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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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#poem

時々

ふと 自分は今 何をしているのだろうと 思う時がある 自分の足で ひとつひとつ 新しい世界を切り開いていく 自分は何をしたいのか 自分はどこへ行きたいのか 自分で決めて ひとりで歩いていかなければ 最初の一歩が こわいけれど ◇高校生の頃に書いた詩です。35年ほど前で、スマホやパソコンはもちろん家にファックスすらない時代でした。環境は今とはかなり異なりますが、悩みとか、考えていることは不思議とあんまり変わらないな、と、昔の詩を読んでいて思います。少なくとも、私の場合は。

裏切りについて

いつも なやみは ひとりで解決しようとします いいのか 悪いのか 人に相談するのが下手で 以前 裏切られたことがあるから けれど 今思えば 私にも悪いところがたくさんあったなと 相手ばかり責めてはいられないと ひとりでなやんで 人に話すのがこわいから 人に関わられるのがこわいから なやんでないふりをして いつになったら 素直に心を開くのか 自分だって人を 裏切っているかもしれないのに ◇高校生のころに書いた詩です。35年ほど前の悩みだけれど、今読み返して、どきっとした

ひとり

ひとりがいい 自分が いやになったら ひとりがいい やっぱり私は逃げてしまう 自分で自分を知らないから 自分を見せるのがこわいから 本当は さみしがり屋のくせに ◇今から35年ほど前、高校生のころに書いた詩です。「自分で自分を知らない」と書いているけど、全体では、私の本質を突いている詩だなあとも思います。つまり、今でも本質的な部分はあまり変わっていないのですね。変わったのは、それを愛しむことができるようになったところ。Time is fantastic.

あなたは無力でも、あなたの言葉は無力ではなかった

いろいろな人が悩んでいて いろいろな悩みをきいて 一緒に悲しくなって 結局その人のために 何の役にも立てない 自分の無力さに気づく 今日このごろ ◇高校生のころに書いた詩です。35年ほど前……当時は無題でしたが、いま読み返して、このタイトルをつけました。少なくとも私は、当時の私がこうして言葉を書き残していてくれたおかげで、ずいぶん気持ちが助けられています。

35年前の……雨の夜に

こういう雨の日は ひとりのお部屋で夜どおし雨の音をきいていたい 電気を消して枕元のスタンドの薄明かりと 窓の外のかすかな光を重ね合わせて いろいろなことを思いたい こういう雨の夜に あなたと二人で夜どおし雨の音をきいていたい うすぼんやりした世界の中で ことばはいらないから 静かに時を追ってみたい こういう雨の日には なんだか人恋しい気分になるから けれど ひとりでいたいから 雨音を心にしみこませて やさしさにひたってみたいから ◇高校生のころに書いた詩です。昨日、いま

雨音

しずかな雨の音が 遠くの気配を つれてくる 生きるもの そうでないもの 未来のもの 過ぎ去った日々のもの 灰色のうすい闇のもと しみてくる 皮膚から 爪の先から わたしの悲しみに しみこんで とけていく 胸のなかは水色 どこまでも水色 にじんでいく 世界へ ひとつになる 世界と 悲しみの音は雨の音