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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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2020年7月の記事一覧

愛ということば

気軽に使いたくない そのかわり 気軽に使ってほしくない ささやいた後 一瞬の後悔 熱く燃え上がる愛よりも 時間をかけてひとつずつ 積み上げてゆく愛がいい 時間に追われて 時間を追って 走る愛はきらいです ◇35年ほど前、高校生のときに書いた詩です。ここで書いているのは恋愛の愛。でも、「恋」とは異なり「愛」のほうには、もっと大きな意味につながっていると思っていました。人間愛とか。私にとっては、何か尊くて特別なものだった気がします。クリスチャンになってからは、愛という言葉

過去を抱いて生きていく

何をためらうのか 何から逃げるのか 時々すべてがいやになる 心のままに生きられない そんな自分がいやになる 自分の過去がいやになる 今の自分がいやになる 明日の自分に夢をたくして すべてを無にかえせたら けれどやっぱり失いたくない 私だけの過去 ◇35年ほど前、高校生のときに書いた詩です。あのころは、自己嫌悪に陥ることがよくありました。まだ十数年しか生きていないのに、過去に圧迫されていたなんて。つらいことが多かったから……と思う一方、それでも「やっぱり失いたくない」として

心の鍵

傷つけたくない 傷つきたくない   と思いながら 私は乱暴すぎるみたい おしつけられるのは きらいなくせに 平気で他人(ひと)におしつけている 生意気に 他人(ひと)の痛みをわかりたい なんて言いながら 他人(ひと)の心に踏み込むのを 一歩 ためらって 自分の心には 鍵をかけ ◇35年ほど前、高校生のときに書いた詩です。自分の家には居場所がなくて、世界のどこにも自分の居場所がないような気がしていたころのこと。家族との間に安心できる関係がなかったせいか、友人たちとの距離に