。いろいろとサンプルを聞いてる中、偶然見つけたsE4400aに一目惚れ(一聞惚れ?)してしまいます。サンプルを聞いてみてください。それ以上は言いません。

コンデンサーマイクは前述のダイナミックマイクと違い壊れやすく、残念ながら海に投げ込んだら故障してしまいますが、その分繊細に音を拾ってくれます。その反面周囲の音までも繊細に拾ってしまうので、ものすごく音質のよい食洗機の動作音がたまにミーティングに入っていたと思います。

ただSM57とは比べ物にならないほどクリアな音になってくれたので、しばらくこれを使っていました。

sE V7に落ち着く

最終的にこれにたどり着きました。sE Electronicsのダイナミックマイクです。ビリー・アイリッシュがライブで使っていることで有名だそう。

スーパーカーディオイドなので周囲の音を拾いづらく、音質もSM57ほど低音・中音がくどくなく、抜けよく聞こえます。あとこれもトラックで轢いても壊れないので、安心して運用することができますね。

カフボックスの自作

ミーティング中のふとした時にマイクをミュートしたりするんですが、ずっとマイクの音は実際に拾われていることに気持ち悪さを感じていて、物理的にミュートする方法がないかを探していました。

カフボックスは調べてみるとあまり情報がなく、マイクに直接着けてオンオフのときに切り替え音が発生してしまうもの、放送局で使われるような数万円する極端にハイクオリティのものなど、自分の用途に見合わないものばかりです。

シンプルな構造のものに数万円かけるのも馬鹿らしいので、自作の道を選んでみました。単純なカフボックスは構造自体はいたってシンプルなようで、XLRケーブルを半分に切って、中のケーブルの内2本をショートさせるスイッチを繋げています。あとは絶縁テープでぐるぐる巻に。

秋月電子で160円のパーツを買ってはんだでくっつけて、見た目0点のカフボックスができあがりました。動くのでヨシ!

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(黒いツマミの部分をぐるっと回すと物理的にミュートになる)

完璧に入力を遮断できる訳ではないことと、使えるマイクが限られることが残念なところですが、正味10分で出来た割にはこれもかなり劇的にQoLが上がったので作ってからずっと愛用しています。
48V対応版の回路図も見つけたので、今後作ってみたいなとは思っています。

番外編

マイクやインターフェースの他にも、周辺機器をいくつか試してみています。

その1:アーム

マイクと一緒に買った卓上のマイクスタンドでは高さ低すぎて背中が痛くなってしまったので、マイクアームにするか!と決心して導入しました。

実はコロナの影響を一番感じたのがこのアームです。4〜5月ごろはどこを探しても在庫が全くなく、どれも入荷1ヶ月以上な状況がしばらく続きました。みんなポッドキャストでも始めたかったんでしょうかね。

Amazonのどこの馬の骨かもわからないものを避けつつ、信頼できるメーカーのアームが入手できたのはもうゴールデンウィークがとうに過ぎた後でした。

その2:ポップガード

導入してみたんですが、ゴツいのにしすぎてびっくりされました。さすがにミーティングでるのにこれは見た目的なインパクトが大きすぎていいかな…と冷静になったので、息がかからないところにマイクを配置する運用に切り替えて、一旦お蔵入りになりました。無念。

その3:ソフト類

リモートワーク開始前からですが、Loopbackと、定番のAudioHijackを使っています。Loopbackは何でも擬似的にマイク入力にできちゃう便利なアプリで、そこに何でも出力として設定できちゃうAudioHijackを繋げて運用しています。主にマイクレベルの確認や、イコライザーをいじって音質を調整みたりする実験の場として使っています。

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(AudioHijackの画面。左上にアイコンがUR22Cからの入力を表していて、右のOutput Deviceにつなげることで出力している。)

最終的にはカフボックスもどきを導入したので使わなくなりましたが、ここでもマイクのオン・オフをできるようにしていて、ZoomやGoogle Meetのミュートに頼らない仕組みにしています。(個人的にはミュートアイコンが付いていると会話が一方的になりそうな印象を与えてしまい、心理的な壁を作りやすいかなと思っていて、基本的にはなるべくミュートオフに見えるようにしています。)
ちなみに小技として、入力・出力のバランスを左右に振っておくとレベルメーターで同時にレベルを確認できて便利です。

そして最終的に残った構成

ということでリモートワーク開始から10ヶ月経とうとしている12月の今、最終的にこんな構成に落ち着きました。

sE V7 ― アーム ― 自作カフ ― UR22C ― Mac(Loopback―Audio Hijack) 

もちろん数十万するマイク定番とされているオーディオインターフェース気になっているプリアンプなど、まだまだ上位の機種や繋げる機器はたくさんありますが、これ以上やると向かう方向がわからなくなってくるなと一旦満足しています。一旦。

おわりに

記事を書く中で振り返って気づいたんですが、沼に引きずりこまれるのは自分の持っているものの欠点に気づく瞬間ですね。「ハッ、これだったら解消できる!」と思ったら最後です。

これからもしばらく続きそうなリモートワーク生活ですが、皆さんもマイクまわりの環境を見直してみてはいかがでしょう?

明日は teriyakisanによる「Lambda × GolangによるS3間並列コピーのパフォーマンスを検証してみた」です。乞うご期待!

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