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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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2021年10月の記事一覧

短篇|コトリはキセキを信じていたい

 奇跡なんて信じない。コトリは電飾の消えたクリスマスツリーを見上げた。銀色の天使のオーナメントや、金と赤の玉飾りが暗がりにぼんやり浮かんでいる。  つい1時間ほど前まで、この小さな教会はイヴの礼拝でにぎわっていた。クリスマス・キャロルが響く中、コトリは一般参加者として紛れこみ、ベルタワーの階段に隠れて人びとが帰るのを待っていた。  館内はすでに静寂に包まれている。階段に腰掛けて、彼女はスマートフォンの画面を眺めた。  人気ミュージシャン「ノエル」のSNSは、今日の午後の投稿を