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【特集】変化するエストニア国防軍No.5(海軍編)

今回は国防軍のうち、エストニア海軍の改革について取り上げます。

エストニア海軍は非常に小規模で、英国製サンダウン級掃海艇3隻、デンマーク製リンドルメン級機雷敷設艇1隻(いずれも中古)を中心に、2023年に海軍へ移管された警察・国境警備隊の艦艇4隻(いずれも非武装)を有している。

組織編制としては4つに分かれており、以下の通り。

・機雷戦戦隊(Miinisõja divisjon)
・沿岸防衛戦隊(Rannikukaitse divisjon)
・戦闘支援戦隊(Lahinguteeninduse divisjon)
・警備艇戦隊(Patrull-laevade divisjon)
・海軍学校(Mereväekool)

※エストニア語のDivisjonは英語の「師団」に該当する規模ではなく、ロシア語の"дивизион"が由来で陸軍では大隊規模の部隊、海軍では小規模艦艇の部隊を指している。

中期目標としては、下記の目標がある。
1) NATO軍主導の作戦(SNMCMG1 - 第1常設NATO対機雷グループ)もしくはエストニア独自の作戦に3隻の艦艇を参加させる能力を維持
2) 機雷データベースを含む対機雷戦能力の維持
3) エストニア独自のC3I(指揮統制・通信・インテリジェンス)システムの開発と海軍教育訓練センターの発展

国防軍の中で海軍は小規模かつ対機雷戦・機雷敷設能力に特化しているが、近年では多様化する海軍戦術への対応を求められており、海軍でも無人機の導入が検討され始めている。

2023年にエストニア海軍が購入した、フィンランド・Forcit製のブロッカー(Blocker)複合機雷。
TNT換算1トンの爆発力を誇る。

2024年3月のERR(エストニア公共放送)報道では、エストニア海軍司令官のユリ=サスカ(Jüri Saska)提督がウクライナにおける攻撃型USV/UUVの活躍について賞賛しており、エストニア海軍でも無人機の導入が検討されている旨が述べられている。

ただし、海軍の少ない予算では現状、攻撃型USV/UUVの開発・導入は難しいと思われ、下記の投稿のように主に対機雷戦用の自律型水中機(AUV)の導入を模索しているようだ。

エストニア領海で行われた対機雷戦演習Open Spirit 24における、エストニア海軍とノルウェー海軍の共同演習。ノルウェー製の対機雷戦自律水中機(AUV)「フギン」(Hugin)をエストニア海軍の巡視船「キンドラル・クルヴィッツ」(EML Kindral Kurvits)から投下している様子。
出典: エストニア国防省Xより

また、エストニア海軍に関連した話として、同国の造船企業「バルティック・ワークボーツ」(Baltic Workboats, BWB)は、欧州連合(EU)の欧州防衛基金(EDF)において、EU加盟国向けの自律型無人警備艇を開発するEUROGUARDプロジェクトのコンソーシアム主幹事企業を務めている。

BWBは現在、サーレマー(Saaremaa)島のナスヴァ(Nasva)造船所で試験艇を建造中で、試験はエストニア海軍と共同で行われる予定となっている。試験艇は今後、数年かけてどのような任務に適しているか調査される予定だが、特に自律航行、障害物・脅威判定、衝突回避といった性能がテストされる。

BWBが建造予定の自律型無人警備艇。出典: Baltic Workboats

BWBはエストニア海軍やブルガリア国境警備隊向けに45m級、24m級、15m級巡視船を建造した実績があり、自律型無人警備艇の予想図からして恐らく45m級巡視船がベースになると思われる。

エストニア海軍の少ない予算では無人艦艇の新造は難しいと思われ、現行の45m級巡視船「ラユ」(EML Raju)にEUROGUARDプロジェクトで得られた研究成果を反映した自律機能を後付けしていく形になるのではないだろうか。

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