見出し画像

日本人の死亡の原因、知ってる?  新見正則

専門医試験の作問中に考えたこと

じつは僕、ある学会の専門医試験の出題を担当しています。
今年は何を出題しようかと思案しているとき、厚生労働省の令和4年(2022)人口動態統計(確定数)の概況を見てみようと思い立ちました。

厚労省の人口動態総覧が面白い!

僕は特に2つの表に注目しました。まずは、人口動態総覧です(表1)。つぎに、死因簡単分類別にみた性別死亡数・死亡率(表7)です。

まず、2022年の総死亡数は1,569,050人。
男性が799,420人、女性が769,630人でした。

出生数は770,759人ですから、死亡者の半数以下です。

がんで死ぬのは25パーセント

新生物(腫瘍)による死亡数は399,471人、悪性新生物(腫瘍)による死亡数は385,797人です。全死亡数の24.5%になります。

日本人の2人に1人が一生涯に1度はがんと診断され、3人に1人ががんで亡くなる日が近いと言ってきましたが、現状では、33%ではなく25%が悪性腫瘍=がんの死亡率です。

がんのランキング

【第1位】気管、気管支及び肺の悪性新生物(腫瘍) 76,663人
【第2位】大腸がん 53,088人
結腸の悪性新生物(腫瘍)37,236人と直腸S状結腸移行部及び直腸の悪性新生物(腫瘍)15,852人の合計です。
【第3位】胃の悪性新生物(腫瘍) 40,711人
【第4位】膵の悪性新生物(腫瘍) 39,468人


もっと見ていきます。

循環器系の疾患の死亡数は381,327人で、がんとほぼ同数です。
循環器系には高血圧11,665人、心疾患232,964人、脳血管疾患107,481人、そして僕が長く緊急手術に備えていた大動脈瘤及び解離19,987人、と記載が続きます。結構な人が大動脈瘤破裂で亡くなっています。

驚きの数が出てきました

妊娠、分娩及び産じょくでの死亡は、なんと33人です。
昭和の頃は、僕の周りにも妊娠・出産で亡くなる人がいましたが、隔世の感です。老衰が179,529人です。神経系の疾患で60,229人が亡くなっており、その中に、パーキンソン病の13,394人、アルツハイマー病の24,860人が含まれています。

呼吸器系の疾患で186,500人が死亡しています。インフルエンザはたった24人で、肺炎は74,013人、そして喘息でも1,004人が亡くなっています。

傷病及び死亡の外因は73,183人です。不慮の事故で43,420人が亡くなり、その中に交通事故死の3,541人が含まれています。

毎日ニュースでみる他殺はいったい何人?

自殺が21,252人、他殺が213人。自殺が相変わらず多く、そして他殺が思いのほか少ないというのが僕の印象です。

150万人に人生がある。僕も貢献できているかな

医療従事者として生死に関わる仕事にずっと携わっている僕でも、実は正確な数字はよく覚えていないのです。この表の中に、当院の患者さんも含まれています。総数は約150万人ですが、その一人一人の人生を思うと、なんだか無常を感じることもあります。また、大往生のお手伝いができた患者さんを思い出すこともあります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?