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いつか/Saucy Dog

大好きな曲の大好きな歌詞と真剣に向き合ってみたシリーズ第一弾、Saucy Dogの『いつか』でございます。

普段なんとなく聴いてる、好きな曲の歌詞に込められた意味を考えてみよう。そしたらもっとその曲味わい深くね?という思いから初めてみた企画です。

ぜひぜひ、曲を聴きながら、このnoteを読んでみてください。

この曲の魅力

この曲を最初に聴いたとき、リピートするのは確定だったんですけども、(こんなにも描写力を持ってるアーティストがいるのか)という驚きと、そんな曲と出逢えたことに何か感動したことを覚えています。

そう、まず1番も2番もAメロは「僕」と「君」の過ごした時間について。
歌詞を聴きながら頭に情景が浮かべたのは僕だけじゃないはず。

恋愛ソングに具体的な情景描写を用いることは珍しくないけれど、この曲はサビ以外はほとんど情景描写だけで構成されています。
そしてサビは「僕」の「君」に対する悲痛な叫び。

そうなんです、この曲は最初から最後までが、『「僕」の思い出の振り返り』そしてサビの『「君」への想い』のシンプルな2つだけで出来ているのです。
つまり、時間軸は過去から今と未来、過去から今と未来を繰り返すだけ。

んでもって、この曲は情景描写のレベルが半端ない。

あい、もうめっちゃ素敵。
だからきっと皆に刺さるのでしょうね。

それでは歌詞をいくつかのフレーズごとに見てみましょう。

坂道を登った先の暗がり

坂道を登った先の暗がり
星が綺麗に見えるってさ
地べたに寝転んじゃうあたり
あぁ君らしいなって思ったり

時間を忘れて夢中になった
赤信号は点滅している
肌寒くなり始めた季節に
僕らは初めて手を繋いだ
2人の物語

坂道を登った先の暗がり。
「星が綺麗に見えるってさ」
という誘い文句で「僕」が「君」を連れ出す。
元気な君は地べたに寝転び、そこに”君らしさ”を感じるということはきっと随分前から「僕」は「君」を知っていた。

そして、赤信号は点滅しているというフレーズから時間帯は深夜だろうな。
肌寒くなり始めた、そう、秋の暮れ、冬隣の季節。

そんな2人の季節に僕らは初めて手を繋いだ。2人の物語。

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そうです、1番のAメロ前半は、僕と君の関係が始まるまでのお話です。
語り口調で、「僕」の弱さとやさしさ、「君」を追っかけている感じ、そして「君」の天真爛漫さが歌詞の節々に滲み出てます。
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2人でひとつの傘を差したり

2人でひとつの傘を差したり
ブランコに乗り星を眺めたり
押しボタン式の信号機を
いつも君が走って押すくだり

仰向けになってみた湖
宙に浮いてるみたいってさ
はしゃいでる君の横でさ
もっとはしゃぐ僕なら

本当に飛べるような
気がしていた
フワフワと夢心地
君の隣


2人でひとつの傘を差したり。
ブランコに乗り星を眺めたり。
押しボタン式の信号機を いつも君が走って押すくだり。
湖の上で仰向けになって、ふたりで宙に浮いてるみたいってはしゃいだり。


「僕」と「君」の淡い思い出。舞台はずっと、夜で、2人だけの時間。
そんな時間は本当に飛べるような気がするほど、夢心地な幸福な時間。

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この夢心地、という歌詞には今「僕」が向き合ってる別れの現実との対比があるんだろうなあ。
んで、飛べる気がしていたとか、夢心地とか、そういう言葉から「僕」がまだ「君」との時間に囚われている感出てますよね。

ここらへんの歌詞を深く考えてみると、”僕の弱さ”と”「君」への焦がれる気持ち”という2つの要素がより一層浮き出てます。ヤバみ。ヤバみざわ。天才の所業。

情景描写と「僕」の心情だけで、こんなに2人の関係や「僕」と「君」の人柄が伺えることってあります?
多分、1番のここまでで、もう僕らの頭の中には2人と、2人の過ごした時間がどういうものだったがくっきり刻み込まれてると思うんですよ。

恐ろしい、まじでこの曲すこ。
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君の見る景色を全部

君の見る景色を全部
僕のものにしてみたかったんだ
あぁ 君を忘れられんなぁ

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君の見る景色を全部 僕のものにしてみたかったんだ
という歌詞は、「僕」の「君」に対する恋い焦がれた気持ちの表れでしょう。

ここで一番が終わりますが、1番は全体を通して焦点が当てられているのは「君」です。
「僕」の感情描写も出てきますが、それは「君」といた時間の振り返りであり、全ての歌詞は「君」から。

これが、後々の伏線になります。
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続いて、2番。

当たり前に通ってたあの道
信号機は無くなるみたいです
思い出して切なくなる気持ちも
いつかは無くなるみたいです

そういえば寒い雪降る日の
田和山の無人公園でさ
震える体 暗い中いつものように笑いあう
街灯の下で

いつも「君」が押してたあの信号機がなくなった様に、思い出して切なくなる気持ちも無くなりつつある。

寒い雪降る日の無人の公園。季節は冬に進み、2人だけの世界だけど、孤独な匂いもする。冬は終わりの季語でもあり、別れの匂いが近づいている。
街灯の下だけど暗くて、震える体をくっつけて、でもいつものように笑いあって。

