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なぜマイナスを引くとプラスになるのか?

算数と数学の違い

さて、「なぜ、マイナスを引くとプラスになるのか?」という問いに答える前に、受け入れてほしいことがあります。それは、算数と数学の違いです。

算数と数学の違いについて、考えたことはありますか? Wikipedia先生によれば、算数は

算数(さんすう、elementary mathematics)は 日本の小学校における教科の一つ。広義には各国の初等教育における一分野も指す。[1]

とのこと。

一方、数学は、

数学(すうがく、希: μαθηματικά, 羅: mathematica, 英: mathematics)とは、数・量・図形などに関する学問である。数学は、西欧の学問分類では一般に「形式科学」に分類され、自然科学とははっきり区別されている。方法論の如何によらず最終的には、数学としての成果というものは自然科学のように実験や観察によるものではない。[2]

とのこと。算数は日本の小学校における科目で、数学は学問の一分野であるらしい。

しかし、ここで分かってもらいのは、辞書的な定義よりも両者の考え方の違いです。Wikipediaの算数の項目に、良い記述があります。

中学校以降の数学がやや観念的、抽象的であったり、専門的な職業で用いるような応用をにらんだカリキュラムになっているのに対し、小学校の算数は「日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考える能力を育てるとともに、活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き、進んで生活に生かそうとする態度を育む」ことが目指される。[3]

ここで私が大切だと考えるのは、算数は日常の事象を対象にしている、という点です。算数は日常生活で遭遇する、お金や時間の計算を出来るようになる、ということを目指している。一方、数学は、形式学問だという。算数は具象的で、数学は抽象的、と言えると思う。

だから、算数の問題は、ほとんどが実例を思い浮かべることができるけど、数学はそうとも限らない。むしろ、数学とは論理であって、実例を出す、ということはまるで重要でない。これが、形式学問として自然科学と区別される理由なのでしょう。

算数は実際的で身近な問題を扱うが、数学は論理を扱う、ということをまずは受け入れてほしい。これは勉強を進めるうえで、重要なことだからです。

これは算数か?それとも数学か?それが問題だ。

さて、マイナスを引く、という行為は算数の問題でしょうか?数学の問題でしょうか?

よく、マイナスを引くとプラスになる、ということを説明するために、具体例を出しますよね。借金が減るのはお金が増えたことになるとか、後ろを向いて後ろに進むと結局前に進むことになるとか。

こういう説明は、先に述べた算数と数学の定義を当てはめると、マイナスを引く、という問題を算数の問題と捉える立場からのものでしょう。

でも、その実例、無理がありませんか? 少し苦しいなと思いませんか? 抜け毛(マイナス)が減った(マイナス)からって毛が増えた(プラス)ことになるんでしょうか?

真の問題は「どうなるか?」ではなく「どうするか?」

これはむしろ、数学の問題と考えた方が良いのではないでしょうか?日常生活の具体例を求めないほうがいい。数学は形式的な論理の学問だから、無理に実例を挙げなくてもいい。数、というものを現実に縛り付けるのをやめて、抽象へと昇華し、論理的整合を重視する。(エンジニアとしての自分から言うと、論理的整合はほどほどでいい気がしますが、数学者はそれを許さないようです。厳しいですね。)

ここからは、マイナスを引くとどうなるか?という問題を数学の問題として捉えなおしましょう。マイナスを引くとどうなるか?ではなく、マイナスを引く場合、どうするか?という問題として取り組むのです。

つまり、どんなルール(形式)にすれば論理的に整合するか?ということを考えていくことになります。

考える取っ掛かりは、ある数をある数から引くと0になる、というルールです。

ある数 - ある数 = 0

すごく当たり前ですよね。(まあ、これもルールなので、俺は認めない!俺は俺のルールを作る!というのも面白そうですが、私の想像力ではこれ以外に有益な答え(ルール)を見つけられませんでした。)

このある数というのは、特定の数ではなくどんな数でも成り立つので、当然、マイナスでも成り立たせるべきです。

そのため、マイナスを引く場合、プラスになるというルールが生じます。ちょっと具体的な数でやってみましょうか。

-5 - (-5) = 0

-5から-5を引いたら、答えは0です。つまり、

-(-5)は+5と同じ

です。これは具体的な数(この場合は-5)に限った話ではなく、すべての数について言えるので、

マイナスを引く場合、プラスとする

わけです。

結論

長々引っ張って申し訳ありません。今回の結論は

マイナスを引いた場合、プラスにするのは、そうするとつじつまが合うから

です。

納得していただけたでしょうか?おそらく、納得できない!という方もおられると思います。自分も中学生のころを振り返ると、それでいいのだろうか・・・と一抹の不安を感じたに違いありません。しかし、数学が形式学問である以上、論理的整合を重視するのは正しいことではないでしょうか?

また、今後数学の勉強を進めると、具体例を出しようのないものも多く出てきます。たとえば、2の5/3乗とか、2乗すると-1になる数とか。

数学に早く馴染むためには、具体例を考えるのをやめて、論理を考えることが大切であるように思います。

引用

[1] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%97%E6%95%B0

[2] https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%95%B0%E5%AD%A6

[3] [1]に同じ

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