短篇|コトリはキセキを信じていたい
奇跡なんて信じない。コトリは電飾の消えたクリスマスツリーを見上げた。銀色の天使のオーナメントや、金と赤の玉飾りが暗がりにぼんやり浮かんでいる。
つい1時間ほど前まで、この小さな教会はイヴの礼拝でにぎわっていた。クリスマス・キャロルが響く中、コトリは一般参加者として紛れこみ、ベルタワーの階段に隠れて人びとが帰るのを待っていた。
館内はすでに静寂に包まれている。階段に腰掛けて、彼女はスマートフォンの画面を眺めた。
人気ミュージシャン「ノエル」のSNSは、今日の午後の投稿を