人が人を裁くことの危うさ。それを、読者=参審員の立場で体感させてくれる戯曲 ~シーラッハ『テロ』
フェルディナント・フォン・シーラッハの戯曲『テロ』(東京創元社)を読んだ。とても考えさせられる作品だった。10代のころにシェイクスピアを読んで挫折してから、戯曲は敬遠していたけれど、この作品は読みやすくて、戯曲に対するイメージも変わった。
舞台となっているのは、現代のドイツの法廷。
登場人物は、裁判長、弁護人、被告人、検察官、それに廷吏と証人という、文字通りの法廷劇だ。芝居として上演された場合には、観客が参審員の立場になる(読み始めてすぐにわかる)。参審員は、一般の市