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松田邦夫先生  新見正則

11月11日は師匠、松田邦夫先生のお誕生日

松田邦夫先生と僕の出会いは15年以上前。
八重洲のビルで行われた松田邦夫先生の講義を僕が拝聴したのが始まります。

当時は、漢方を本気で勉強し始め、数年が経過したところでした。

多くの先生の講義はサイエンスを重視する僕の視点からは
まったく理解できない現実離れした仮想空間の話でした。
僕には到底納得できませんでした。

いろいろな漢方の先生の講義を拝聴しては「僕には合わない」と感じ
そして「もう無理!」と諦めムードでした。

しかし、松田邦夫先生の講義は違いました。
ただただ、症状とそして有効な漢方に辿り着いた過程を説明するだけの
シンプルなお話で、そこにほとんど仮想病理概念はありませんでした。

松田邦夫先生の教え

松田邦夫先生に直感ですぐに惚れ込んでしまいました。
僕は松田先生に精一杯お手紙を書きました。
そして次の講演会の時に面談の機会を設けて頂き、
無事に毎週金曜日の午前中の陪席が許されたのでした。

最初に駒込駅前の松田医院を訪れたとき
松田邦夫先生は僕に「漢方だけでは治りません」と教えてくれました。
日常の生活管理、つまり養生が必要だと懇切丁寧に教えてくれました。
まずは運動を勧められたのです。

まずは運動だよ

当時の松田邦夫先生は毎週数回ジムに通い、
水泳や筋トレをコーチに習い、
そして毎月100km以上をランニングマシンの上で走っていました。

そんな水泳やランニングのやり方を
漢方を習いに訪れた僕に毎回時間をかけて教えてくださいました。

僕は50歳になったとき
突然に24時間365日緊急手術に対応する体制から開放されたのです。
それで松田邦夫先生の教えに従い
マンツーマンのコーチを付けて筋トレを始めることにしました。

そして漢方の勉強

松田邦夫先生の外来に陪席するようになってしばらくすると
「私が師匠の大塚敬節先生の外来に陪席するようになって、
しばらくしたら大塚敬節先生が出す処方がほぼすべて当たった」

と教えてくれました。
この時、漢方診察を松田邦夫先生は行えていないのです。
でも処方が当たったということは、
漢方診察は処方選択には必須ではないと知ったのです。

漢方診察が本当に必要と実証できる?

一方でエビデンスが大好きな僕は、
漢方診察の必要性を導き出す臨床試験を行いたかったのです。
そのためには漢方診察をしないコントロール群が必要です。
僕は松田邦夫先生の処方を徹底的にパクって(TTPして)
コントロール群にすべく
フローチャート漢方シリーズの基礎にあるものを作成しました。

そしてある日、勇気を振り絞って松田邦夫先生に伺いました。
「漢方診察をする前に頭に浮かぶ処方が、
漢方診察後に変更になる可能性はいかほどでしょうか?」
と。
すると即座に「1割」とお答えになりました。

そこで合点がいったのです。

漢方診察をしても1割しか変更されないのであれば
漢方診察をする前段階の処方をフローチャートにしてみたいと。
そしてそんな僕の空想が新興医学出版社の林社長と出会って
現実になるチャンスに恵まれました。

「いろいろな漢方があっていい」

これを書籍にするには松田邦夫先生のご承諾が必要です。
そこで恐る恐る「漢方診察なしで処方を決定する書籍を書くチャンスがあるのですが・・・」と話し始めると「是非とも書きなさい」と教えて頂きました。
そして、「いろいろな漢方があっていい」とのお言葉を頂きました。

幸いにも「フローチャート漢方薬治療」はベストセラーになりました。
じつはこれは誰でも書ける書籍なのです。
なぜなら、漢方の熟練者は漢方診察前に辿りつく処方を当然知っています。
それを書籍にしただけなのです。
そんな誰もやらなかったことをちょっとやってみた、
というのが僕が書いたことです。

フローチャートが大成功!

漢方診療も漢方理論も不要。
フローチャート的に処方する。という破天荒な作戦は
いずれ漢方の大御所の先生方によって潰されると思われていました。

幸いにも僕の書籍のほぼすべてに松田邦夫先生の巻頭言があります。
巻頭言のおかげで誰からも不愉快なお叱りを受けたことはありません。

すべては松田邦夫先生のおかげです

すべて松田邦夫先生のお陰です。
松田邦夫先生ご夫妻とは那須の温泉にも御一緒しました。
奥様が巨人ファンで東京ドームにも何度もご招待しました。
良い思い出です。

いまの僕は、松田邦夫先生なくしてはあり得ないと思います。
90歳を超えても現役で診療をされている松田先生の姿は、本当に僕の目標です。
僕がいただいた松田先生のご縁を、ひろく大きな縁に紡いでゆきたい。

いろいろな漢方がフローチャート漢方薬シリーズとなって次々生まれ
皆さんに活用いただけることを切に願っています。


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