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往復書簡ーオープンリレーションシップとか養子縁組とかぼくにとってはなんだっていいことに気が付きました。

以下、2021年2月20日から2021年3月10日までの私と好きな人(養子縁組をしたパートナー)との手紙のやりとりです。文中に出てくる先生というのはその彼のことを指しています。手紙の中身は個人名のみ伏せています。

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先生こんにちは。私は今2021年2月27日土曜日23時、やっと家について、帰るなり服も着替えずにこの手紙を書いています。
対面だと誤魔化したり、変に明るく振る舞ったり、不機嫌になってうまく言葉が出てこなかったりするので手紙を書こうと思いました。返信は不要です。

私が一番最初に引っかかったのは、2月21日日曜日、いつもなら土曜の夜18時半からデートなのに、ーーさんに会うとのことで日曜のお昼から会うことになったことでした。
たしかに先生がおっしゃっていた通り、週に一度会うというのはきっかり24時間会うという約束はしていないし、デートの日程も毎回来週分を決めていたので、私が勝手に先生とは土曜の夜から丸一日会えると思い込んでいました。
しかし私にはとてもショックでした。土曜の夜何時からでもいいから、会いたいと食い下がりましたが、結局日曜のお昼からになり、私は分かったと口では言ったものの、納得はしてなかったように思います。

それで、土曜はご飯もろくに食べずに、死んだようにテレビドラマを観て過ごしていました。私の方が先約だったのに、という気持ちもあったと思います。思い込みですが。そして、それならそうと先にわかっていれば他の男性と会うなり、ーーさんとの金曜の予定をズラすなりできたのに、などとグルグルと考えていました。

そうして、日曜は不機嫌でした。申し訳ないです。
私は、他の予定が入ったとしても、一回のデートの時間が短くなっても、ほかに好きな人ができたとしても、私のことを愛していることには変わりはないと開口一番に言ってほしかったのだと思います。私がかつて先生に言ったように。
私は不安でした。そして、少し蔑ろにされたように感じているのを、大丈夫だと、杞憂なのだと言ってほしかったのだと思います。
不機嫌だった私があのランチで覚えていることは、先生が寝不足で疲れていたこと(ーーさんと何かあったのですか?と思っていました)、先生が席につくなり私に感謝を述べたこと、お皿が真っ白で綺麗だなぁということでした。

先生が私に感謝を言った時、先生が私から学んだとおっしゃるようなコミュニケーションの仕方や、人を愛すること、優しくすることが、他の女性とのコミュニケーションを円滑にするために使っているのだと、それを感謝されていると思い、とても不愉快な気持ちになりました。
私は、私と先生とのデートの時間を削るような女との関係について感謝されて喜べるほど、余裕がありませんでした。
私は愛していると言われたかったのに、先生との関係を良くするために必死でやってきたことが、誰かが先生に愛される技術として易々と渡されるのが許せませんでした。傲慢ですが、率直な気持ちです。
ーーさん、ーーさん、ーーさんについて悪く言ったのは申し訳ございませんでした。この件に関しては、弁解の余地がありません。よく知らないというのに悪く言ってしまってすみませんでした。先生の好きな人たちに対して悪くいうのは良くないことだったと思います。

私が彼女たちのことをか弱い、溌剌としていないと言ったときに、一呼吸置いて「それは失礼ですよ」と先生が声を絞り出した時、私は愕きました。とてもショックでした。先生が怒っていたからです。日曜のあの日、私にはあの瞬間の先生の顔が一番感情的に見えました。私に対して何かを言った時よりもずっと先生は怒っていました。彼女たちを庇うのだなと思ったのです。そこまでして、彼女たちを庇うのだなと。だから嫌なんだ、か弱い女っていうのは、と心底思いました。
多少のことは棚に上げつつも、私はそういった男の人に庇ってもらったり、助けてもらったりせずに生きてきたという自負がありました。そうでないと生きてこれなかったのです。誰も助けてはくれませんでした。だから軟弱さをそのままにしてどうにかしてもらおうという魂胆(に見える)の女も、それをありがたがって助けてあげようとする男も心底嫌いなのです。

荒井めい
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取り急ぎ追記
私は先生のことが好きなので、私としては関係を終わらす結論にはしたくないと思っています。これが私が繰り返し一番伝えたいことです。
いまはただ、どういう気持ちになったらいいのかもわからないです。
電話の提案ありがとうございました。正直、先生がそのように本当に思ったからおっしゃってるのか、私があんなに怒ったから言う通りにしようとされているのかもうわからなくて、混乱しています。結論も出ません。とりあえず、先ほど送った手紙の続きを書こうと思っています。(LINEにて 2月28日22時56分)

