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詩|短篇小説

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ひさしぶりに詩を書きたくなりました。昔はよく詩で表現していたのに、しばらく散文ばかりで。これからはまた、自然にことばを紡いでいけたらと思います。散文詩的なごく短い読み切り小説も、… もっと読む
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2019年8月の記事一覧

飛蝗 ~べきべきないない

青空に白く輝く点がある 北極星? まさか 地上は見渡すかぎり キンエノコロの草原だ 風に踊る金の穂に 見え隠れする一本の道 白く輝く点のもとへ 続いている 歩いていく そこへ向かって きのう、父が死んだ 妹と話さねばならない わたしの右手の内にいる いつから妹は こんなに小さくなったのだろう ふんわりと手を握り 落とさないよう つぶさないよう 注意深く包んでいるのに 高い声でまくしたてる べきべきべきべきないないない るべきるべきるしかないない どうしてそんなに怒りた

それでいいの?

恋人と親友 友情と愛 どちらも大切な宝物 片方捨てろと言われたら 自分を捨ててしまいたい みんな 友情よりも 愛をとるわ と 誰かが笑った ◇高校生の時に書いた詩です。35年くらい前……懐かしい……。でも自分の根本は、あまり変わっていない気がします。

水平線

あなたの中の海は 私には広すぎて うちよせる波と たわむれながら はるか遠くの水平線 ただ みつめているばかり ◇高校生のころに書いた詩です。35年くらい前のわたし(の心と言葉)。なんというか……みずみずしい。

朝 ~いつだって

ねむっていたのか、さだかではない 気がつくと、窮屈な殻のなかにいた 手足を折りたたみ、身を縮めている はじめから、こうだったろうか もっとゆったりできたような いまはもう、殻がきつくて居心地が悪い だんだんきつくなってくる このままでは、いられないのだ それはやってくる 受け入れるしかない そういうものに違いない 力がみなぎる 手足を伸ばそうとした きつい くるしい 出たい 出たい、出たい、出たい みなぎる ちから みなぎる あ 肩の後ろがゆるくなり 風が流れこんでくる

夜 ~あしたがあるなら

闇にまぎれて横たわり 審判を待っている ひとつのときが終息し ようやくねむりにつけるらしい 疲れ、未練、あきらめ、そして安堵 短くもあり、長くもあった 準備はととのうはずはなく 足りるはずなどないのだった そんなつもりじゃなくっても 地団駄を踏んでもやってくる そういうものに違いなかった 受け入れれば、楽になる? 目を閉じる 闇が彼方へ続いている 見たことがないほど、美しい闇 いいえ、それは親しい闇 いつもそこにあった闇 認めようとしなかっただけで どこにでも、いけたん

生きていて

子どものころの 日記帳に ところどころ 詩が書いてある あのころのわたしが 書いていた詩 《私には、太陽は見えない どんなに晴れた日でも 太陽は見えない 私の目に映るのは とてもきれいなくもり空 私は雲が好き 空を流れる雲が好き 私にも、あの雲のような 自由がほしい 太陽は、決まったところを走るけど 雲は、自分の思ったとおりの道を 自由に走る 私にも、あの雲のような自由がほしい》 空を見ていた 四角い窓から それが、世界だった いつも 四角い窓枠に切り取られた 彼女に、許