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ジロリアン大量逮捕も?ラーメン二郎敗北の余波を弁護士が解説(麺屋宅二郎炎上事件)

■この文章の趣旨は?

私はラーメン好きの弁護士です。


今回、特許庁からジロリアンにとって衝撃の決定がなされました。


■Yahooニュース 特許庁、ラーメン二郎の周知性を認めずhttps://news.yahoo.co.jp/byline/kuriharakiyoshi/20210814-00253219
■まとめサイトなどでも話題http://www.akb48matomemory.com/archives/1079226286.html


この件について、一部のジロリアンは麺屋宅二郎から訴訟や刑事告訴されるリスクが高まっています。


また、私はこの事件に皆が想定していない黒幕が存在すると睨んでいます。


そのため今回、私の見解を話してみたいと思います。

なるべく専門的な表現や細かい論点は削り、平たい文章で端的に書いてみました。



■麺屋宅二郎はなんで炎上したの?

まずは以下に簡単に炎上事件の経緯をまとめます。


1:麺屋宅二郎(通称:宅二郎)という店舗が開業され、二郎インスパイア系ラーメンの販売を開始する。これがラーメン二郎と店舗名や商品が似ている、パクリだと話題になる。


2:ラーメン二郎が麺屋宅二郎に「類似しているため商号や看板の色を変えるように」と要求。


3:麺屋宅二郎が「要求には法的根拠がない」と拒否。


4:麺屋宅二郎の対応がネット炎上。一部ラーメン二郎ファンにより、麺屋宅二郎やその代表者個人に対する過激な誹謗中傷がネット上に大量に書き込まれる。


5:麺屋宅二郎がラーメン二郎への敬意を欠いていたと謝罪し、店舗名を「麺屋宅二郎」から「豚ラーメン榊」に変更。


これにて一件落着していたかに思われた本件。

しかしその後、新たな展開がありました。



■実は麺屋宅二郎が正しかった?

実は炎上前に麺屋宅二郎が「宅二郎」の商標を申請していたことが発覚。しかも、なんとその申請が特許庁に認められてしまったのです。


結果、「宅二郎」の商標は麺屋宅二郎のものになってしまいました。


これに対し、ラーメン二郎は異議申立てを行ないます。

しかし特許庁はラーメン二郎の申立てを認めず、ラーメン二郎の主張は全面的に否定されました。


端的に言うと、麺屋宅二郎は謝罪し「自分が間違っていた」と認めていました。それにも関わらず、ラーメン二郎側が異議申立てという法的プロセスを踏んでしまったが故に、行政の判断において正式に「ラーメン二郎の主張の方が間違っていた」と確定してしまったということです。


詳細を知りたい人は、以下のURLから「商標」にチェックをし、「宅二郎」で検索してみてください。ページ右側にある「経過情報」をクリックすると出てくるページから、2021年5月6日の「異議の決定」という部分をクリックすると、今回のラーメン二郎の主張や特許庁の見解や判断が確認できます。


URL:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/



■いや、明らかに麺屋宅二郎側がおかしいよね?

今回の結論は、多くのジロリアン達にとっては到底納得できないものに思えるかもしれません。


しかし「法律を知らない個人の感覚」と「法的な正しさ」が異なることは多いです。


今回も同様です。残念ながら「ラーメン二郎よりも麺屋宅二郎の主張が法的には正しかった」ということが、特許庁により正式に認められてしまった訳です。



■なぜラーメン二郎敗北でジロリアンが逮捕されるの?

そこで今回の主題です。


麺屋宅二郎や代表者個人に対して過激な誹謗中傷を行なっていた多くの二郎ファンが、今後訴えられるのではないかと私は懸念しています。


少し検索しただけでも、信用棄損、威力業務妨害、偽計業務妨害、名誉棄損、名誉感情の侵害、侮辱、脅迫など、民事訴訟のみならず刑事罰(いわゆる逮捕される罪)に該当する可能性が極めて高いものがいくつも確認できました。


人によっては「このくらいで誹謗中傷にはならないだろう」と思って書き込んだ二郎ファンもいるのかもしれません。しかし、一見問題なさそうでも、法的な目線では誹謗中傷に該当するケースも実は多いのです。さらに「問題ある内容をリツイートするだけでも名誉棄損にあたる」という判例すら出ています。


加えて、昨今、誹謗中傷に対する対策が社会的な潮流となっている背景もあり、法曹界においても誹謗中傷に関する法律や手続きの改正、事例の蓄積が著しいことは関係者であればよく理解できるかと思います。実際、有名人たちが誹謗中傷者を訴えるケースが続出しています。


<例>木村花さん、橋下徹さん、ホリエモンさん、前澤友作さん、羽生善治さん、小林礼奈さん、太田光さん、清原和博さん、三木谷浩史さん、朝青龍さん など


このような社会的背景もあり、世間的にも不当な誹謗中傷に対する目は厳しくなっています。また、そのような業務を取り扱う弁護士も今後増え、炎上が弁護士の飯のタネになるようにも感じます。