先生、愛しています。こんなに揉めていたくないです。こんなにお互いを傷つけてまでするべきことなんてあるのかと思っています。(LINEにて 2月28日23時22分)
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めいさん、もめごとをここまで大きくして苦しませてしまってごめんなさい。
わたし自信混乱していて毎日思っていることと言うことが変わってしまうので、
めいさんからしてみれば言ってることが毎回全然違くて話ができませんよね、すみません。

めいさん、わたしが言った8日に1回会うのがいいと半年前から思っていた、という発言で傷つけ てしまってほんとうにすみませんでした。
その後の対応もよくありませんでした。めいさんに不安と 苦労をかけました。
日曜日会った時もめいさんが愛されているかどうかで不安になっていることに気 づかず、ちゃんと愛を伝えられずにすみませんでした。わたし自信嫉妬の問題はある程度解決した気でいたので、めいさんはめいさんで苦しむというのをあまり想像ができていませんでした。めいさんはわたしにいつも愛を伝えてくれているのに、今回はわたしはめいさんに愛を伝えられていませんで した。
めいさん愛しています。

時系列で、わたしからみた今回のことを伝えます。 まずは日曜日の夜です。わたしはめいさんに、今は会う頻度が7日に1回だけど、半年前から8日に1回が良いと思ってるということを伝えました。そうしたらめいさんが怒った様子になってベラン ダに出て誰かに電話をしはじめました。怒らせてしまった、どうしよう、と思い反省し、わたしはあ せりました。この前後のやり取りは寝ぼけていて正確には思い出せませんが、めいさんが戻ってきて から、会う頻度は7日に1回で今のままでいいのではないかとわたしが言った時にめいさんは8日に 1回でと強く言ったので、とても怒っているのだなと思いました。謝りはしましたが、謝りは足りて いませんでした。

月曜日めいさんが仕事に行ってから、なんであんなことを言って傷つけてしまったんだろうと考えました。これは今でもよく分かりません。わたしは正直、寝不足を原因にしたかったです。
水曜日に、話し合いが長くなりそうだという理由で月曜日に会う日程を変更する提案がめいさんから来たときに、不思議でした。わたしとしては、わたしの発言がめいさんを深く傷つけたと思っていて、なぜそれを言ったのかを説明して、私が謝罪をする必要があると感じてはいましたが、そこまで話し合いが長くなるとは想像していませんでした。
めいさんが話し合いが長くなるのを想定しているということは、相当傷ついているのだと思い、わざわざ日程変更を提案してきたのだから時間を取れる日曜日がいいだろうと日曜日にしました。直近の日曜日は予定が入ってしまいすみませんでした。正直に書くとーーさんとのデートでした。
外見上はめいさんを傷つけてデートの日程をずらし、他の人とのデートを入れているのでよくない感じだなあとは思っていました。この時点で、めいさんがこのことを早く解決しようと苦しんでいることは想像がつきませんでした。わたしはのんきにも、頭を冷やすために一週間あけるのが結果的に良かったかなと考えていました。
めいさんにわたしが会ってあげているというニュアンスの言い方をしたことがかなりめいさんを不愉快にさせたのだなと考え、それならば、本当に純粋に心の底からめいさんに会いたいと思える時に会わないとめいさんに失礼になるのだと考えました。本当にわたしが会いたいと思ってる時に会わないと、今回のことを繰り返してしまうからです。今思えば、この考え方がちょっと勘違いというか、ムキになっている?というか冷静さを欠いているところがあったと思います。

木曜日の朝に、Twitterをブロックされていることに気がつき、これは本当にめいさんを強く傷つ けてしまったのだと思いました。半年前から思ってたという発言も相当よくなかったとこの時点で気 がつきました。Twitterをブロックされてしまうほどめいさんをかなり傷つけてしまったのだと思いま した。会いたいと思ってくれてる人にめいさんは会いたいはずだから、わたしが本当にめいさんに会 いたいときに会わないと信用は取り戻せないと強く思いました。わたしはカウンセリングの先生にこの問題を話し、先生はわたしに愛されていないとめいさんが思っているように聞こえましたと教えて くれました。わたしはもう会う合わないの問題に囚われていたので、そこの考えがさっぱり抜けてい ました。わたしはもう何が何だか分からない状態でめいさんに会いに行ったのでこの時に何を言った のかはあまり覚えていません。めいさんへの愛を伝えて信じてもらうしかないと思っていました。

