見出し画像

人は身勝手なもの  新見正則

僕の投書

「家族の場合に迷う臓器提供」   医学部講師 新見正則 (40 歳)
私のドナーカードを妻は秘密の場所に保管している。
私が脳死になったときに,臓器提供に同意するかどうか考えるそうだ。
私はイギリスで5年間,移植医療の現場を見てきた。

移植医療は,多くの不治の病の患者さんに再び日常生活を与え,
仕事も,スポーツも,そして出産までも可能とする医療である。

しかし,私にも臓器提供を素直に受け入れられないところがある。
それは多くの臓器は脳死者から 提供されなければならないからだ。

最愛の妻が脳死になっても,
心臓が止まり体が冷たくなるまで抱擁していたいだろう。
ところが,家内が移植以外に助からないとなれば,
ぜひとも移植医療を受けさ せたいと願うであろう。
その高い成功率を知っているから。

もし,私が脳死状態となり,
私の臓器がどなたかに新しい人生を与える可能性があるならば,
家内には秘密の場所からドナーカードを出して
私の臓器提供の意思に同意してほしい。

移植に携わった経験から,私は体が温かく心臓は鼓動していても,
自分を規定している脳が死んだ状態も死と認めるようになったから。

朝日新聞「声」,1999年5月28日


人には臓器をあげたくないが、自分は臓器をもらいたい

この投書が掲載さらた20年後、2019年に中学校の道徳の教科書に引用されまし
た。2つの出版社(廣済堂あかつきと日本文教出版社)の教科書です。

投書の内容は「人は身勝手なもの」ということで
「人には臓器はあげたくないが、自分は臓器をもらいたい」
という素直な感情を綴ったものです。

戦争には巻き込まれたくないが、自分は守ってもらいたい

同じようなことが日本の防衛でも語られることがあります。
「人の戦争には巻き込まれたくない」という思いです。

専門家でさえ予想していなかった
ロシアのウクライナへの侵略が始まってもうすぐ1年になります。
そして中国の台湾侵攻が空絵事ではなく現実味が増しています。
北朝鮮のミサイルが日本に撃ち込まれるかもしれません。
ロシアの次のターゲットは日本かもしれません。

日米安全保障条約の集団的自衛権で守ってもらおうと思っているのであれば、
アメリカの戦争に巻き込まれます。
アメリカの軍事的庇護を受けないとすれば
「人の戦争には巻き込まれたくない」という直感的な感情を貫いてもOKです。

「攻め込まれたら守ってね。でも、あなたの火の粉は被りたくないのです」
はちょっと虫が良すぎる話です。

日米安全保障条約を放棄するなら自分の国は自分で守る必要があります。
中国、ロシア、北朝鮮に対峙するには相当な軍備が必要でしょう。
徴兵制が必要かもしれません。
まったく丸腰の非武装で侵略されて侵略した国に従うという方法も有り得ます。

人は身勝手なものです。
身勝手だからこそ、俯瞰的に世の中を見る必要があるのです。
臓器移植におけるドナーの問題も、集団的自衛権に関わる諸問題も同じです。

僕たちは乱世を生きている、そのこと忘れずに

いろいろと頭の体操をしてください。
いろいろな視点から物事を判断してください。
俯瞰した目線で物事を見られるようにしてください。

そしてメディアが流す情報を鵜呑みにしないでください。
メディアは広告主に忖度しています。
NHKを含めたメディアは極端に政府に忖度しています。
そんな時にはラジオはテレビと違って有益です。
忖度が比較的少ないからです。

誰にも忖度しない情報はSNSから得ることができます。
誰もが放送局になれる時代になりました。
短所は情報が洪水となっていることです。
フェイクニュースも多数混在しています。
たくさんの情報から正しい情報を拾い出す能力が
これから必要とされる才能ですよ。

これからの乱世を生き抜くためには、そんな力を磨いていきましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?