「宅二郎パクリ炎上事件」をあなたがどう思うかは自由ですし、二郎ファンが納得いかないであろう気持ちもお察し致します。しかし、それがインターネット上で好き放題に書き込んでよい理由にはなりません。日本国に住んでいる以上は、日本の法律に基づく制限があり、違反者には処罰が行われます。


特に、今回は特許庁から麺屋宅二郎が問題ないという判断が明示されたことで、誹謗中傷に該当するかどうかがより明確になりました。該当する投稿者においては、犯罪に該当する可能性や訴えられるリスクはかなり高まってしまったと言えるでしょう。



■逮捕されないためにはどうすればいいの?

上記を踏まえ、今後の逮捕などのリスクを軽減するために、もし、あなたが投稿をしてしまったのであれば、以下を参考にしてみてください。


1.リスクのある書き込みを削除しておく
2.過去行った誹謗中傷投稿への訂正と謝罪を投稿しておく
3.万が一、何らかの請求があった場合には和解を目指す


以下個別に説明をします。


■1リスクのある書き込みを削除しておく

証拠をつかまれないことが一番の安全です。



2.過去行った誹謗中傷投稿への訂正と謝罪を投稿しておく

麺屋宅二郎が弁護士へ依頼していることは炎上時の対応から明らかです。犯罪にあたる投稿を弁護士が証拠保全するのは当然です。そのため、削除だけ逮捕リスクが完全には回避できません。


従って「最近明らかになった特許庁の判断を見て自らの過ちに気付き、(表面上だけでも)過去の間違いを訂正して謝罪した」という事実を早めにネット上に残しておくことが、後々あなたのためになる可能性が高いのです。


これにより、過去の誹謗中傷の投稿が「勘違い」が原因であり「故意ではなかった」と主張できる根拠を作れます。また、「事実が判明した後にすぐに対応したという誠意ある姿勢」も残せます。そして、訴訟の目的となる「謝罪・訂正・取り消し」を訴えられる前に行っていた証拠にもなります。


これにより、逮捕や訴えられる可能性が下がり、もしそうなったとしても裁判官の心象が良くなりますので、損害賠償や罰則が抑えられる効果があります。



3.万が一、何らかの請求があった場合には和解を目指す

もしIP情報の開示請求などを起こされて投稿者が特定されてしまった場合でも、いきなり訴えられることはありません。まずは書面で何らかの通知や請求が届きます。もしそうなった場合、和解を目指すことをお勧めします。


というのも、仮に和解せずにそのまま進むと、家族や勤務先に違法な行為をしていたことを知られてしまいます。家宅捜査が行われる可能性もあります。


また、投稿者の本名がテレビやヤフーニュースなどに取り上げられてしまう最悪の可能性すらありえます。


炎上しインターネット上にあなたの名前が晒され、私生活を全て台無しにされてしまうリスクを負うことは、どのような年代や立場であろうと回避したいはずです。


収益を得ている人ブログ運営者やYouTuberなどは特に気を付けるべきです。これらの方々は、個人の特定もしやすいうえに、金銭目的のための誹謗中傷は悪質性が高いと解釈される傾向があるからです。



■重要なのは自分の行動を客観的に見つめること

個人的には、誹謗中傷の投稿をしてしまったラーメン二郎ファンも、その本心は「ラーメン二郎を応援する」ことであり、自らが犯罪者になり訴訟されるリスクを負ってまで何かを誹謗中傷をしたいわけではないと理解しています。


にも関わらず、ラーメン二郎のためにたまたま誤った行動をしてしまい、そしてそれに気づかずに人生が狂ってしまうのであれば、それは流石にどうかと思い、今回この文章を書いています。


この文章があなたのお役に立てば嬉しいです。



■そもそも異議申立てはやらないほうが良かったのでは?

余談になりますが、私はラーメン二郎側の弁護士の対応にも同業者としてかなりの疑問を感じています。


ラーメン二郎の主張が特許庁に認められることが相当厳しいことは、まともな弁護士や弁理士であれば事前にわかることです。また、今回開示されたラーメン二郎の主張と根拠に無理があることは、まともな専門家であれば誰でも感じてしまうのではないでしょうか。