会ってみると、めいさんは思っていた感じと違く、わたしは気が抜けて、何とか関係性を繋ぎ止められたと思いました。

金曜日にばあちゃんに電話をして、少し揉めました。ばあちゃんに対して感情的になった時に、わたしは人と長時間一緒にいるのが苦手だというのが言葉になって出ました。この思いをきっかけに木曜日と土曜日で言ってることが変わったんだと思います。

土曜日はすみませんでした。一週間はりつめていた気持ちが、何とか関係性を繋ぎ止められたと思って緩んでいました。話し合いにならなかったのはわたしがわるいです。めいさんの話を聞けていませんでした。わたしはずっと、会う頻度に関する事柄が今回の問題だと思っていましたが、めいさんが思っていたのはそうではないというのと相当毎日考えて苦しんでいるというのを知りました。自分のことばかり考えていて想像力が足りませんでした。
時系列としては以上です。

最初の日曜日でめいさんが言ったことや振る舞いで色々悲しい気持ちにもなりましたが、それは 後から振り返ってみれば確かにそうかもしれないと思う程度のことでした。当日時点ではすぐに忘れ るようにしていたので、今はめいさんの言ったことをわたしは気にしていないです。
突っつこうと思ったら突っつけるけど、ぐらいの感覚です。わたしが関心を寄せる女性たちに対してめいさんが悪 く言ったことは、今は気にしていないです。めいさんの人生の大変だったところを垣間見た気分で、 まだまだめいさんへの理解が足りないなと今は思っています。
今でも悲しいと思っていることは Twitterをブロックされたことです。ある種の感情表現だとは思いつつも、必要のない攻撃的な振る舞 いだなと感じられたからです。
会う頻度を減らした方がよいのではないかということを本当に思っているのかどうかについてですが、これは半年前ぐらいからたまに思うことでした。常に思っていたわけではないです。理由は色々あります。色々あるのでその時々で毎回言うことが変わってしまいます。ここを素直に言うとめいさんのことを傷つけると思っていて素直に言えませんでした。何を言ったらめいさんが傷つくのか分かっていなので、わたしはめいさんのことは勝手に評価しないで黙ることにしているところがあります。ですが、今は言います。以下が理由です。

・わたしが長時間人と一緒にいるのが苦手
・週に1回24時間が体力と気力的にしんどい時がある(人と一緒にいるかどうかではなくアクティビティとして、最近だと27時間ぐらいになっていることも)
・めいさんとのコミュニケーションで気を張ってしんどくなる時がある(すみませんここがすごくめいさんのせいにした言い方になってしまい言いづらかったです。例えば次のことがしんどいです。めいさんの泣いたふりが本当かどうか分からず毎回真剣に謝って疲れてしまう。雰囲気で機嫌が悪くなるふりをするので本当に心配して疲れてしまう。何かまずそうなことを言った時にめいさんの眉がすごく上がり責められてる気分になる、これはわたしがわるいところがあります。冗談の量が多い時に、楽しいのは楽しいんだけど後から振り返ると少ししんどい。などです)
・長い時間一緒にいると疲れたわたしがめいさんを傷つけてしまいそうで怖い
・メンタルを整える期間が後一日欲しい(めいさんにはあまりバレないように振舞ってはいますが、わたしは今までは人を無駄に傷つけるということをしてきました。いまだにそれが抜け切れてない部分もあり、そういうことがないように、めいさんと会う時はある程度メンタルのコンディションを整えて余裕を持って会うように心がけています。たまに間に合わずに、どうしようとヒヤヒヤしながら会う時もありますが、たいていはめいさんに会うとリラックスするのでうまくいってるように思います。このコンディションを整える期間が後もう一日欲しいという、ないものねだりのような思いもあります)

わたしが今思いつく理由はこのような感じです。
わたしが不安や不満を言葉にして伝えなかったのもわるかったと思っています。反省しています。海に行った土曜日に、わたしが会いたいときに会うという案を伝えましたが、間違った考えの経路を辿っていた末の結論なので撤回させてください。土曜日はわたしが話し合いに協力せずにすみませんでした。もう一度話し合いをしましょう。

めいさんとは長きに渡って人生の瞬間を共有したいと思っています。めいさんと一緒に何かをしている時はほんとうにワクワクして楽しいです。めいさんと一緒に笑っていると自分に自信が持てるし、自分らしく生きられていると感じます。めいさんのことが好きです。愛しています。
どうにかこの問題を解決したいです。わたしが問題の解決に協力的でなくて信用できなかったですよね、すみませんでした。わたしは自分のことを考えるのでいっぱいいっぱいでした。今は問題を解決したいと思っています。

