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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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2020年8月の記事一覧

夏の終わりはラムネのにおい

風のにおいがいつもとすこしちがうとき あなたがそこにいる と感じる 昼下がり 庭の花と木に水をやった 日の光が 蝉の声をのせて降ってくる 暑い けれど もう晩夏だ 風はまるくやわらかく 彼方の時につながっていた きらきらの瓶に入った ラムネの魔法を知っていたころ わたしは何を夢見たろう きっとあのころから わたしはあなたを夢見ていた あなたはそばにいてくれた 今日の風はラムネのにおい 甘くて切ない夏の終わり あなたは追われたものを連れ戻し 傷ついたものをそっと包み 弱った

昔の恋のしまい方

あなたの夢が あなたの香りが 胸いっぱいに ふくらむにつれ 私の中のあの人は いつしか動くのをやめ 語りかけるのをやめ 一枚の写真(スナップ)のように 奥の部屋 またひとつ 奥の部屋へと しまい込まれて…… 一番愛した 時のままで ◇35年ほど前、高校生のときに書いた詩です。中学から高校にかけて、私は何年もひとりの人に片想いをしていました。告白もできないまま、その人がほかの女の子と交際を始めて、私は失恋(笑)。そのときは悲しくてつらくて、もう恋なんてできないと思ったけれど、