そもそも本来の目的を考えれば、麺屋宅二郎が店舗名を変更した時点で「二郎という名称を使わせない」という目的は達成されています。


にも関わらずラーメン二郎は異議申立てを行いました。

そしてその結果「ラーメン二郎の主張が誤りであった」ということや「ラーメン二郎の主張根拠の稚拙さ」を公に晒す羽目となりました。

加えて、今回の特許庁が公的に判断を出したことで、「どこまでだったらラーメン二郎に寄せても許されるのか?」が明確になったとも言えます。


これは本来であれば大問題です。

なぜなら今まで「二郎」という名前の使用を躊躇していたインスパイア店が、この特許庁の判断を根拠にギリギリまで過度に店舗名の模倣をしてくる可能性も相当高まりました。


加えて、今回行政の見解が確定したことで、炎上時にラーメン二郎を後押ししてくれていたジロリアンの方々が、逆に訴えられてしまいかねない状況まで生まれてしまいました。


要は、ラーメン二郎が異議申し立てを行った結果、なんのメリットもない一方で、


・悪質な模倣店が増える可能性

・ジロリアンが訴えられる可能性


これが生まれてしまったと言えます。


当然、これらはラーメン二郎の望む結果とは程遠いはずです。



■本当に悪いのは誰なのか?単なるミスなのか?

ここで1つ疑問が浮かびます。


何故、ラーメン二郎の弁護士は、負けが容易に想定できる異議申立てを行なったのか?

負けた後の展開を一切考えなかったのか?


仮に私なら本当にラーメン二郎のことを思うのであれば、勝てる可能性が非常に低い異議申立ては行いません。そもそも店舗名は現状使われておらず、可能性が低い異議申立てをしなくても例えば麺屋宅二郎に商標を譲ってもらう交渉をするなど、取り得る他の解決策も容易にいくつか思い浮かびます。


また、仮にラーメン二郎創業者の山田拓美さんが、断固として異議申立てをしたいのだと主張していた場合でも、弁護士としてはその主張が公になることを考慮し、異議申立ての主張や根拠はまともな内容だけを残し、多くの方から応援をもらえるよう最善を尽くした主張や根拠を残すはずです。


しかし、現状を鑑みると「一切何もしなかった方がマシ」という状況と言わざるを得ません。


いったいなぜこのような状況になっているのでしょうか?


ラーメン二郎側の弁護士や、他のアドバイザーやコンサルタントなどが、何らかの目的や意図を持って山田拓美さんをそそのかし誘導してやらせたのでしょうか?と何かしらの意図を勘ぐってしまいます。



■ジロリアンは捨て駒だった?

もしかすると一連の異議申立てを主導した人物は、「どうぜ全てのリスクはジロリアンが負ってくれる」と思っているのではないでしょうか。


そもそもこれまで、インスパイア店が「二郎」という名称を使用していなかったのは、ラーメン二郎創業者の山田拓美さんへの敬意だけでなく、ラーメン二郎の熱狂的なファンである「ジロリアンの方々」の存在があり、法律を超えた中でも保たれていたと考えられます。


実際、熱狂的なジロリアンの方々が、ラーメン二郎に類似するインスパイア店に嫌がらせや誹謗中傷の事例は、インターネットを確認すればたくさん確認出来ます。


つまり、もし山田拓美さんを唆し、一連の異議申立てを主導した人物が仮にいるのであれば、以下のように考えていると想像すると、全ての筋が綺麗に通るのです。


1. インスパイア店に誹謗中傷や嫌がらせをするのはジロリアン。

2. その結果インスパイア店は法的に問題がなくても店名を変更せざるを得ない。

3. 訴えられるとしてもその対象はラーメン二郎ではなく、誹謗中傷の実行犯であるジロリアン。

4. 万が一異議申立てした主張が通れば、主導した人物は「敏腕弁護士!」「敏腕コンサルタント!」など神格化される。

5. もし異議申立てが通らず、悪質な模範店が増えたり、麺屋宅二郎が勝ち取った商標を使用し始めても、熱狂的なジロリアン達が「自発的に」圧力を掛けてくれるので大丈夫。その場合、訴えられるのはジロリアンであって、ラーメン二郎は傷つかないので大丈夫。



なお、ラーメン二郎の山田拓美さんがこのように考えている可能性は限りなく低いと思います。


というのは、山田さんは「インスパイア店は宣伝となる」として歓迎する意向を示しているからです。


URL:https://www.toben.or.jp/message/libra/pdf/2019_08/p22-25.pdf


こう考えると、ジロリアンを軽視し、捨て駒扱いをして、法律が分からない山田拓美さんを都合よく唆した存在がもしいるとすれば、非常に巧妙で悪質な考えを持っている人物なのではないかなと考えてしまします。


そうでもなければ、ラーメン二郎の弁護士の対応は私には到底理解できません。


本来であればジロリアンはラーメン二郎の収益を支える根底です。

それだけではなく、ラーメン二郎のためなら犯罪の可能性がある行為までしてしまうくらいジロリアン達はラーメン二郎を愛しているのです。


そのような純粋な気持ちを蔑ろにして、裏から利用しようとして「捨て駒」のような扱いをしている人がもしいるとしたら、それは非常に残念なことだと思います。


ジロリアンの皆様は、今回の一見で、誰が一体何の得をして、誰が何のリスクを負う羽目になったのか、一度振り返って考えてみてもよいかもしれません。

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