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ふて寝から起きまして、ただいま2月28日日曜日20時です。メッセージ読みました。どういう気持ちになればいいのかもうよく分からなくなってきました。すごく怒っているし、突然謝りたくなるし、拗ねているし、とっても悲しくって。今週見つけた面白い動画などを先生に見せたくて、だけど、元気な姿を見せたくないとも思っています。にこりとも笑いたくないのです。

日曜日の夜に話を持ちかけたのは私でした。先生が岩盤の話をしたあと、私は先生にてっきり私の方のもやもやの方も聞かれると思っていたので待っていました。しかし、先生が聞くことはなかったので、自分から話しました。時間が奪われたように感じていること、感謝をあのタイミングで言われても不愉快な気持ちになったこと、彼女たちの悪口もそこで言ったと思います。私はいつもの調子を取り戻せたと思いました。ちゃんと思っていることを言えたし、解決方法が見つかるだろうと。しかし、先生は私の話にあまり興味がない様子でした。私が先生の感謝の言葉を言うのを遮ったことが悲しかったことと、彼女たちの悪口に対して強くたしなめるだけでした。

その後はかなり私が問いただしたと思います。そこで、デートは週に1回じゃなく、8日に1回がいいという話が出てきて、くらくらしました。しかも、半年前から思っていたと。
ではなぜいままで週1だったのかと聞くと、私が会いたがるだろうからということでした。気づかないうちにオセロが端から端まで裏面にひっくり返ってしまった時のような気持ちになりました。あぁ、そうだったのか。ふたりで決めたと思っていたことが、ふたりで一緒にやっていたと思っていたことは勘違いだったのかと。
私知らなかったです。私がずっと舞い上がっていただけだったのですね。毎週感謝を言って駅のホームで別れていたのは、なんだったのでしょう。あれも私がそうしたがっていたから、ただそうなっていただけなのでしょうか。いいなぁ、土曜に会ったのに、しかもそこで次会うかわからないようなことを口にしてもにも、先生に火曜日に会いたいと言われていていいなぁ。私はどんな長期休暇だって、週1以上会いたいなんて言われたことないのに。水みたいな女はいいなぁ。日曜の昼からにずらしたくせに、寂しいからと一言言うだけで私を月曜の朝まで家に居させられることができるなんて、いいなぁ。帰ってやればよかった。
そうして、私はインスタグラムのストーリーを非表示にさせ、Zenlyを切りました。

とにかく、会いたいと思っていない先生に私が懇願して会ってもらってもしょうがないので、次の予定を8日後の月曜にしました。先生が一週間後の日曜は嫌ということなので従う他ありません。私には月曜の夜からか、次の次の日曜しか選択肢がありませんでした。月曜からだと今日過ごした昼からのデートよりもぐっと一緒に過ごせる時間は減るし、次の次の日曜までは遠すぎます。しかし、それしかなかったのです。次の日曜日がーーさんとのデートなのだろうということは分かっていました。

結局何を考えても、今より会う頻度を落としたいということは事実らしかったので、私は極力考えないように努めました。何を考えてもその事実は私にはどうにもならなかったからです。
しかし、毎日様々なことが頭をよぎりました。とても苦しくて、水曜日に日程の再提案を先生に送りました。本当は今すぐに解決したかったのですが、普段連絡を取るのが苦手だということや、先生のペースがあるだろうということで、平静を装ってメッセージを送り、結局自分が一番嫌だった次の次の日曜日に日程が決まってしまいました。
木曜日の朝、最寄り駅から新宿駅に40分間各停列車で揺られながら、うとうとと眠るつもりだった私は、ずっと、ずっと先生とのことを考えていました。
何が嫌で、どうして怒っているのか、悲しいのか、悔しいのか全くわからなくて、この状態が来週の日曜日まで続くことが苦痛すぎて、私は先生のツイッターをブロックしました。
あの人が私のことをわきに置いておいて次の日曜日まで過ごすのだから、私も距離を置いて先生のことは考えずに過ごそうと思いました。感情表現としてというよりは、先生が私の日常について遠くから眺められるのが不公平だと思いました。私は元気にやりたいし、それを先生に「よかった、めいさん元気そうだ」と遠くから勝手に安堵してほしくありませんでした。ブロックについて、かわいそうなことをしたとは思いますが、あまり謝る気はありません。

そうして、先生から今日会いませんかとメッセージがきました。
たしかに、なんだかよく分からないままブロックされたのだからそりゃあ涙目くらいなるだろうな、と思って見ていました。目が赤くなっている先生はとても綺麗でしたが、それ以上の感情はありませんでした。
なにやら謝罪はしているようだけれど、「めいさんを傷つけるのが嫌だから」と言っていた会う頻度についての理由も、少しつつくと、ーーさんと私が会っていた時に「今日会いますか?」と言った後に「今日会いたいです」と言い直したのも、私がそう言われたいだろうと思って言ったと言い出しました。また私は知りませんでした。
いったい今まで、どれくらいのことを私は知らなかったのでしょうか。そういった嘘が、いくつあったのでしょうか。私は、そのような扱いを今までされていたのですね。馬鹿にしないでくださいよ。毎日先生に会いたいなんて、私一度も言ったことないです。先生、私に聞いたことがないだけでしょう?