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そうなんすよね、多分勘の良い方はお気づきでしょう、口調が過去形になってるんですよね。
通ってた。あの道の。あの信号機。そういえば。とか。

シンプルに無くなった信号機と薄れゆく気持ちをかけてるのも素敵。
しかも、この2つのみたいです、は違う意味が込められてるんですよね。

信号機の”みたいです”は、彼女に語りかける口調。
気持ちの”みたいです”は、(本当は無くならないのに)という半ば自虐的な、”みたいです。”なんですよね。

そして、この同じ言葉に違う意味を込めてるってのは、タイトルでもそう。
壮大な伏線。
これは最後に書きます。

なんだろ、2番は1番より確実に、現実に引き戻されている感じありますよね〜〜。1番は2人の夢の物語。2番は、現実と向き合い、3番の大サビの叫びに向けて息継ぎしてる的な。
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僕の目に映りこんだ君が

僕の目に映りこんだ君が
いつもよりちょっと寂しそうな気がした
今になってさ
思い出してさ
後悔じゃ何も解決しないさ
忘れられないのは
受け入れられないのは
君を思い出にできる程僕は強くはないから

街灯の下で、僕の目に映りこんだ君は、いつものように笑っていそうで、寂しそうな気がした。
関係が終わり、離れ離れになってから初めてあのときの違和感に気づく。
今になって、思い出して、でも後悔じゃ何も解決しなくて。
忘れられないのも、受け入れられないのも、思い出にできるほど「僕は」強くないから。
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ここのシャウトまじでやばいですよね。魂込めて歌ってる感じ。震える。

「今になって〜」
からの盛り上がりのパートは比喩は一切なくて、シンプルな「僕」の、「君」への想い。
誰に向けてかも分からない、1人かも知れない、誰にも届くことのない想いを叫んでるのがひしひしと伝わってきます。
なんか海辺とか、夜の高架下とかで空に向かって叫んでそう。誰にも届かないのにね。泣けてきた。
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僕の見た景色を全部

僕の見た景色を全部
君にも見せてやりたかったんだ
あったかいココアを一口

僕の見た景色を君にも見せてやりたかった。全部。
沢山の思い出や、僕の好きな景色、場所や感動したことを全部君にも見せてやりたかった。
悔やんでも悔やみきれなくて、あったかいココアを一口。

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1番では、「君の見た景色を全部  僕のものにしてやりたかった」。
ここでは、「僕の見た景色を全部 君にも見せてやりたかったんだ」。
これ、何でこの順番なんだろうと思うんですよね。
切なさを訴えかけるなら、多分逆の方がよくて。
だから、ここであえて主体を「僕」に置いてるのは、2番から大サビに向けての「僕」の溢れ出した叫びだからなんでしょうね。

そうなんよな、1番では気弱でやさしそうな「僕」だけど、2番ぐらいから大サビに向けて、「僕」の心の中の強い想いがどんどん溢れ出てきてるんですよね。

でも、もう遅いんですよね。後悔じゃ何も解決しないから。

まじで、1本の小説読んでる気分だわ。
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いつかまた逢う日までと

いつかまた逢う日までと
笑う顔に嘘は見当たらない
じゃあね
じゃあね
またどっか遠くで
いつか

「いつかまた逢う日まで」と「君」が笑うのはきっと嘘じゃなくて本心で、「じゃあね」「じゃあね」と最後の挨拶を交わして。
心の中で「またどっか遠くで いつか」と1人呟く。

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ヤバすぎん?
「会う」と「逢う」じゃ違くて、「会う」だと意図した出会いだけど、「逢う」は偶然か運命かの出会い。
耳じゃ分からない、文字に起こして初めて分かるこの切なさ。

この2連続の「じゃあね」も、きっとただ繰り返してるんじゃなくて、「君」と「僕」の最後の会話だったんだろう。
そして、「僕」は心の中で1人「またどっか遠くで いつか」と1人呟いたんだろう。(これは完全に推測だけど)

最後に曲名の「いつか」を回収する歌詞の構成も流石だし、ここでいつかには2つの意味があるって気づいたんですよね。
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”いつか”に込められた意味

「いつか」ってどういう時に使うかっていうと、多分2つあって。
「いつかのあの時」のような過去の話。
そして、「またいつかね」のような、未来の話。

そう、冒頭にこの曲は最初から最後までが、『「僕」の思い出の振り返り』そして『「君」への想い』のシンプルな2つだけで出来ていると書いたんだけど、2つの意味の「いつか」に集約されてて。

過去と未来。
「いつか」の思い出と、「またいつか」という願い。
『「僕」の思い出の振り返り』と、『「君」への想い』。

本当に最初から最後まで、さりげない伏線と、言葉遊びと、それでも余り余って頭に浮かんでくる2人の物語と。

本当に、素敵な曲。

ぜひ、このnoteを読んだ後、『いつか』を聴いてみてください。
きっと、違った曲になってるはずですから。

おわり

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あとがき

これは普段感想とかコメントくれる人に向けてなんですが、文量多いですか?このnote、4100字なんですよ。書きすぎちゃうんですよね。まとめる能力が著しく低いのかも。

後、歌詞考察どうですか?書きながら、これどうなんだろ?って不安になったり。あまりにも主観すぎるかな、とか思ったり。
歌詞を捉える視点が増えたり、言葉遊びの解説したりして、新しい形でその曲を好きになってもらえたら、という狙いでやってるんですけど。(あとはもう完全に個人的な趣味)

読んでくれたら、コメント欲しいなぁ。笑





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