何に傷ついたのか、何が嫌だったのか、どうしたいのか、先生は木曜日も私に聞きませんでした。私は気持ちがすっかり乾いてしまって、涙も出ませんでした。自分が傷ついたことと、自分が誰かを傷つけたらしいという事実で精一杯なのだなぁとただ先生の黒くうねった髪を眺めていました。

荒井めい

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めいさんへ

ぼくの心の中の話をします。
ここは保育園です。早く家に帰りたい。でもお母さんはまだ迎えにきません。ぼくは人と仲良くすることができません。やり方が分からないからです。みんなが仲良さそうに遊んでいます。遊んでいるみんなを遠くから眺めます。いてもたってもいられずに暗い押し入れの中に逃げ込みます。押し入れの中は居心地がよいです。誰も来ないからです。
押し入れの方に誰かが近づいてきました。ぼくに気付かずあっちにいってくれ。だけど気付いてもほしい。わざわざ押し入れの前に一人でやってきた君にこそ気付いてほしい。ぼくは押し入れが好きだから押し入れの中にいるんだ、構わないで。けっして自分から扉を開けることなんてできませんが、ほんとうはこの扉を開けてほしいのです。ぼくも明るいところで遊んでみたい。
押し入れの扉が開きました。「何してるの?」「ここに入ると楽しいんだ」「わたしも入ってみよ。こんな感じなんだ。ねえ、外に行って遊ぼうよ」「うん」
押し入れからぼくを連れ出してくれた人はめいさんです。

去年はめいさんに救われた一年でした。
ぼくはもう救われているのがあたりまえになってきました。あたりまえだと思ってしまうとうっとうしくなってきます。好きな人をうっとうしく思うようになりたくないから、ぼくは距離を取ります。ぼくはめいさんを突き飛ばしました。めいさんは悲しんで怒りました。
ぼくは思いました。なんでぼくなんかに傷つけられて悲しんでいるんですか。あなたはぼくを救ってくれた太陽なんだから、ぼくなんかに何か言われたところで傷つくべきじゃない。なんでもないように元気に振る舞ってよ。ぼくなんかに傷つけられて落ち込むなんてめいさんじゃないよ。ぼくはめいさんが落ち込んでいるのを知らないふりをしてやり過ごそうとしました。

ぼくは今まで、ぼくを救ってくれた側のめいさんだけを見ていました。
思い返せばめいさんはいつも傷ついていました。ぼくがめいさんを傷つけた今、やはりめいさんは傷ついています。今度はぼくがめいさんを救う番です。頼りないと思いますが頭をひねって考えます。ぼくはめいさんの苦しみをそのまま理解することはできませんが、少なくともつらい時は一緒にいたり、逆に一緒にいてほしくないような時は静かに見守ることはできます。

めいさんは気が付いていますか。
ぼくがめいさんに見つけてもらって救われたように、めいさんのおかげでたくさんの人が救われています。めいさんがいろんなことに興味を持っていろんな人を好きになって、あなたは太陽みたいな人だからそれだけで色んなものや色んな人が救われるんです。めいさんがこの世界にいるだけでぼくはこの世界にいやすくなるんです。だからぼくもめいさんがこの世界にいやすいようにしたいです。

オープンリレーションシップとか養子縁組とかぼくにとってはなんだっていいことに気が付きました。めいさんが笑って、その内側を光らせながら暮らせるのならばぼくはどんな手段でも試します。

いつもは好きですとか愛していますと言うけれど、今は次の言葉がしっくりきます。見つけてくれてありがとう。
突き飛ばして傷つけてごめんなさい。ほんとうは一緒にいたいです。

追伸
押し入れの中に何かありました。

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後記
下の画像は実際届いた手紙です。字が小学生みたいです。
どうしたらいいのかまったく分からないまま、傷つき、傷つけ、ただ残ったのはぼんやりとした確信でした。ただ相手のことを自分は愛しているらしいという確信をもって、私はまた先生に明日も会いにいきます。未来のことは分からないけれど、ただ必死に人を愛そうと、いまは心からそう思っています。
2021年3月12日
荒井めい

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